EU競争法に関する資料の概要
本資料では、EU競争法における市場支配的地位の濫用に関する規制の考え方を中心に説明する。特に、差別対価や略奪的廉売に関する具体的な内容を取り上げる。
1. 市場支配的事業者の特別の責任
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市場支配的地位の濫用
- 市場支配的地位自体は違法ではないが、事業者には競争を阻害しないよう特別な責任がある。
- この責任は、EU機能条約に基づき、競争を害する行為を行わないことが求められる。
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欧州委員会のガイダンス
- 2009年に発表されたGuidance Paperにおいて、支配的地位の事業者には競争を損なわせないよう努める責任が確認された。
2. 略奪的廉売と差別対価の考え方
2.1 略奪的廉売
- AKZO事件に基づく判例法
- 平均可変費用未満の価格設定は、市場競争者を排除する目的で行われる場合、濫用と見なされる。
- 具体的な基準は以下の通りである。
- (i) 平均可変費用未満の価格設定が競争者を排除するための行為およびその後の価格引き上げを目的とする。
2.2 差別対価
- 平均可変費用を上回るが平均総費用を下回る価格設定も、濫用に該当する場合がある。特に、競争者を排除する計画の一部として行われる場合に適用される。
3. 濫用の基準と判例法のまとめ
以下の表に、EUの裁判所での判例法と欧州委員会の執行方針の差を示す。
| 判例法の基準 | EUの裁判所(AKZO事件) | 欧州委員会のGuidance Paper |
|---|
| 濫用と推定される価格基準 | 平均可変費用未満 | 平均回避可能費用未満 |
| 他者排除の計画の一部の場合の価格基準 | 平均可変費用を上回るが平均総費用未満 | 平均回避可能費用を上回るが平均長期増分費用未満 |
4. 費用関係の用語の定義
- 平均可変費用 (AVC): 一単位当たりの可変費用。
- 平均回避可能費用 (AAC): 一定数量の追加生産を行わなかった場合に回避できた費用。
- 平均総費用 (ATC): 可変費用と固定費用を合計した総費用を生産量で除算したもの。
- 平均長期増分費用 (LRAIC): 特定の製品を生産する際に生じる追加費用の平均。
5. 欧州委員会による介入基準
- 競争を阻害する可能性のある行為について、欧州委員会は厳格な基準で介入の必要性を検討する。
- 競争者が市場での競争に耐えられない場合、価格がAAC未満であることが短期的利益の犠牲を示唆する。
本資料は、EUにおける競争法の基本的な枠組みと、それに関連する判例および運用方針を整理したものである。