資料の目的・背景
本資料は、日本の独占禁止法に関連する差別対価の費用要件について、過去の先例をもとに検討内容を整理するものである。特に、平成21年改正前の事案を参考にしている。
主要な検討事項
私的独占の事案
私的独占に関する具体的な事例として、以下の2件が挙げられる。
-
有線ブロードネットワークス事件
- 概要: 業務店向け音楽放送の競争事例
- 内容: 有線ブロードネットワークスが、競合他社のキャンシステムに対して低廉な価格を設定し、顧客を短期間で奪取することで業務運営を困難にしようとした。
- 留意点: この事例ではコスト割れの認定はされていない。
-
大手航空会社の運賃設定
- 概要: 航空輸送業界における大手航空会社による契約
- 内容: 新規参入者の運航路線に対して、大手3社が低い運賃を設定したことに対して公取委から警告が発せられた。
- 留意点: 競合が存在する路線における割引の程度は大きいが、詳細なコスト検討はなされていない。
不公正な取引方法の事案
不公正取引における差別対価に関する検討は、以下の2件がある。
-
ザ・トーカイ事件
- 概要: LPガスの販売に関する事案
- 内容: 地域ごとに異なる価格を設定し、他社から差止め請求を受けた。
- 判示: 価格差は競争市場の現れであり、価格設定がコスト割れでない場合には違法とは認定されない可能性がある。
-
日本瓦斯事件
- 概要: LPガスの価格設定に関する事案
- 内容: 新規顧客に対して低価格で販売し、差止め請求の対象となった。
- 判示: 地域性や相手によって価格が異なることは違法でないが、公正競争を妨げる価格設定については違法となる可能性がある。
課題・リスク
- 差別対価の事案において、コスト割れが要件とされるかについて異なる見解が存在することが指摘されている。
- コスト計算の詳細については、様々な要素が考慮される必要があり、現状ではこれらの詳細が詰まっていないとの指摘がある。
重要な見解
学説によると、コスト割れがない場合でも不当な取引行為が認められる可能性について意見が分かれている。経済的合理性と競争の健全性がどのように評価されるかが重要な論点である。
コスト配分の方式
| 配分方式 | 説明 |
|---|
| スタンドアローン方式 | 競争分野の事業のみを単独で行う際の必要費用を算定 |
| 増分費用方式 | 独占領域の事業のみを算定し、残余を競争分野の費用とする方式 |
| 共通費用配分方式 | 競争分野と独占領域の両方の事業に関連する作業時間などで按分 |
参考事例
- 中部読売新聞社事件
- 概要: 新聞販売に関する事案
- 内容: 著しく低価格で顧客を奪取しようとした行為が公取委により問題視された。
- 判示: 市場価格や原価を下回ることが不当廉価に当たるとされたが、その原価自体に特殊な要因が存在することが指摘された。
以上の内容は、差別対価や不当廉売に関する過去の事例から、日本の独占禁止法の解釈や適用についての重要な教訓を示している。