東京中部間連系設備の完成予定は2031年11月へ――運開前の供給力をどう読むか
この記事でわかること
- 東京中部間の完成見通しは、5月から9月までにどう変わったか
- 最終運開前の段階的な運用と90万kW増強をどう区別するか
- 広域調達・価格差の見通しでどの工程を監視すべきか
5月の「2030年3月以降」は、9月に2031年11月へ具体化した
2026年5月の四半期進捗報告は、東京中部間の佐久間東幹線の一部工区で用地交渉が長期化し、土地収用法に基づく手続きも進めるため、最終運開を2030年3月以降へ見直す段階と説明した。資料の冒頭一覧に旧予定の2028年12月が残る一方、工事概要には変更検討中と明記されていた。旧予定だけを拾えば工期を誤る状態だった。1
9月の進捗報告は、完成予定を2031年11月と記した。佐久間東幹線の用地交渉難航箇所への対応と工法精査が遅れの要因である。前の報告の「2030年3月以降」は幅を持つ見込みで、9月の記載がより新しい予定時期だ。双方を同時に「現在の完成予定」として表に載せない。2
計画の増強規模は東京中部間を210万kWから300万kWへ、90万kW増やすもの。資料に示される概算工事費は1,837億円で、事業実施主体は東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、電源開発送変電ネットワークだ。この90万kWは完成時の計画規模で、2026年の取引可能な追加容量や、遅延期間中ずっと失われる容量を意味しない。2
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遅れの中心は佐久間東幹線だが、工程は複数設備でつながる
東京中部間の計画には佐久間・東清水の周波数変換設備、送電線新設、佐久間東西幹線の増強、変電所の増設などが含まれる。佐久間東幹線は約121kmに及ぶ工事で、用地・工法の検討が全体の完成予定を動かした。別設備の工事が進んでいても、必要な経路と変換設備がそろわなければ計画上の90万kWを一度に使用できるわけではない。2
広域機関は作業停止や施工手順を組み替え、既設送電線の片回線運用などによって、最終運開前からFC運用容量と発電所供給力を段階的に確保し、需給への影響を極力小さくするとした。これは一定の効果を前倒しで得る計画であって、「2031年11月までFC容量は全く増えない」という結論を避ける根拠になる。しかし、どの年度・断面で何万kW使えるかは、この一文だけでは確定しない。運用容量の正式な公表と停止計画を追う必要がある。2
調達契約の評価では、送電線、FC、発電所それぞれの利用可能時期を分ける。発電所の供給力が早く確保されることと、連系線を通して東京へ予定どおり送れることは同じではない。広域をまたぐ相対契約やエリア間価格差のヘッジは、時間帯別の連系線容量と作業停止を条件にする。
5計画のうち延期したのは東京中部間
同じ9月の進捗報告は、東北東京間、北海道本州間、中部関西間、中国九州間の4計画について完了予定の変更はないとした。東北東京間は2027年11月、北海道本州間は2027年度末、中部関西間は2030年6月、中国九州間は2039年3月が予定時期だ。東京中部間の遅延を「全国の連系線増強が一斉に遅れた」と広げない。2
一方、ほかの計画の予定維持も工事費や運用条件が全て不変であることは示さない。広域調達ポートフォリオでは、各連系線の工事進捗だけでなく、向き、季節、作業停止の容量制約を別に見る。全国の設備計画を一つの完成年へまとめて評価しない。
価格差への影響は工事日程だけで計算できない
東京中部間の市場分断や価格差は、東西の入札量、燃料費、電源停止、需要、FCの運用容量で変わる。完成が遅れたという事実だけで将来の価格差が何円/kWh拡大すると予測することはできない。小売にとって有用なのは、ベースケースで公表済みの長期・年間運用容量を使い、段階的使用開始の確度に応じた代替シナリオを置くことだ。2
過去の計画前提には東京中部間設備を2028年度に反映する記載もある。新しい工期と整合しない前提が運用容量の検討条件へ残っているかを確認し、改訂版が公表されたら契約のヘッジ評価を更新する。古い検討条件を新しい完成予定より優先しない。32
調達担当者の工程表では、旧予定の2028年12月、5月報告の「2030年3月以降」、9月報告の2031年11月を履歴として残し、現在の基準日を一つだけ明示する。続いて、段階的に利用できる可能性のあるFC容量、送電線の完成、発電所の供給力を別の行にする。たとえば2030年度の価格差ヘッジを評価するなら、完成後の90万kWを全期間へ置くケースだけでは足りない。工事中の作業停止と公表運用容量を用いた基準ケース、段階的効果が確認された場合の改善ケースを分ける。更新の引き金は進捗報告だけでなく、年間運用容量や停止計画の改訂にも置く。
契約更新の締切が運用容量公表より早い場合は、価格差の上限を社内で先に決めておく。
その上で、改訂情報を受けて見積を更新する担当者と期限を決める。
年間容量の改訂前は、古い前提を用いた契約評価へ要再検証の印を付ける。
| 判断項目 | 確認条件 | 判断への示唆 |
|---|---|---|
| 完成予定 | 5月の見込みと9月の2031年11月 | 新しい進捗資料を採用する |
| 段階的効果 | FC運用容量、発電所供給力、片回線運用 | 完成前を全量ゼロ・全量90万kWのどちらにも置かない |
| 調達契約 | 受渡しエリア、連系線の向き、作業停止 | 価格差の影響を契約ごとに評価する |
| 他計画 | 東北東京・北海道本州・中部関西等の別工程 | 東京中部間の遅延を全国へ一般化しない |
小売電気事業者の広域調達担当者
- 年度別の容量前提を更新する。 古い2028年予定を使った調達モデルを見つけ、2031年11月の予定と段階的運用を別列に置く。
- 連系線と電源を分ける。 供給力確保の予定と実際にエリアを越えて受け渡せる容量を混同しない。
- 価格差を幅で見る。 工期だけから円/kWhを決めず、入札・需要・運用容量を組み合わせる。
まず行うこと
- 旧工期を使う社内の長期調達・ヘッジ資料を洗い出す。
- 年度別の正式なFC運用容量と工事停止計画を確認する。
- 段階的供給力の反映有無で価格差の感度を更新する。
監視する指標
- 佐久間東幹線の用地・工事進捗。 完成予定を動かす要因を見る。
- FCの長期・年間運用容量。 使用可能量の正式な更新を追う。
- 作業停止期間。 受渡しが制約される断面を記録する。
- 東京・中部の価格差。 工程以外の要因と分けて観測する。2
参考文献
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