海外の電力・ガス規制機関の調査および日本との比較検証
調査の目的
本調査は、**電力・ガス取引監視等委員会(EGC)**の体制や活動を海外の規制機関と比較することで、以下を抽出することを目的としている。
検証の全体構成
本検証は、次の要素を踏まえた電取委の組織方針の策定を目指す。
- 組織を取り巻く状況
- 電取委の活動実績
- 海外の規制機関の現状
具体的には、以下の観点から議論を進める。
- 中期方針(2024〜2026年)に基づく課題整理
- 監視機能強化のための手法・専門性の向上
- 海外規制機関との比較検証
調査対象国
調査対象として以下の国々の規制機関を参照した。
| 規制機関 | 日本 | 米国連邦 | 米国ペンシルベニア州 | 英国 | フランス | スウェーデン |
|---|
| 規制機関 | 電力ガス取引監視等委員会(EGC) | 連邦エネルギー規制委員会(FERC) | ペンシルベニア州公営事業委員会(PA PUC) | ガス電力市場委員会(GEMA) | エネルギー規制委員会(CRE) | エネルギー市場監督局(EI) |
| 政策当局 | 経済産業省 | 連邦エネルギー省(DOE) | 環境保護局(DEP) | エネルギー安全保障ネットゼロ省(DESNZ) | 環境持続可能開発エネルギー省(MEDDE) | 気候企業省 |
| 設立年 | 2015年 | 1977年 | 1937年 | 2000年(前身のOfgasは1986年) | 2000年 | 2005年 |
| 規制対象 | 電力ガス | 電力、水力発電、天然ガス、石油 | 電力、天然ガス、通信、上下水道、旅客・貨物輸送等の公益事業全般 | 電力、ガス、スマートメーター、通信 | 電力、天然ガス | 電力、天然ガス |
| 備考 | | 小売市場は監視対象外 | | | | |
諸外国における参考事例
海外の規制機関では、日本と比較して以下の点が異なることが観察される。
- 人員配置
- 予算規模
- 権能の違い
- デジタルツールの活用
- 広報活動の手法
職員数の比較
特に、職員数に関して以下の表に示す通り、日本のEGCと他国の規制機関との違いがある。
| 職員数 | 日本 (EGC) | 米国連邦 (FERC) | ペンシルベニア州 (PAPUC) | 英国 (Ofgem) | フランス (CRE) | スウェーデン (EI) |
|---|
| 職員数 | 約140名 | 約1,500名 | 約500名 | 約2,150名 | 約165名 | 約220名 |
| 市場監視を担う部署の職員数 | 64名 | 388名 | 45名 | 560名 | 97名 | 105名 |
職員の専門性
海外の規制機関では、日本では採用されていない専門性の高い職員が多く配置されている。具体的には以下の専門家が含まれる。
- エコノミスト
- エネルギーアナリスト
- エンジニア
- データアナリスト
- ITスペシャリスト
結論
本調査を通じて、日本の電力・ガス規制機関が他国と比較して抱える問題点や可能性を評価し、今後の組織方針策定の参考とすることが期待される。
英国におけるCNIに向けた規制機関の役割拡大
背景
- 英国Ofgemは、2023年10月に制定されたEnergy Act 2023に基づき、ネットゼロを達成する義務が課せられている。
- Ofgemの規制範囲の拡大は、短期的な検討に偏りがあるとの批判に応えるものとされる。
新たな義務と権限
- ネットゼロの達成に向けての先行投資を促進し、新技術の導入のための規制面の障壁を緩和するために以下の役割が追加された。
CO2輸送・貯留の規制
- OfgemはCO2輸送・貯留の経済規制機関として指名され、ライセンスを通じて収益上限の決定やネットワーク利用者に課される料金の監督が求められる。
熱ネットワークの規制
- Ofgemは電気・ガスと同様に、ライセンスを用いて熱ネットワーク消費者を保護する役割を担う。
Future System Operator (FSO) の設立
- Energy Act 2023のもとで、電力系統運用者(National Grid ESO)とガス系統統計計画者(National Grid Gas)が統合され、FSOが設立される。
- FSOは炭素回収・貯留や水素の新技術に関するシステムも統合する。
エネルギー規約のガバナンス
- Energy Act 2023は「規約マネージャー」を新設し、業界からではなくOfgemに責任を負わせる。この新制度により、消費者の利益と競争を促進する契約更新が可能となる。
英国Ofgemのライセンス料制度
- 英国Ofgemは設立当初からライセンス料を被規制事業者に課しており、自らの予算を賄うことで政府からの独立性を保持している。
- ライセンス料の設定はOfgemに委ねられ、必要に応じて財務省やエネルギー政策当局への通知義務がある。
各国の予算確保方法の比較
| 予算の確保方法 | 米国連邦 (FERC) | ペンシルベニア州 (PAPUC) | 英国 (Ofgem) | フランス (CRE) | スウェーデン (EI) |
|---|
| 被規制事業者 | 年金費と申請料で運営コストを全額回収 | 資金調達は州内事業に基づく | ライセンス料と賦課金で回収 | 国家予算 | 国家予算と被規制事業者で回収 |
規制機関の権能
規則制定権
事業許可
- 米国連邦、英国、スウェーデンがライセンス付与・取消権限を持つが、日本EGCとフランスはこれを持たない。
規制料金の認可権限
- フランスはエネルギー政策当局が持ち、他の国では規制機関が持つ。
| 国名 | 規則制定 | 事業許可 | 料金規制 |
|---|
| 日本EGC | なし | なし | なし |
| 米国連邦FERC | あり | あり | あり |
| ペンシルベニア州PAPUC | あり | なし | あり |
| 英国Ofgem | あり | あり | あり |
| フランスCRE | あり | なし | なし |
| スウェーデンEI | あり | あり | あり |
結論
英国Ofgemの規制機関としての役割拡大は、ネットゼロを実現するための必要な投資を促進し、新技術の導入を支えるものである。各国の規制機関における権能や予算確保方法の比較から、規制機関の設置が国ごとに異なるが、基本的には被規制者とのインタラクションを通じて運営されている。
規制機関による広報
フランスCREの広報体制
- フランスのエネルギー規制機関CREには、コミュニケーション広報部に6名の職員が在籍しており、その1名がSNSでの広報に従事している。
- CREは以下の広報活動を行っている:
- YouTubeでの制度解説動画の投稿
- X(旧Twitter)およびLinkedInでのニュースリリースと採用情報の発信
- 採用情報では、業務内容を要約した動画や職員インタビュー動画を用い、魅力を紹介している。
教育コンテンツと消費者保護
- CREのWebサイトには消費者向けの教育コンテンツが公開されており、電力・ガスネットワークに関する情報を提供している。
- 例:『L'ÉLECTRICITÉ, COMMENT ÇA MARCHE ?』
- フランスでは消費者と事業者間の紛争解決を国家エネルギー・オンブズマンが担っており、CREはエネルギーオンブズマンへの問い合わせ手順をWebサイト上で解説している。
市場監視を担う職員数
- 海外の規制機関は、日本よりも多くの職員数で市場監視を行っており、今後は必要に応じて職員の増員が求められる。
職員の専門性
- 海外ではエコノミスト・アナリストが市場監視に従事し、定量的な分析スキルを持っている。日本でも同様の人材を採用することが望ましい。
- エンジニアは技術的観点から料金設定や事業認可の審査を担当しており、技術的知見を持つ人材が必要とされる。
専門人材の採用方法
- 高い給与水準を設定し競争力を持たせることや、専門性を持つ学生を採用し育成するためのトレーニングプログラムの実施が求められる。
- 人材プールを構築し、欠員が出た際に希望者を募ることや、一時的にスキルを持った人材を派遣社員として雇用する方法も考えられる。
デジタルツールの導入に関する示唆
監視ツールの導入
- 海外では市場監視の効率化のためにデジタルツールが活用されており、日本でも監視のデジタル化を進める必要がある。
内部のツール開発体制
- 規制機関内部にはデータ・デジタル分野の専門人材が在籍しており、ツール開発のための部門設置が考えられている。デジタルツールの導入には専門家の存在が望ましい。
広報に関する示唆
広報機能の強化
- 海外の規制機関は需要家の関与を高めるために専用部門を設置しており、日本でも広報担当の部署や人材を配置し、教育用資料の提供やSNSでの情報発信を行う必要がある。
まとめ
フランスのCREの広報活動や市場監視における職員の専門性、デジタルツールの導入など、他国の事例から学ぶべき点が多く、これらの適用が日本においても求められている。