卸電力取引活性化に関する資料の説明
資料の目的・背景
本資料は、卸電力取引の活性化に向けた施策をまとめたものであり、経済産業省が主導する制度設計専門会合における検討事項を示している。
本日の議題
以下の内容が本会合で議論される。
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2015年度下期のモニタリングレポート
- 2015年10月から2016年3月までの電力市場の監視結果を提示。
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自主的取組の改善策
- 旧一般電気事業者へのヒアリングをもとに、自主的取組の改善策を紹介。
- 具体例として、入札していなかったバランス停止電源の入札や予備力の見直し、グロスビディングの導入に関する状況を報告。
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卸電力取引所の運用面の改善策
- 売りブロック入札の数上限見直しや買いブロック入札の導入について議論。
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市場に影響を及ぼす施策の紹介
- 卸電力市場の取引量に影響を与える施策について情報を整理し提示。
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諸外国の卸電力市場の変遷
- 欧州等の国々における卸電力市場の取引量の拡大の経緯を整理し提示。
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今後の進め方
- 第8回、第9回の内容を踏まえ、今後の展望や監視項目を提示。
卸電力市場に影響を及ぼす施策
以下の施策が卸電力市場に与える影響について整理されている。
| 影響を及ぼす要素 | 要素の説明 | 取引所への影響 (2020) |
|---|
| FIT電気の取引所供出 | 2017年4月以降に認定されるFIT電気は、取引所へ供出される可能性があり、176億kWh(電力需要の約2.2%)の影響が考えられる。 | 176億kWh (2.2%) |
| 需給緩和後の余剰電源 | 原発再稼働により、1基あたり最大64億kWh(電力需要の約0.8%)の余剰電力が市場に供出される。 | 64億kWh (0.8%/基) |
| 自主的取組の改善 | 電発電源の切出し等により、取引量の増加が期待されている。試算により141~113億kWh相当の供出が見込まれる。 | 141~113億kWh相当 |
| その他施策による市場活性化 | ネガワット取引や先物取引等の導入により市場の流動性向上が期待される。 | - |
結論
卸電力取引の活性化に向けたさまざまな施策が現在進行中であり、今後の取引所への影響が期待される。各事業者の自主的取組改善や市場における施策遂行が重要な要素となる。進捗については、継続的にモニタリングが必要とされている。
各種制度的措置の内容
Ofgemの制度的措置
Ofgemでは、短期市場への事業者の自主的な取組を評価し、以下のような制度的措置を導入している。
| 各種措置 | 措置の概要 | 期待される効果 | 検討結果 |
|---|
| ① 強制オークション | 年間発電量の25%を毎月三年先までの様々な期間の商品としてオークションで売電を義務付け | 卸市場流動化価格指標性の向上 | プラットフォーム整備コスト等の懸念から採用せず |
| ② マーケットメーカー | 特定の時間帯において複数の先渡し商品で規定の売買スプレッド内で入札を義務付け | 先渡し取引量を増加させ、卸市場流動化価格指標性の向上 | Big6に対する非対称規制として採用 |
| ③ 強制トレード | 年間発電量の30%以上を市場経由で取引することを義務付け | 卸市場流動化価格指標性の向上 | 市場が機能しない懸念が存在 |
| ④ 自社供給制限 | 垂直統合事業者の発電部門から小売部門への取引を制限 | 卸市場流動化価格指標性の向上 | 自主的取組を評価し、採用せず |
| ⑤ マーケットアクセス | 大手発電事業者に小売事業者への電源アクセスを義務付け | 小規模参入者の電源アクセスを確保 | Big6及びDraxEngieへの非対称規制として採用 |
自主的な取組の背景
Ofgemが一部制度的措置、特に前日市場への介入措置を取り下げた背景には、事業者による30%~100%のグロスビディングなど、短期市場の成長に寄与した自主的取組がある。
| Left | Objective | Action / development | Taken by | Date effective |
|---|
| ヘッジ商品へのアクセス | Objective 1: Availability of hedging products | 小規模供給者への支援サービスを提供 | EDF Energy | Ongoing |
| | 独立型供給者との取引へのコミットメントを公表 | EDF Energy, SSE | March 2011, April 2012 |
| Objective 2: Robust reference prices | 週次契約提供の提案を開発中 | EDF Energy, APX-ENDX | Ongoing |
| 短期市場の活性化 | Objective 3: Effective near-term market | N2EXでのグロスビディングに参加、少なくとも30%の電力を日次オークションで取引することを約束 | RWE Npower, Centrica, EDF等 | May 2012 |
グロスビディングの影響
英国におけるグロスビディングの開始により、取引所での取引量は急増した。ただし、実施はN2EXのみであり、取引所間の競争を促進した。
- N2EXとAPX間の競争により、APXでの取引量も増加。
- グロスビディングは実質的な取引所取引の流動化を進展させていると評価されている。
日本における売買ポジション
- 日本の旧一般電気事業者は、全て垂直統合型であり、自社供給力と需要がバランスしているため、市場を介した電力取引のニーズが低い。
- 取引所での売買ポジションには差があるが、需給量を合わせるためではなく、限界費用差によるものと考えられる。
卸電力取引所の必要性
英国では、取引所を介さないOTC取引が多い中で、取引所の流動化が求められている。グロスビディングの開始後、OTC取引が減少し、取引所の流動化が進展している。
- チャーンレートの上昇も見られるが、更なる流動化の必要性が議論されている。
北欧における現物取引と金融取引の関係
市場拡大と取引動向
- 市場が拡大している局面においては、現物取引と金融取引は相関しつつ、取引量が拡大する傾向がある。
- 市場環境の変化が起こると、電気事業者以外の事業者も参加するため、金融市場の方が揺り戻しが大きくなる傾向が見られる。
取引量推移
| 年 | 取引量の動き |
|---|
| 取引拡大期 | 取引量が拡大 |
| 価格高騰期 | 取引量が停滞する |
| グロスビディング導入 | 取引量が再び拡大 |
| リーマンショック | 一時的に取引量が停滞 |
- 金融市場の取引量は現物取引の停滞に伴い、ヘッジニーズの減少に影響を受けた。
| 年 | 取引量の動き |
|---|
| 取引拡大期 | 取引量が拡大 |
| グロスビディング導入 | 取引量が再び拡大 |
| リーマンショック | 取引参加者が減少 |
グロスビディングの影響
- 2006年にグロスビディングが導入されたことにより、取引量はさらなる拡大を見せ、その後も安定的に取引量が伸びている。
- リーマンショック以降、一時的に取引量は停滞したが、グロスビディングを行う事業者が取引を継続することで安定的に推移した。
現物取引との関係
- 現物取引と同様に、市場参加者の増加により取引量が拡大している。
- 現物取引の停滞期にはヘッジニーズの減少により、取引量がより顕著に影響を受ける。
各国の電力市場からの示唆
卸電力市場の流動性
- 卸電力市場にはさまざまな形態があり、取引所の流動性が価格指標性の獲得に重要な役割を果たす。
- 各国、特に英仏では、垂直統合型事業者が自律的な取引を促進する取り組みが行われている。
卸市場の機能
- 流動性は新規参入者の電源アクセスを確保し、競争を促進するために重要である。
取引市場の多様性
- 卸電力市場には、短期(前日)取引、相対(OTC)取引、先物取引が含まれており、多様なプレイヤーが参入可能である。
- 先渡市場や金融市場の発展には、現物取引所の短期取引の価格指標性が不可欠であり、その流動性の向上が求められる。
制度的措置による市場活性化
- 寡占的な環境において、取引所を通じた取引の拡大が必要であるとされ、自主管理的取り組みが重要視されている。
- イギリスでは、2011年に始まったグロスビディング導入に伴い、取引所における取引量が約20%から2013年に約50%に増加している。
これらの情報は、電力市場の動向に対する理解を深めるための重要な示唆を提供する。