資料の対象・位置づけ
2026年3月14日付・第3版のガイド。取引規程第62条(細目的事項)(1)に基づき、揚水発電設備または蓄電池設備のいずれか、または両方を用いて需給調整市場に参入する取引会員を対象とする。対象リソースは受電点電圧が高圧以上で、受電点から参入するもの。設備形態等により個別の取扱いがあり、他のリソースと異なる場合がある。詳細は属地エリアの一般送配電事業者(沖縄電力を除く。以下「属地TSO」)との契約書で定める。対象年度は本文に記載されていない。ただし、揚水応札拡大方策の背景として、応札状況を2024年度時点としている。
事前準備(第2章)
揚水発電等(放電)で入札する場合は、市場契約に先立ち属地TSOと発電量調整供給契約(発調契約)を締結する。発調契約者と取引会員は同一でなくてもよい。
- 供出可能量1,000kW以上のリソースを単独入札する場合、「揚水・蓄電池」を選択できる。原則として市場契約を締結する発電設備だけで単独の発電BGを設定するが、一次調整力のみのリソースは例外。小売電気事業者等との協議・調整は取引会員が行い、市場契約締結までに合意を得る。
- 部分買取の発電場所で調整力を提供する場合、その発電場所を単独の調整電源BGとし、調整電源と非調整電源は別BGに設定する。
- 供出可能量1,000kW未満の発電リソースは、複数リソースをアグリゲートして入札すれば「VPP(発電)」または「VPP(発電+需要)」を選択できる。原則、契約する発電場所ごと(発電設備単位で参入する場合は設備ごと)に単独BG化するが、一次調整力のみは例外。小売電気事業者等との協議・合意の扱いは上記と同じ。
- 供出可能量1,000kW以上で揚水等特措を適用しないリソースは、単独入札で「VPP(発電+需要)」を選択できる。発電場所ごとの単独BG化が原則で、一次調整力のみは例外。
揚水動力等(充電)で入札する場合は、市場契約に先立ち属地TSOと接続供給契約を締結する。契約者と取引会員は同一でなくてもよい。市場契約対象の揚水動力等だけで広域機関から事業者コードを発番し、需要調達計画を広域機関へ提出する。必要な小売電気事業者等との協議・調整は取引会員が行い、市場契約締結までに合意を得る。属地TSOによって取扱いが異なる場合があるため、詳細は属地TSOに相談する。
調整力の提供・入札方式(第3章)
揚水発電等の出力抑制、または応動する揚水動力等の出力抑制により、上げ調整力を供出する。「揚水・蓄電池」には、揚水発電等と揚水動力等を一つの単独発電機として扱う1入札方式と、それぞれを別の単独発電機として扱う2入札方式がある。2入札方式でも両者を合わせて事前審査し、両者で異なる指令方式は選べない。片方だけを用いる1入札方式も可能である。
入札方式は計量・入札単位を踏まえて属地TSOと協議して決める。両者の計量・入札単位が同一なら1入札方式を選択でき、異なる場合は2入札方式とする。両方を用いる1入札方式では、原則として両方が商品要件を満たす商品に入札する。一体で商品要件を満たし、どちらか一方だけでは入札可能な商品がない場合は、二次調整力②から三次調整力②に入札できる。片方だけを用いる場合は、そのリソースが要件を満たす商品を選べる。
供出可能量・入札可能量は、1入札方式では両者を一つのリソース、2入札方式では別々のリソースとして算定する。通常の1入札方式の入札可能量は「揚水発電等の発電上限電力-発電計画+揚水動力等の需要計画」。解列が必要なリソースの一次調整力・二次調整力①には別の算定方法があり、1入札方式の供出可能量は両者の供出可能量の大きい方、入札可能量は発電側または需要側の式から選ぶ。2入札方式でも同商品では最低出力を考慮する。算定には事前審査で合格した値を用いる旨が記載され、出力ゼロへの解列が必要な場合の詳細は各算式表による。
参入要件(第4章)
参入ケースは供出可能量、揚水等特措の適用有無、設備の組合せに応じて整理され、揚水発電等単独、揚水動力等単独、両者の組合せについて「揚水・蓄電池」または各種VPPの電源等種別が示される。VPPの一部ケース(表のNo.①、②、④、⑤、⑧、⑨、⑫)は既存の取引ガイドを参照する扱いで、本資料の該当表は詳細を示していない。
瞬時供出電力の算式は商品、指令方式、通信方式(専用線オンライン・簡易指令システム・オフライン)、発電等・動力等の別で異なる。二次調整力①・一次調整力の算式は属地TSOと協議して決定し、属地TSOにより符号が異なる場合がある。計画値を提出しない場合、1分計画値を線形補間し、属地周期値または1秒値とみなす取扱いがある。一次調整力のオフライン算式は、24ページの要件に該当する蓄電池に限る。
蓄電池で一次調整力に参入する場合、設備容量10MW以上および1MW以上10MW未満の特別高圧設備は単独参入可で、表では専用線オンラインが必要。1MW以上10MW未満のうち一部の22kV等の特別高圧・高圧設備は単独参入可で、専用線オンラインまたはオフラインが示される。1MW未満は原則単独参入不可でアグリゲート参入となり、高圧ではオフラインが示される。ただし、1MW未満でも当該地点だけで供出可能量が1MW以上なら単独参入できる。電圧階級の注記では、特別高圧は契約電力2,000kW以上、高圧は50~2,000kWの施設とされる。
計画等の提出(第5章の提示範囲)
26~30ページの表は、「揚水・蓄電池」のケースNo.③、⑥、⑦、⑩、⑪について商品ごとの計画提出要否を示す。「要」は提出が必要、「-」は表上、提出要否の記載がないことを表す。提出期限の具体的な日付・時刻は提示範囲に記載されていない。
- 三次調整力②では、揚水発電等(③)は発電計画、揚水動力等(⑥・⑦)は需要計画、両者の組合せ(⑩・⑪)は発電計画と需要計画が必要。需要計画は広域機関に提出し、揚水動力等ごとの個別計画で取引計画(調達-販売)と一致させる。
- 三次調整力①・二次調整力②では、該当ケースに応じて発電計画、基準値計画等、需要計画が必要。基準値計画等には事前予測型の1分計画が示される。発電計画電力計画等の一部は、簡易指令システム接続かつ出力変化量指令を選択した場合に必要。需要計画の提出先・一致条件は広域機関および揚水動力等ごとの個別計画とされる。
- 二次調整力①では、発電計画電力計画等は、余力活用契約が二次調整力①のみの場合または同契約がない場合に、二次調整力①のみで約定し、指令方法が出力増減指令または出力変化量指令であるとき必要。複合約定時は31ページ参照とされる。
- 一次調整力では、発電計画電力計画等は、余力活用契約が一次調整力のみの場合または同契約がない場合に、一次調整力のみで約定したとき必要。複合約定時は31ページ参照とされる。
- 二次調整力①・一次調整力の提出値は原則として各エリアの評価間隔に合わせるが、取引会員の負担も考慮して1分単位でも提出できる。表には1分・属地周期・1秒の発電計画・事前予測型基準値計画の選択肢がある。
複合商品について、供出可能量1,000kW以上の揚水発電等(③)は発電計画と発電電力計画等、揚水動力等(⑥・⑦)は基準値計画等と需要計画、組合せ(⑩・⑪)は発電計画、発電電力計画等、基準値計画等、需要計画が必要とされる。表中の「要※4」は、①余力活用契約がない、または一次調整力・二次調整力①相当の機能のみで契約している場合に、一次調整力と二次調整力①の複合商品で約定し、二次調整力①の指令方法が出力増減指令または出力変化量指令であるとき、または②簡易指令システム接続で出力変化量指令を選択しているときに必要となる。
需要計画は広域機関へ提出し、揚水動力等ごとの個別計画で取引計画と一致させる。翌日・当日の需要計画はGCまでに提出し、調達過不足がないことを確認する。なお、この具体的な提出期限は需要計画についての記載であり、他の提出物全般の期限を示すものではない。
アセスメント
アセスメントⅠでは、ΔkW供出可能量がΔkW約定量を下回っていないかを確認する。1入札方式で同一提供期間に複数約定がない場合、供出可能量は発電上限電力-発電計画電力+需要計画電力。複数約定時は控除ΔkW約定量をさらに差し引く。需要計画が未提出なら需要計画電力を加算できず、供出可能量が減る。2入札方式では複数約定がない場合、揚水発電等は発電上限電力-発電計画電力、揚水動力等は需要計画電力とし、複数約定時は各々の控除ΔkW約定量を差し引く。複合商品約定では、図示された控除に複合ΔkW約定量を用いる。
発電上限や需要計画に出力制約等がある場合は反映する。属地TSOが未反映で不適当と認めた場合、発電上限電力または需要計画電力を修正する。アセスメントⅡは原則として取引規程第39条に従う。余力活用契約がある場合の「余力への指令」はΔkW約定にもとづく範囲外への指令として扱われ、商品、計画電力、指令位置に応じた許容範囲・評価方法が示される。図は単独発電機かつ出力調整指令(数値指令)の例で、記載条件に該当しない場合は取引ガイドを参照する。
精算
入札方式にかかわらず、揚水発電等と揚水動力等は同一リソースとみなさず、発電・需要の電力量を別々に計量する。双方向計量器の場合は1台とされる。1入札方式でも調整電力量は別々に計量した電力量からリソースごとに算定する。揚水発電等は実績電力量から発電計画を減じ、揚水動力等は需要計画から、実績電力量を属地TSOの託送供給等約款の損失率で修正した値を減じる。
V1・V2単価は揚水動力等から揚水発電等に向けて上位出力帯ほど高くなるよう登録する。揚水動力等はマイナス9,999,999kWhからゼロまで、揚水発電等はゼロを最下限とするプラス出力帯とする。2入札方式ではMMS仕様により双方の出力帯・単価を相手側にも登録する。1入札方式で揚水発電等のみで参入する場合、揚水発電等にマイナス出力帯をゼロ円で登録する。
上げ・下げ調整電力量料金は両者を別々の単独発電機とみなして算定し、合算する。上げ料金はTSOから取引会員へ、下げ料金は取引会員からTSOへ支払う。余力活用契約で下げ余力のみを契約し、アセスメントⅠの未達率が1の場合は、本文記載の条件としてV2単価を用いる。
揚水応札拡大方策
2024年度時点で揚水発電の応札が少なく、とくに一次調整力・二次調整力①で少ない背景として、ΔkW用ポンプアップ原資の確保と、並列が必要な商品の最低出力・電源態勢の持替えが課題として挙げられる。対応策は、①TSOが余力活用電源で代替ΔkWを用意する、②余力活用契約に基づきTSOが揚水を最低出力で並列し、持替え先も用意する、の二つ。
- 対応策①は、調整力提供者が最低出力等の供給力(ΔkW発動分を含む)を準備できない場合、TSOが他の余力活用契約リソースで代替ΔkWを確保する。供給力を準備する努力を怠った場合、および対応策①の通知前に発生した事故・システムトラブル等は対象外。
- 対応策②は、供給力を準備できたが販売先を確保できず、発電販売計画上で並列状態にできなかった場合、TSOが並列状態にする。供給先確保等の努力を怠った場合、および対象商品ブロックの各30分コマ単位で判断する事故・システムトラブル等は対象外。
適用例として、スポット入札前に約定可能性が低いと考えて入札しなかった場合、別時間帯の発電が経済的として最低出力分を入札しなかった場合、河川流入量予測が外れて前日に最低出力での発電が難しいと判断した場合は対応策①の例。ポンプ原資は調達できたが最低出力分の販売が約定しなかった場合は対応策②の例である。これらは例示であり、属地TSOの照会に応じる必要があり、確認結果によっては適用されない。
対象は揚水発電で、需給調整市場に関する契約書を締結済みであることが示される。対象商品は二次調整力①、一次調整力およびこれらを含む複合商品。対応策②には、余力活用契約で三次調整力②・三次調整力①・二次調整力②相当機能のいずれか、または複数を契約している条件が記載される。どちらの対応策を適用するかは、属地TSOへの連絡時に調整力提供者が選ぶ。
対応策①は実需給前日の12時から15時までに通知し、ΔkWを供出できない場合はMMSで代替不可申請を行う。対応策②は対象商品ブロック開始の1時間前までに通知する。いずれも所定の「揚水応札拡大方策実施申出書兼ΔkW約定量供出不可理由届出書」を属地TSOへメール提出し、電話等でも連絡する。通知期限までに通知した対象ブロックに限り、方策に関する商品要件の特例、アセスメント、ペナルティの扱いが適用される。対応策①では同申出書の提出により様式23は不要。詳細は属地TSOとの協議により運用申合書に定める。
対応策①のアセスメントⅠは不適合、アセスメントⅡはなし。対応策②は、パターン1ではアセスメントⅠ不適合、パターン2では適合で、パターン2はTSOの求めに応じて発電上限電力を提出し、TSOが出力制約等を反映して補正する。両パターンともアセスメントⅡの対象外。どちらのパターンを使うかは属地TSOのシステム仕様によるため、同TSOへの確認が必要。
ペナルティは、対応策①ではペナルティ料金Ⅰの倍率を1.0倍とし、取引規程第41条第1項の処分対象外。対応策②はパターン1で倍率0倍、パターン2でアセスメントⅠ適合とみなし、同項の処分対象外。ただし、対応策②で余力提供不可を選択した場合、または対象ブロック中の想定外の事故・システムトラブル等でΔkW供出が不可能となった場合はこの扱いの例外。対応策②はアセスメントⅡおよび不適合回数の積算の対象外とされる。
提示本文では第6章以降および31ページ以降の内容が含まれていないため、アセスメント・精算等の記載は提示範囲に限られる。複合約定時の一部詳細は31ページ参照とされているが、その内容は確認できない。