文書の位置づけ・対象者
本約款は、電力広域的運営推進機関(本機関)と容量提供事業者が締結する長期脱炭素電源オークションの容量確保契約について、契約条件、金額、リクワイアメント、評価、ペナルティ等を定める。契約対象者は、制度適用期間中に自ら電源を維持・運用しようとする容量提供事業者に限られる(第1条)。契約は契約書と約款で構成され、約款改定により募集要綱と矛盾・抵触する場合は約款が適用される(第2条)。本文には2023年9月13日施行と2024年9月4日、2025年9月3日、2026年9月2日の変更履歴があるが、個々の変更内容は示されていない。
契約期間・金額・精算
契約期間は原則、約定結果公表日(契約締結日)から制度適用期間末日まで。アンモニア・水素混焼設備を専焼化のため建て替える場合には、建て替え期間の一部を制度適用期間から除外する特則があり、混焼設備の運転終了日や供給力提供期限も定められる。既設火力をバイオマス専焼に改修する契約は、制度適用期間末日と2050年度末日(それ以前に設備廃止なら廃止日)の遅い方までが契約期間となる(第4条)。
年度ごとの契約金額は、原則として補正後契約単価×契約容量で算定し、月額は年額の12分の1とする。ただし3月分は年額から他の月額を差し引いて決める。単価補正や特定費用増加時の算定は別紙・容量市場業務マニュアルによる(第6条)。
対象実需給年度の9月から翌年8月まで、毎月末(金融機関休業日は前営業日)に、契約金額から対象年度のペナルティ、還付額、契約解除ペナルティ等を控除して精算する。算定額が正なら支払い、負なら容量提供事業者への請求となり、請求の入金期限も各月末(休業日は前営業日)。対象年度の初月には対象年度前の調整不調ペナルティも控除する。太陽光・風力の一部電源は、制度適用期間終了の10年前から廃棄費用を外部積立し、期間終了または市場退出後に設備を廃棄する場合、積立金の全部または一部を取り戻す(第7条)。金員は指定口座への振込で移動し、手数料は容量提供事業者負担。月次精算通知への異議は受領後5営業日以内に理由を付して申し立てる。異議が期限までに解消しなくても通知に基づいて金員を移動する。請求が期限までに支払われない場合、翌月支払額の減額や未入金事実等の公表があり得る(第26・27条)。
提出・運用上の義務、市場退出
容量停止計画は、電源の維持・運営作業、一定の流通設備作業、自治体との協定履行に伴う停止等について、所定期日までに提出し、変更時は速やかに変更後の計画を提出する。実需給2年度前に計画停止として扱えるのは定期補修・中間補修に限られる。計画停止扱いには提出時期、需給バランス評価で平常とされた期間、休日・夜間等の条件があり、計画停止外の期間や一般送配電事業者の承認済み作業停止計画と不整合の期間は計画外停止となる(第9条)。
所定の場合、年度ごとに電源等差替ができる。供給力提供開始遅延のほか、既設火力のアンモニア・水素混焼改修に専焼化建て替えを加え、供給力を提供できない期間が生じる場合が対象。後者では契約容量の一部のみの差替は不可。差替期間中の金額は、対象年度のメインオークションにおける差替電源の立地エリアの約定価格×差替容量で算定し、差替電源にはその電源区分に応じたメインオークション要件等を適用する。差替期間は制度適用期間に含めない(第10条)。
落札電源の市場退出は原則認められないが、合理的理由による供給不能、必要書類の未提出・虚偽、給電申合書や余力活用契約の未締結・解約、支援制度の不成立・支援額低下、事業中止、追加改修による一部供給不能、費用増加など列挙事由では、全部または一部を退出扱いにできる。全量退出では契約終了と別途解約合意書の締結が定められる(第11条)。退出時の原則ペナルティは退出容量×算定時点の契約単価×10%。ただし第11条第1項第5、7、8、9、10号の事由は不可抗力としてペナルティを科さない(第12条)。
供給力提供開始前の要件・評価
制度適用期間前は、登録した供給力提供開始時期を守り、電源種別ごとの期限までに供給力提供を開始する(第13条)。期限は契約締結日を起算日とし、電源種別、応札年度、法・条例アセスの状況等で異なる。例として2026年度応札では、太陽光は原則5年後(法・条例アセス済なら3年後)、蓄電池は4年後、長期エネルギー貯蔵システムは7年後の各年度末。支援制度等を前提に参加する場合には、契約後3年以内の制度適用決定に関する起算日の特則がある。共用設備を理由に異なる期限の電源を同時落札条件付きで応札した場合、最も遅い期限を共通期限とする。
本機関は供給開始時期の変更がメイン・追加オークションの供給曲線に与える影響や期限超過を評価する。評価通知への異議は受領後5営業日以内に理由を付して申し立てる(第14条)。供給開始時期変更が供給曲線に影響した場合は、変更時期に応じ約定価格・契約容量の5%または10%等のペナルティがある。期限超過時は超過期間(1年未満は1年に切上げ)分だけ契約収入を得られる期間が短縮され、その後の単価等にも特則が適用される。一定の場合のペナルティ返金規定もある(第15条)。
対象年度前・対象年度の要件と評価
対象実需給年度の2年度前は、安定電源・変動電源とも対象となる容量停止計画の調整に応じる。調整機能を持つ安定電源は、アセスメント対象容量以上の上げ・下げ両方の調整力を供出し、登録した運転継続時間以上とする余力活用契約を一般送配電事業者と締結する(第16条)。本機関は調整不調等を評価し、通知への異議期限は受領後5営業日。調整不調には不足量・日数等に応じたペナルティがあり、合理的理由等による対象外の場合や、停止計画調整後の事業者都合変更が供給信頼度に影響する場合の1.5倍措置が定められる。余力活用契約の未締結・解約は市場退出等につながる場合がある(第17・18条)。
対象年度は、安定電源・変動電源とも原則アセスメント対象容量以上の供給力を維持する。対象となる容量停止計画があれば、停止・低出力を合計8,640コマ(180日相当)まで認める。変動電源の自然影響による出力低下・停止には容量停止計画の提出は不要(第19条)。
安定電源は、容量停止計画のない時間帯に小売電気事業者等が使わない発電余力を卸電力取引所等に売り入札し、低予備率アセスメント対象コマでは一般送配電事業者の供給指示に応じる。燃料・充電制約、相対契約上の市場不在、平常時の不経済な起動等の列挙事由では入札量を減らせる。対象となる脱炭素燃料電源には年間最低混焼率、既設火力からCCS付火力への改修電源には年間最低CO2貯蔵率が課され、設備利用率に応じた基準式がある。2026年度以降応札の水素・アンモニア電源には所定CI値要件を満たす燃料による混焼率要件がある(第19条)。
変動電源には応札年度・電源種別等に応じた年間設備利用率基準が適用される。2026年度応札の例は、太陽光14.8%、陸上風力24.5%、洋上風力25.2%、流込式水力51.0%。本機関は供給力維持、入札、供給指示対応、混焼率、CO2貯蔵率、設備利用率等を評価し、対象年度の評価通知に対する異議は受領後7営業日以内に申し立てる(第20条)。
対象年度のペナルティは停止コマ相当数、低予備率時の未入札量・供給指示未達、混焼率・CO2貯蔵率・設備利用率の未達等に応じて算定する。混焼率・CO2貯蔵率が基準未満の場合、基準値や設備利用率に応じて年額の10%または20%等が定められ、合理的理由なく継続的に著しく低い場合は契約解除の対象となり得る(第21条)。対象年度の経済的ペナルティには年額110%の年間上限、年額18.3%の月間上限があるが、混焼率、CO2貯蔵率、変動電源の設備利用率に係るペナルティは月間上限の対象外(第25条)。
脱炭素化ロードマップ、他市場収益、不可抗力
LNG専焼火力、水素・アンモニア火力、混焼設備、バイオマス専焼改修、CCS付火力改修等の対象電源は、脱炭素化ロードマップを作成し、必要に応じて改訂して遵守する。内容には供給開始後10年以内に脱炭素化対応を開始する旨や2050年度までのバイオマス専焼化等が含まれる。本機関は改訂・遵守を評価し、合理的理由なく必要な改訂をしない、または内容を守らない場合は解除対象とする。所定時点までにバイオマス専焼化が実現しない場合、制度適用期間の終了時期に応じ、参入ペナルティと年額10%のペナルティ、または契約解除が定められる(第22~24条)。
第28条の提示範囲では、他市場収益が正値の場合に一部を事後還付する。契約電源ごとに年間他市場収益確定後に算定し、実際の他市場収入から実際の可変費を差し引き、応札価格に算入した可変費を控除する方法が示される。相対契約に係る規律が満たされない場合は所定のスポット市場価格等を用いる。還付率は区分により、応札価格に織り込まれた資本コストまでの部分が95%、契約単価と対象年度メインオークション価格との差額を超える部分が85%、その間が90%で、各区分を合算する。①と②が重なる部分は②扱い。資本コスト・契約単価には別紙補正や契約単価変更を反映する。LNG専焼火力の「還付の固定化」選択期間は、還付水準額×本オークション参加可能な送電端設備容量で算定するが、水準・設定方法は国の審議会で検討継続中とされる。脱炭素燃料の混焼率拡大に向けた追加投資がある場合、該当制度適用期間開始後は追加投資に係る容量を控除する。年度の他市場収益が負値なら翌年度算定時に差し引き、専焼化建て替えでは建て替え前電源の運転終了年度の前年度の負値を建て替え後電源の初年度に繰り越す。契約金額、所定の経済的ペナルティ、還付額は消費税等相当額の課税対象だが、年間の経済的ペナルティ累計と還付額の合算が契約金額を超える部分は不課税。なお、本文が示す範囲を超える算定手続等はここから補えない。
大規模天災、戦争等の無秩序状態、事後的な法令改正・規制・裁判による運転停止、一般送配電事業者の送電線故障による出力抑制、その他事業者が予見できない事象は不可抗力に当たり得る。合理的努力をしても要件達成ができない、または明らかにできなくなる場合、容量提供事業者は遅滞なく本機関へ連絡する。本機関が個別に確認し、例外的に経済的ペナルティを適用しない場合がある。第11条第1項第2、3、4、6、11号に該当する市場退出ペナルティにはこの特則を適用しない。影響を最小限にする努力をし、影響除去後は直ちに本機関へ通知する(第29条)。2051年度期首に制度適用期間が終了している既設火力のバイオマス専焼化改修で、2050年度までの専焼化未達が明らかな場合、本機関は参入ペナルティを科すことができる(第30条)。
契約変更・譲渡・解除、一般条項
市場退出、差替、供給開始時期変更、収入期間短縮、系統接続費や支援金額の差異、混焼率拡大投資、専焼化建て替え、地位譲渡、特定電源解除、法令規制対応等で契約電源の内容が変わる場合、別途定める業務マニュアルに従って契約変更を行う。原則は容量市場システム経由で、本機関の承認により成立する(第31条)。契約上の権利・義務・地位の第三者譲渡・承継には本機関の事前同意が必要。既発生の債権債務の承継も同意により決まり、承継後も当該電源のリクワイアメント達成状況を引き継ぐ(第32条)。
相手方の支払不能、倒産手続、解散等の場合は通知により解除できる。本機関は市場公正を害する行為、ロードマップの取組み不足、バイオマス専焼化未達、補助金等に関する事後判明、環境影響評価書類の期限内未提出、混焼率・CO2貯蔵率の著しい低さ、監視書類未提出など所定事由や重大違反により契約または電源単位の契約を解除できる。環境影響評価方法書の手続開始を称する書類は事業計画書提出時に添付できず、約定結果公表後5か月以内にも提出されない場合は解除事由となる(第33条)。第33条第1~3項の解除では契約容量全部または該当電源の契約容量全量を市場退出とし、第1・2項による解除では市場退出ペナルティに加え、解除年度に市場退出までに交付された契約金額を上限とする解除ペナルティが科される場合がある。
本機関は故意・重過失を除き、要件達成に伴う設備事故・停電等による事業者の不利益に責任を負わない(第34条)。秘密情報は原則同意なく第三者に開示しないが、公知情報、既知情報、適法取得・独自開発情報、法令等に基づく開示、公表対象情報等は例外で、必要範囲で監督官庁等にも開示できる。守秘義務は契約終了後も有効(第35条)。本機関は個人情報を適切に管理し、再委託先にも書面で同等措置を義務付ける。漏えい等を認識した場合は拡大防止措置と事業者への直ちの報告を行い、所定違反による損害を賠償する。規定は契約終了後も有効(第36条)。反社会的勢力との関係排除を表明・保証し、違反判明時は直ちに通知する。違反時は通知・催告なしに全部または一部を解除できる(第37条)。契約は日本語を正文とし日本法準拠、第一審の専属管轄は東京地裁で、未定事項・疑義は誠実に協議する(第38~40条)。
契約単価補正・事後費用増加、用語
別紙1では、約定単価から所定の系統接続費減額分や水素・アンモニア支援金超過分を差し引き、応札時に選択した方法で制度適用期間の各年度期首に毎年補正する。費用項目別方式では資本費、運転維持費、資本コスト、可変費を建設工事費デフレーター、物価指数、金利、燃料・電力等の指標で補正する方法と、コアCPI補正がある。水素・アンモニア・CCS可変費には燃料由来、調達・貯留地域、CAPEX/OPEX区分等に応じた算式があり、応札時に特定指標による補正不要を選んだ場合、その指標係数は1とする。
別紙2の事後費用増加制度は、供給力提供開始期限まで10年以上かつ送電端設備容量30万kW以上の新設・リプレース電源が対象。法令規制・審査・行政指導への対応で他律的に発生し、事前見積りが難しい費用が、応札価格に算入した予備費(所定補正後)を契約期間中に超えた場合、事業者が申請できる。複数事象の累積超過も含み、増加額は監視を経て認められた額を基に算定する。建設費増加は申請時と工事完了後の再申請・確認がある。原則、所定構成額の10%を事業者負担とし、工事完了日・申請時期に応じ単価を再算定する。算定後単価が当初の1.5倍を超える場合、上限内となるよう制度適用期間を最短で延長する。運転維持費のみの増加も申請承認日や残余期間に応じ算定し、増加額の10%を事業者負担とする。
別添では対象実需給年度を制度適用期間中の4月1日から翌年3月31日までの年度と定義する。制度適用期間は供給力提供開始年度の翌年度(開始年度が2025年度以前なら2027年度)から原則20年間の容量収入期間。別添は属地、調整不調電源、アセスメント対象容量、コマ、休日・営業日、昼間・夜間、供給力提供開始日・年度・時期・期限、支援制度、CI値、ロードマップ等を定義する。他市場収益には、契約電源の電気・需給調整市場・非化石価値の売却収入から可変費を減じた収益のほか、応札価格に算入した設備等を利用したLNGタンク貸与、燃料転売、CCS設備によるCO2販売等の収入を含む。LNGタンクを第三者と共有する場合は想定利用比率で按分する。