トランジションファイナンスに関するガス分野の技術ロードマップ
資料の目的・背景
本資料は、経済産業省が策定した「トランジションファイナンス」に関連するガス分野における技術ロードマップの更新案である。初版は2022年に策定され、2025年11月に再度更新される予定である。
技術ロードマップの概要
本技術ロードマップの目次に基づき、ガス分野における技術の位置づけやカーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みの方向性を示す。内容は以下の通りである。
| 章 | 節 | 概要 |
|---|
| 1. 前提 | | ガス分野における技術ロードマップの必要性、目的の位置づけ |
| 2. ガス事業について | | 日本におけるガスの位置づけ、重要性、CO2排出量、CNに向けた動向 |
| 3. カーボンニュートラルへの技術の道筋 | ① | CNに向けた低炭素・脱炭素技術 |
| ② | 技術ロードマップの詳細 |
| ③ | パリ協定との整合性 |
| 4. 脱炭素化及びパリ協定の実現に向けて | | 他分野との連携、本ロードマップの今後の展開 |
ガス分野における技術ロードマップの必要性
- CO2多排出産業であるガス分野は、代替手段が技術的・経済的に未解決であり、トランジションの重要性が高い。
- 日本の消費エネルギーの約6割は熱需要であり、ガスはその供給の基盤を成す。
- 第7次エネルギー基本計画において、天然ガスはカーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源と位置付けられている。
- ガス分野のネットゼロへ向けた移行は不可欠であり、次世代熱エネルギーの技術開発および資金調達が必要である。
技術ロードマップの目的・位置づけ
- 本ロードマップは、「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」に基づき、ガス事業の企業が気候変動対策を検討する際の参考資料を提供することを目的としている。
- 2050年のカーボンニュートラル実現を最終目標として、実用化が想定される低炭素・脱炭素技術を示す。
- 脱炭素のための研究開発を促し、企業は省エネやエネルギー転換への取り組みを進める必要がある。
ガス事業の現状
都市ガスとLPガスの比較
| 都市ガス | LPガス |
|---|
| 主な原料 | 天然ガス (LNG) | プロパンブタン |
| 供給区域 | 都市部中心 (国土の6%弱) | 全国供給可能 |
| CO2排出量 | 約8,300万トン年 | 約3,000万トン年 |
CO2排出の現状
- 都市ガスの年間販売量に伴うCO2排出量は約8,300万トンで、日本のCO2排出量の約1割を占める。
- サプライチェーン全体での排出削減も重要であり、特に燃焼段階での排出が多いため、効率化や技術革新が求められる。
今後の展開
- 企業、技術、金融の専門家との連携を強化し、脱炭素化に向けた具体的な取り組みを進めることが重要である。
- グローバルなESG資金を呼び込むための戦略的発信が求められ、多排出産業もその取り組みを透明に示すことが期待されている。
都市ガス事業における排出削減の取り組み
概要
都市ガス事業では、排出削減を目指して以下のような取り組みが行われている。
- 冷熱発電
- ガスコージェネレーションシステム
- 自然エネルギーの活用
排出削減の全体像
主要な設備やプロセスにおける排出削減の指針が示されている。
主要設備には以下が含まれる
対策
都市ガス事業における排出削減のために以下の対策が講じられている。
対策①: コージェネの導入
- コージェネレーション: 廃熱を利用して給湯や暖房に使用される。
対策②: LNGの冷熱利用
- 冷熱発電: LNGの気化過程で回収された冷熱を電力エネルギーとして利用。
- BOG再液化装置: 冷熱を利用して再液化。
対策③: 設備の高効率化
対策④: 運転の効率化
エネルギー基本計画
- 第6次エネルギー基本計画: 2040年度温室効果ガス73%削減目標に整合する形で策定された。
- 天然ガスの脱炭素化: 将来的には水素や合成燃料としての利用が期待される。
熱需要の脱炭素化の重要性
- 日本の消費エネルギーの約6割は熱需要であり、特に高温域での電化が難しい。
- ガスの脱炭素化は熱需要削減に重要な役割を果たすことが期待される。
燃料転換等による削減実績
燃焼時のCO2排出量
事例
課題と今後の展望
- トランジション期: 技術の確立が不透明であり、そのコスト削減が重要。
- 今後も燃料転換や省エネ技術の導入を通じて、カーボンニュートラルを目指す必要がある。
バイオガスの利用
バイオガスは地域資源を活用した脱炭素化に寄与するため、活用促進が進められている。廃棄物から発生し、都市ガスとの親和性が高い。
結論
都市ガス事業における排出削減の取り組みは、今後のエネルギー戦略において重要な位置を占めており、技術の進展や燃料転換が鍵となる。合成メタンやバイオガスの導入により、持続可能なエネルギー供給が期待される。
ガス事業について(都市ガス)
2030年度の導入目標及び事業環境整備
-
2030年度における合成メタン等の供給目標
- 2025年7月に、合成メタン等の供給目標に向けた規制・制度を整理する。
- 高度化法に基づく目標設定や託送料金制度の活用を含む。
- 2026年1月中旬までに、目標達成のための計画を提出予定。
-
2050年カーボンニュートラルの実現
- 全国の都市ガス事業者によりカーボンニュートラル化を推進する視点から検討が必要。
- ガスシステム改革の検証は2027年3月までに実施予定。
短期的な目標に向けた必要な規制・制度
高度化法における目標設定
-
対象ガスの追加
- 既存のバイオガスに加え、合成メタンを目標対象に追加。
-
事業者の目標
- 2030年度中に、各事業者のガス小売供給量(熱量ベース)の1%に相当する合成メタン又はバイオガスを調達。
- 有効に利用できる範囲内で、ガス小売供給量の5%相当量を調達すること。
-
計画作成事業者の条件
- 前事業年度に、可燃性天然ガス製品の供給量が900億MJ以上の事業者(例:東京ガス、大阪ガス、東邦ガス)。
-
証書導入の必要性
- 目標達成のための証書導入については引き続き検討中。
託送料金制度の活用
-
算入可能額についての算出方法
- 公平な競争環境を整備するため、調達費用が高い場合、それを託送料金原価に含めることが可能。
-
環境価値の扱い
- 負担した費用を公平に分配し、特定の需要家向けに利用することを可能にする。
-
託送料金の改定
今後の対応
- 短期的な規制・制度については、2030年度の目標達成に向けて関係法令等の改正を2025年7月に実施予定。
- 中長期的なカーボンニュートラル化に向けた制度についても引き続き検討が必要。
クリーン燃料証書制度の段階的な立ち上げ
- 環境価値を適切に主張するために次世代燃料の導入を促進する。
- 段階的な立ち上げ
-
第1段階(実証)
- 2025年度に実証準備、26年度に実証開始予定。
- バイオ燃料、合成燃料等の少量実証を実施。
-
第2段階(本格稼働)
-
第3段階(拡張・発展)
- 制度の状況を踏まえ、機能の強化や国際展開について検討。
クリーンガス証書の運用について
- 合成メタンとバイオガスをクリーンガスとして定義し、2024年4月より民間制度として運用開始。
- 認定された設備からのクリーンガス製造量を基に証書発行を行う。
クレジットでオフセットされた都市ガスの導入
- 複数のガス事業者がCO2をオフセットする取り組みとしてクレジットを利用した都市ガスを販売開始し、信頼性の確保や市場動向を踏まえた議論が進められている。
重要なデータ
| 導入に取り組むガス事業者 | 需要家の導入例 |
|---|
| 厚木ガス | 丸の内ビルディングのSOFC |
| 大阪ガス | 学校法人玉川学園の全量 |
| 東京ガス | (株)ヤクルト本社の全量 |
ガス事業について(LPガス)|グリーンLPガスの現状と課題
グリーンLPガスとは
グリーンLPガスは、バイオLPGや合成LPガスなど、化石燃料に依存しないLPガスの総称である。現在の主流はバイオLPガスであり、生産比率は10:1である。
グリーンLPガスの生産技術の課題
- グリーンLPガスの生産に特化した先進技術は確立されていない。
- 需要の拡大は中国やインドの燃料転換が牽引する見込みであり、大量生産技術の確立が急務である。
グリーンLPガスの主な生成方法
-
バイオマスによる生成方法
- 家畜の糞尿や下水などの汚泥からメタン発酵を経て生成。
-
メタノール経由の間接製法
- CO2とH2からメタノールを生成後、LPガスを生成。
-
従来のメタネーションを参考にした生成方法
グリーンLPガスの研究開発状況
研究開発プロジェクト
2025年10月時点で、日本国内においてグリーンLPガスに関する9件の研究開発プロジェクトが進行中である。
| 開発主体参画者 | 開発プロジェクト名 | 概要 |
|---|
| 北九州市立大学 日本グリーンLPガス推進協議会 | 一酸化炭素水素からのグリーンLPガス直接合成技術開発 | CO2/H2からDMEを合成するプロセス設計等 |
| 産総研 NEケムキャット 日本グリーンLPガス推進協議会 | カーボンリサイクルLPガス合成技術開発 | CO2等からDME合成、プロパンブタン製造等 |
| ENEOSグローブ 日本製鉄 富山大学 | カーボンリサイクルLPGのための触媒実用性向上と製造プロセス研究開発 | 触媒性能向上、量産化方の確立等 |
| カナデビア 産総研 | CO2からの直接LPG合成技術開発 | CO2とH2からLPG成分を合成等 |
| iPeace223ジクスが出資参画 | バイオエタノールからバイオプロピレン/バイオプロパンを製造する技術 | エタノール脱水から触媒反応工程の開発等 |
| 広島大学 広島ガス | メタノール経由のCO2からのグリーンLPガス合成 | 合成ガスからのLPガス合成等 |
GI基金事業と社会実装に向けた取組
- **GI基金(NEDO)**を活用し、バイオ原料等からのグリーンLPガス生成の実証プラントが2024年8月に設立され、2030年には年間1000tの技術の実証が完了予定である。
GI基金事業の特長
- 事業規模:約84億円(GIが52億円)
- 事業期間:2022〜2030年
- 原料:化石燃料によらない様々な原料を使用。
rDME混合LPガスの実用化に向けた検討
グリーンLPガスの社会実装には時間がかかるため、トランジション期において低炭素LPガスの実用化を図るべく、**rDME(再生可能ジメチルエーテル)**を混合したLPガスの実用化検討が進められている。
今後の作業・検討スケジュール
| 年度 | 燃焼試験 | 規格改定 | 流通検討含エンジン関連 | 環境評価部会 | 渉外部会 |
|---|
| 2025年度 | 課題整理 | - | - | - | - |
| 2026年度 | 燃焼試験混合上限値検討 | - | - | - | - |
| 2027年度 | JIS原案企画委員会立ち上げ | JIS液石法ISO改定 | - | - | - |
| 2028年度 | ミッション実証開始小規模 | - | - | - | - |
| 2029年度 | 消費者/需要家向けPR | - | - | - | - |
| 2030年度 | 本格導入開始 | - | - | - | - |
グリーンLPガスの社会実装に向けたロードマップ
- 2050年にLPガスの全量カーボンニュートラル(CN化)を目指し、2035年には消費量の16%に相当する約530万トンのCO₂削減を目指す。
各年の目標
- 2024年度:LPガス消費量1,199万t。
- 2035年度:消費量約1,110万tに対し16% CN化。
- 2040年度:国産・輸入グリーンLPガスのさらなる拡大。
- 2050年度:100% CN化を目指す。
CO₂削減施策
| 施策 | 割合(%) | 内容 | CO₂削減量(万t) |
|---|
| I. グリーンLPガスの輸入 | 30-50% | 海外からのグリーンLPガス原料の輸入 | 約160-264 |
| II. グリーンLPガスの国内生産 | 10-20% | バイオ原料合成ガスによる生産 | 約53-105 |
| III. カーボンクレジットの利用 | 10%程度 | カーボンオフセットLPガス利用拡大 | 約53 |
| IV. 高効率省エネ機器の普及 | 15-20% | 高効率機器の普及等 | 約80-105 |
| V. LPガスへの燃料転換の推進 | 15-20% | LPガスへの転換等 | 約80-105 |
政策と取り組み
- 2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画において、グリーンLPガスに係る取り組みを推進する方針が示されている。
ガス事業に関する進捗状況
1. 水素事業における支援・拠点整備の進捗
- 水素社会推進法に基づくプロジェクトにおいて、化石燃料との価格差に注目した支援スキームの公募が行われ、令和7年3月31日の締切までに27件の計画申請があった。
- 想定される支援総額は3兆円を超える。
- インフラ拠点の整備支援の申請は令和7年6月末まで受け付けている。
審査プロセス
- 形式審査を進め、外部有識者からなる第三者委員会の意見を聴取し、評価基準に基づいて優先案件を選定する。
- 審査は夏から年度後半にかけて行い、条件が整った案件から順次、認定を進める予定。
スケジュール
| フェーズ | 予定日 |
|---|
| 価格差に着目した支援の申請期間 | ~令和7年3月31日 |
| 拠点整備支援の申請 | ~令和7年6月30日 |
| 審査・認定 | 令和7年度末 |
2. CCUS(カーボンキャプチャー・ユーティリゼーション・ストレージ)の取り組み
- カーボンリサイクルは、CO2を資源として利用するための重要な技術であり、大学との連携を通じて複数のNEDO事業に参画している。
主要プロジェクト
| プロジェクト名 | 共同実施者 |
|---|
| 吸着式CO2分離回収におけるLNG未利用冷熱の活用 | 名古屋大学 |
| 未利用冷熱による燃焼ガス中CO2の回収技術の開発 | 名古屋大学 |
| 冷熱を利用した大気中二酸化炭素直接回収の研究開発 | 名古屋大学、東京理科大学 |
- 東京ガスは、需要家先で排出されるCO2を回収し、活用する技術開発を進めており、2023年度内にサービスを実現する予定である。
3. DAC(Direct Air Capture)技術の概要
- DAC技術は、大気中のCO2を直接分離・回収するものであり、高度な技術が要求される。
- エネルギーコストの低減に向けた開発が進行中であり、NEDOのムーンショット型研究開発事業の一環として位置付けられている。
4. 燃料アンモニアの可能性
- アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないため、脱炭素化を進めるための有効な燃料として注目されている。
GHG排出削減目標
| 年 | GHG排出削減目標 |
|---|
| 2008年基準 | 2020年代:20~30% |
| 2030年 | 70~80%削減 |
| 2050年 | GHG排出ゼロ |
燃料転換のシナリオ
- 従来船からアンモニア燃料船への転換を2026年に実証予定である。
5. ガス事業における分野別投資戦略
- 国は企業の予見可能性を高め、GX投資を促進するため、ガス分野に関する分野別投資戦略を策定している。
審議会メンバー構成
本資料では、経済産業分野におけるトランジション・ファイナンス推進のためのロードマップ策定検討会における委員及び専門委員の構成について説明する。
委員構成
座長
- 秋元 圭吾
- 所属: 公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)
- 職位: システム研究グループリーダー・主席研究員
委員
- 押田 俊輔
- 所属: マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社
- 職位: クレジット調査部長
- 梶原 康佑
- 所属: 株式会社日本格付研究所
- 職位: シニア・サステナブル・ファイナンス・アナリスト 国際評価ユニット長
- 関根 泰
- 高村 ゆかり
- 所属: 東京大学
- 職位: 未来ビジョン研究センター 教授
- 竹ケ原 啓介
専門委員
- 早川 光毅
- 所属: 一般社団法人日本ガス協会
- 職位: 専務理事
- 縄田 俊之
まとめ
本検討会のメンバーは、さまざまな分野から集まった専門家で構成され、特にトランジション・ファイナンスやエネルギー経済に関する深い知識を持つ。今後の議論により、ガス分野における政策や施策が策定される予定である。