第3回送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキンググループ(WG)に関する資料
資料の目的・背景
本資料は、経済産業省が提出したものであり、**第3回送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキンググループ(WG)**に関する内容である。主に、欧州における託送料金制度の国際的なトレンドや各国の制度の要点・課題を分析している。
本日の内容
本資料では以下の内容が議論される。
- 託送料金制度に関する国際的なトレンド(欧州のケース)
- 発電事業者に対する送配電網の維持・運用費用の負担
- 基本料金と従量料金の設定
- 送電ロスの取扱い
- 英国の託送料金制度の要点・課題
- ドイツの託送料金制度の要点・課題
託送料金制度関連の国際的トレンド
負担の傾向
- 発電事業者の負担: 欧州では発電事業者に対して送配電網の維持・運用費用の負担を求める傾向がある。
- 固定費の回収: 固定費を基本料金で回収する方向性が見られる。
- 送電ロスの取扱い: 発電側が送電ロスを補填するケースが多く、送配電事業者が調達する制度も存在する。
具体的な要因
- EU指令(838/2010): 発電事業者に課すことができる託送料金額に上限が設定されている。
- 上限値に対するACERのレビュー: 合理的な発電側課金が可能であれば上限値は不要との意見がある。
- 基本料金の回収率: 欧州各国では基本料金の回収率を引き上げる傾向がある。
各国の託送料金制度
設定状況(インフラコストのみ)
以下の表は、EU指令によって設定された発電事業者に対する託送料金の上限値を示している。
| 対象国 | 上限値 (EUR/MWh) |
|---|
| 英国、アイルランド | 2.5 |
| ルーマニア | 2.0 |
| デンマーク、フィンランド、スウェーデン(ノルウェーはEU非加盟国) | 1.2 |
| その他EU加盟国 | 0.5 |
送電ロスの取扱い状況
- 送電ロス率:
- 英国: 8.5%
- ドイツ: 5.4%
- フランス: 7.4%
- ノルウェー: 8.0%
- 米国(PJM): 6.6%
補填主体
- 主な補填主体は発電事業者であり、送配電事業者も補填に関与する場合がある。
要点・課題
- 欧州の託送料金制度では、発電事業者の負担が重要な点であり、送電ロスの扱いや固定費の要素も課題となっている。各国での取り組みの違いを参照しながら、今後の制度設計に生かすべきである。
まとめ
欧州の託送料金制度においては、発電事業者が大きな負担を強いられる一方で、送電ロスや基本料金の回収率の向上が議論されている。この傾向を踏まえ、日本においても適切な制度設計が求められる。
地点料金の設定方法
Local Substation Tariffの概要
Local Substation Tariffは、電力需給の重要な要素であり、以下の3つの要素によって計算される。
| 3要素 | 内容 |
|---|
| 1 高圧接続の電圧 | 需要家の接続設備と送電システムの間の境界における電圧 |
| 2 変電所におけるTECの合計 | 接続する変電所におけるTEC(Transmission Entry Capacity)の合計 |
| 3 変電所における冗長性の程度 | 冗長性がない(シングルブスバー)またはある(ダブルブスバー) |
2010-11年のLocal Substation Tariff
以下は、1320MWの変電所における接続タイプ別の料金である。
| Substation Rating (b) | Connection Type (c) | Substation Voltage (a) | 132kV | 275kV | 400kV |
|---|
| =1320MW | No redundancy | | 0.133 | 0.081 | 0.065 |
| =1320MW | Redundancy | | 0.301 | 0.192 | 0.155 |
| =1320MW | No redundancy | | n/a | 0.257 | 0.208 |
| =1320MW | Redundancy | | n/a | 0.417 | 0.336 |
注: シングルブスバー構成は冗長性がなく、ダブルブスバー構成は安定性が高いがコストがかかる。
地点別料金の設定(発電向け)
2015年の料金設定
発電所の立地に基づき、北部と南部で料金が異なる。
| Zone | Zone Name | Zonal Tariff (/kW) |
|---|
| 1 | North Scotland | 25.546023 |
| 2 | East Aberdeenshire | 21.084720 |
| 3 | Western Highlands | 23.455451 |
| ... | ... | ... |
| 27 | West Devon and Cornwall | -5.804749 |
2016年の料金設定
2015年と同様の地域ごとの料金傾向が見られた。
| Zone | Zone Name | System Peak Tariff(/kW) | Shared Year Round Tariff(/kW) | Not Shared Year Round Tariff(/kW) | Residual Tariff(/kW) | Conventional 70% Tariff(/kW) | Intermittent 30% Tariff(/kW) |
|---|
| 1 | North Scotland | -1.986384 | 10.510176 | 7.768442 | 0.505777 | 13.644958 | 11.427272 |
| 2 | East Aberdeenshire | -0.952272 | 4.161935 | 7.768442 | 0.505777 | 10.235302 | 9.522800 |
| ... | ... | ... | ... | ... | ... | ... | ... |
| 27 | West Devon and Cornwall | 0.254545 | -3.948547 | | 0.505777 | -2.003661 | -0.678787 |
例: North Scotlandの火力・水力発電と風力の料金計算が示されている。
地点別料金の設定(Local Circuit ChargeとLocal Substation Charge)
1. Local Circuit Charge
基幹系統までの送電線コストであり、変電所の位置により異なる。
| Node No. | Substation | Local Tariff (/kW) |
|---|
| 1 | Achruach | 3.877930 |
| 2 | Aigas | 0.590978 |
| ... | ... | ... |
| 61 | Spalding | 0.247667 |
2. Local Substation Charge
最初の変電所に関するコストである。
| Substation Rating | Connection Type | Local Substation Tariff (/kW) 132kV | Local Substation Tariff (/kW) 275kV |
|---|
| =1320 MW | No redundancy | 0.181419 | 0.103783 |
| =1320 MW | Redundancy | 0.399652 | 0.247267 |
送配電料金制度に関する主要な課題
- 自家発保有者が系統の固定費を負担していない
- 再生可能エネルギーの増加による配電網への接続困難
- 配電網から送電網への逆潮流の発生
- Active Managementの取組み進行中
送電ロスに関する提言
CMA(競争・市場局)から、送電ロスの負担を地点別料金制度で導入すべきとの提言がされている。
送配電料金算定フロー
日本における送配電コストの負担について、現行制度の重要なポイントを整理する。
送配電料金の負担
- 小売事業者が**100%**負担
- 送配電料金の算定は以下のプロセスを経る
- 収入上限値の設定
- 発電事業者・小売事業者の負担分割
- 電圧別の料金配分
- 料金設計
料金設計のポイント
- レベニューキャップ方式: 収入上限を設定する方式
- スーパシャロー方式: 特定の条件下で設定される料金方式
TSO(送電系統運用者)の料金構成
- OPEX+CAPEX + 事業報酬
- 信頼性、安全性等によるボーナスやペナルティ
- インフレによる物価調整
- 収入上限値が設定され、発電事業者と小売事業者の負担として計上
- 課金:kW(キロワット)とkWh(キロワット時)の組み合わせ
DSO(配電系統運用者)の料金構成
- OPEX+CAPEX + 事業報酬
- 信頼性、安全性等によるボーナスやペナルティ
- インフレによる物価調整
- 収入上限値の下で発電事業者と小売事業者が負担
- 課金:電圧別に配分されたkWとkWhの組み合わせ
分散型電源導入促進のための仕組み
分散型電源の導入を促進するための送配電料金に関する制度を説明する。
制度概要
- 目的: 分散型電源の導入促進
- 導入時期: 2005年7月
- 具体的な内容:
- 上位系統のコストを回避した成果に基づき、発電事業者にインセンティブを提供
- 回避された系統利用料が発電事業者に支払われる仕組み
回避された系統利用料の算定方法
- 算定式:
- 回避された系統利用料 = 回避された電力[kW] × 上位系統の託送料金[円/kW] + 回避された電力量[kWh] × 上位系統の託送料金[円/kWh]
- 留意点:
- 支払原資は送電料金であり、分散型電源導入促進コストの一部は配電料金を通じて回収
- 発電事業者がDSOに申請を行うことにより受領可能
- 分散型電源の立地は考慮されない(需要地に近くとも遠くとも対象)
本制度への評価
- 低圧に接続した場合、他地域への送電が多く見られており、実態を反映した制度ではないとの指摘
- 負担コストは上昇傾向にあり、2021年をもって制度は廃止される方針が決定された
ドイツにおける送電ロス補填電力の調達方法
ドイツの送電ロス補填に関する規制と手続きについて説明する。
調達方法の歴史
- 2005年7月: ドイツ政府はエネルギー事業法及びグリッドアクセス規制を改正
- 系統運用者は透明性が高い市場を通じて、送電ロスを調達する義務が設けられた
- 2008年10月: 規制当局BNetzAが送電ロスの決定方法に関する手続きBK6-08-006を発行
入札方法の概要
- 系統運用者(TSO及び顧客数が10万人以上のDSO)は送電ロスを入札により調達
- 調達品には長期と短期の商品があり、長期商品は入札調達と卸市場取引が認められる
- 系統運用者は取引の詳細を遅くとも3週間前に公表する必要があり、1ロットあたりの取引量は50,000MWhを超えないことが求められている
送配電料金制度に関する主要な課題
ドイツにおける送配電制度の主な課題を整理する。
主要な課題の概要
- 回避された系統利用料の廃止: 送電網利用による料金を割り引いていたが、実態を反映していないため廃止を決定
- 南北連系線の増強の必要性: 電源の偏りと需要分布の不均衡による託送コスト上昇
- 配電網への電源接続の増加: 混雑時の出力制御により補償額が拡大して問題視
- 国際連系線の費用負担: 国際連系線建設の受益者特定が難しく、EUが拠出するファンドでの建設が進められることが決定
このように、現行の制度や仕組みそれぞれに、相応の課題が浮上している。