トランジションファイナンスに関する化学分野の技術ロードマップ
概要
本資料は、「トランジションファイナンス」に関する化学分野における技術ロードマップの更新案について述べている。初版は2022年11月に策定され、2025年12月に再更新が予定されている。
技術ロードマップの構成
技術ロードマップは以下の4つの章で構成されている。
| 章 | 節 | 概要 |
|---|
| 1. 前提 | | 化学分野における技術ロードマップの必要性とその目的、位置づけに関する内容 |
| 2. 化学産業について | | 日本の化学産業の位置づけ、重要性、CO2排出量、製造プロセス及び脱炭素に向けた方向性 |
| 3. カーボンニュートラルへの技術の道筋 | ①低炭素脱炭素技術 ②技術ロードマップ ③科学的根拠 | カーボンニュートラル実現に向けた技術オプション及び技術開発のマッピング |
| 4. 脱炭素化及びパリ協定の実現に向けて | | 他分野との連携及び本ロードマップの今後の展開 |
ロードマップの必要性
化学産業は多くのCO2を排出する産業であり、排出ゼロのための代替手段が今日では技術的・経済的に実用できない。トランジションの重要性が高く、以下の理由から化学分野に特化している。
- 化学品は生活の多くの製品の材料として使用されており、産業の基盤を支えている。
- 化学産業はCO2を資源として有効利用できる可能性を持つ。
- 化学産業は国内で鉄鋼業に次ぐCO2排出量を誇る。
トランジションファイナンスの目的
この技術ロードマップは、以下の目的で策定されている。
- 企業がトランジションファイナンスを活用した気候変動対策を検討するための参考資料
- 銀行、証券会社、投資家が資金調達を判断する際の指針
- 2050年までに実用化が想定される技術やそのタイミングを示すことを目的とする
脱炭素に向けた方向性
化学産業における脱炭素化には、以下の技術革新と研究開発が求められている。
- 燃料転換:ナフサ分解炉の熱源を脱炭素燃料に切り替える
- 原料転換:廃プラスチックやバイオマスからの化学品製造技術の開発
CO2排出状況
2023年度の日本全体のCO2排出量は約10億トンであり、その34%は産業部門からのものである。化学産業はその約15%を占めており、CO2排出削減が急務である。
- 産業部門の排出内訳:化学産業 15%、鉄鋼・非鉄・機械 53% 等
- 化学産業内のエネルギー由来の排出量は約5,200万トンであり、石油化学業界が多数を占める。
今後の方針
化学産業の競争力強化に向けて、以下のアプローチが重要である。
- 製造プロセスの転換を進め、脱炭素化を目指す
- 研究開発の促進とともに、資金調達を見据えた投資戦略を展開する
この技術ロードマップは、国内の化学産業がカーボンニュートラルを実現するために必要な道筋を示すものである。
化学産業における燃料転換・原料転換の取り組み
1. 燃料転換に関する取り組み
- アンモニアを使用した熱源のカーボンフリー化により、ナフサ分解炉の高度化技術開発を進める。
2. 原料転換に関する取り組み
- 廃プラスチック・廃ゴムのケミカルリサイクルによる原料化
- CO2からの機能性化学品製造技術
- バイオマス由来のアルコール類から化学品を製造する技術開発
3. リサイクルの動向
- 廃プラスチックの排出状況
- 年間769万トンの廃プラスチックが排出され、約89%がリサイクルされている。
- そのうち約6割が熱源として利用されているため、ケミカルリサイクルの重要性が増している。
| リサイクル方法 | 割合 |
|---|
| 熱回収 | 64% |
| マテリアルリサイクル | 22% |
| ケミカルリサイクル | 3% |
| 単純焼却 | 8% |
| 埋立 | 3% |
ケミカルリサイクルの技術確立により、化学産業全体の排出削減に貢献することが期待される。
4. 海外の動向
海外メーカーは機能性化学品の競争力を強化している。
- 事例としてBASFがエンジニアリングプラスチックの生産を強化している。
- Dowはリサイクル事業で脱炭素化に注力している。
5. 脱炭素化に向けた方向性
- 廃プラスチックの焼却によるエネルギー利用を削減するためのケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルを拡大する必要がある。
- 収率の高い触媒開発により、製造時のCO2排出量を従来法の半分程度に低減する取り組みが求められている。
6. 今後の予定
- 2050年までにカーボンニュートラルの実現に向けて、省エネルギーや再生可能エネルギーの活用が重要になる。
- 電力消費を削減し、持続可能な環境を構築するための施策を推進する。
資料の目的・背景
本資料は、2050年におけるカーボンニュートラルの実現に向けた技術の道筋を示すものであり、パリ協定との整合性を重視している。
主要な検討内容・論点
カーボンニュートラルへの技術の道筋
- 目的:2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、各種政策や国際的シナリオ等を参照し策定されている。
- 手段:
- 省エネ・効率化
- 燃料転換
- CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)などの革新的技術の導入
CO2削減イメージの試算概要
- 試算の根拠:
- 技術による排出削減経路の試算を基にしたイメージを示している。
- 2040年度のエネルギー需要の見通し等を踏まえた想定が使用されている。
パリ協定整合性の確認
- 削減イメージは、トランジション・ファイナンス推進のためのロードマップ策定検討会によって日本の地域・産業特性を考慮し、整合性が確認されている。
※化学産業における削減イメージは、各企業の長期戦略の元で実施される。
※省エネ・効率化・燃料転換が基本方針である。
※2030年・2040年・2050年における評価指標が設定されている。
課題・リスク
- 技術開発は長期にわたり、不確実性が存在するため、他の低炭素・脱炭素技術の開発・導入が期待される。
- 脱炭素電源、水素供給、CCUSなど、他分野との連携が重要である。
今後の展開
- 技術開発の進捗や各社・政策の動向を考慮し、技術ロードマップの定期的・継続的見直しを行う。
- 各企業は、経営判断に基づき本技術ロードマップに掲げた技術を最適に組み合わせてカーボンニュートラルの実現を目指す。
- 排出削減の努力は、カーボンクレジットの活用やカーボンオフセット商品の購入なども含まれる。
経済産業分野における委員名簿
- 座長:秋元 圭吾
- 委員:
- 押田 俊輔
- 梶原 敦子
- 関根 泰
- 高村 ゆかり
- 竹ケ原 啓介
- 松橋 隆治
- 専門委員: