カーボンフットプリント(CFP)に関する研究会資料の説明
資料の目的・背景
本資料は、経済産業省による「GX実現に向けたカーボンフットプリント活用に関する研究会」の第1回会合を基にしており、カーボンフットプリント(CFP)の重要性とその活用方法に焦点を当てている。
国際競争におけるCFPの潮流
CFPの重要性
- 環境政策と経済政策の融合が進行中であり、CFPは国際競争において重要な役割を果たすことが期待されている。
環境政策の変遷(EUの例)
以下の表は、従来の環境政策と近年の政策の変化を示している。
| 従来の環境政策 | 近年の融合政策 |
|---|
| 環境汚染物質やGHG廃棄物等の規制 | 産業育成保護投資促進の観点が強い政策 |
| 例: 環境影響評価EIA指令 | 例: 欧州グリーンディール |
| 例: 欧州排出取引制度EU-ETS | 例: EUタクソノミー |
CFPとは何か
定義
- CFP (Carbon Footprint of Products) は、製品やサービスのライフサイクル全体における温室効果ガスの排出量をCO2換算した指標である。
ライフサイクルのプロセス
自動車のライフサイクルにおけるCFPの計算は次の5つのプロセスを含む:
- 原材料調達
- 生産
- 流通
- 使用
- 廃棄・リサイクル
CFPの算定方法
CDFの算定方法は以下の段階で構成される。
算定手順
- 算定方針の検討: 目的や要件を明確にし、参照する算定ルールを定める。
- 算定範囲の設定: 製品のライフサイクルプロセスを明確にする。
- 排出量の算定: 各プロセスのGHG排出量を計算し合算する。
- 検証・報告: CFPが適切に算出されているか確認し、その結果を取りまとめる。
影響要因
- 同じ製品でも算定方法次第でCFPの数値に大きな差が出る可能性がある。考慮すべきポイントとして以下が挙げられる:
- リサイクル
- 副生成物
- データの種類(1次データ・2次データ)
- カットオフ
- アロケーション
産業競争力に与える影響
CFP政策のオプションとして以下の3タイプが考えられる。
- 新たな価値基準の活用: 製品の減量化や長寿命化等の評価を行う。
- CFP算定に影響を与えるルール設定: 算定範囲や排出削減オプションの定義。
- 算定・報告の実効性: 工数やコスト、データ提供に関する支援。
日本製の2次データベース「IDEA」
- 日本のデータを4,000項目以上掲載し、CFP算定の基盤となっている。
| データベース名 | データ数 |
|---|
| IDEA | 4,000 |
| ecoinvent | 18,000 |
| GaBi | 17,000 |
CFPの重要性
1. GX製品の競争力との関係
- 企業がGX製品を市場で選ばれるための指標としてCFPが重要な役割を果たす。
2. GHG管理の解像度の高まり
産業政策としてのCFPの活用の拡大と戦略的アプローチ
構造と目的
- CFPの活用拡大が産業政策として位置づけられており、各国の政府は自国の産業競争力を高めるためにCFPに関連する制度を戦略的に検討している。
主要制度の概要
自国企業の後押しや海外企業に対する負担の増加を目指す制度を以下に示す:
| 主要制度 | 制度概要 | 対象製品 | 自国企業の後押し | 海外企業の負担増 |
|---|
| 自国に優位な調達基準設定 | 補助金、課金、算定・開示義務 | - | - | 要請されることが多い |
製品流通・開示に関する制度例
- EU-CBAM (カーボンボーダータリフ): EUへの輸入品に課金される。
- 英国CBAM: 2027年1月から導入予定。
- 豪CBAM: 導入の有無は未定。
- 台湾CBAM: 制度導入を検討中。
- EUバッテリー規則: 2028年以降、CFP基準値を下回らない製品のみ流通可。
- EUエコデザイン規則 (ESPR): 各種製品にCFPや環境フットプリントの情報開示を義務化。
- 仏EV補助金: CFPが一定基準値を下回る車種にのみ補助金を提供。
重要な数値・スケジュール
結論
これらの制度は、CFPを用いて環境政策と産業政策の双方に貢献することを目指す。
サプライヤー評価の取組について
サプライヤー評価の重要性
- サプライヤーを評価する取組が広がっており、特にEcoVadisによるサステナビリティ評価サービスが注目されている。
EcoVadisの概要
- ツール概要: サプライチェーンデューデリジェンス規制やESG開示要請に対応するための、サプライヤーのESG施策評価サービスを提供するフランスの企業であり、顧客企業数は15万社以上。
サプライヤー評価のプロセス
評価は以下のプロセスで行われる。
- 登録
- アンケート回答
- 証拠提出
- 分析とスコアリング
- スコアカード発行
評価項目
評価項目は以下の4つのカテゴリに分類される。
| 環境 | 労働と人権 | 倫理 | 持続可能な調達 |
|---|
| オペレーション | 人材 | 人権 | サプライヤーの環境配慮 |
| | | サプライヤーの社会的行動 |
消費者動向と企業の取組
サステナビリティへの感度
- エシカル消費市場規模は2023年で4,502億ドル、2030年には7,293億ドルに成長する見通し。
消費者が支払うプレミアム
- 環境性能が高い製品に対してプレミアムを支払う意向のある消費者は以下の通りである:
- 自動車: 25%
- 洗剤: 30%強
- アパレル: 45%
企業事例
- Unilever: 30年末までのCFP半減を目指しており、69%早い成長を実現。
- Patagonia: "Don't Buy This Jacket" キャンペーンを展開し、売上高を30%向上。
国際競争とCFPのルール動向
国際ルールの体系
- ISO規格等ではCFPの算定やコミュニケーションに関するルールが定められている。
| 分類 | コード | 内容 |
|---|
| LCA | ISO14040/44 2006 | 環境マネジメント-ライフサイクルアセスメント |
| LCA | ISO14067 2018 | 製品のカーボンフットプリントの定量化 |
| LCA | ISO20915 2018 | 鉄鋼製品のライフサイクル環境負荷計算方法 |
現在の検討状況
- 現在、GHG ProtocolとISOでマスバランス方式の適用を中心とした改訂議論が進行中である。
民間主導のルール形成
- 気候変動に関連する民間主導のルール形成が重要であり、以下のようなイニシアティブが存在する。
| イニシアティブ名 | 設立主体 | 取組内容 |
|---|
| GHG Protocol | WRI, WBCSD | 企業のGHG排出量算定報告ルール策定 |
| SBTi | WWF, WRI, CDP, UNGC | 科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標設定 |
| CDP | | 環境への影響を報告し管理するためのシステム提供 |
公的ルールの整備
- 各国・地域における公的ルールも重要であり、特にISO14067がCFP算定のための要求事項を規定している。
証書の利用状況
- 各国で証書の利用が進んでおり、以下のようなカテゴリに分類される。
| カテゴリ | 地域 | 代表的な証書 | 主な論点 |
|---|
| 電力 | 欧州 | GO | |
| 電力 | 日本 | 再エネJ-クレジット | |
| 熱ガス | 欧州 | GO | |
| 熱ガス | 日本 | グリーン熱証書 | |
証書の利用による影響
- 生産国または製造者の再エネ設備導入状況を評価し、製造地域の電源ミックスに依存しないマーケットベースでのCFPの低減が可能となる。
同一製品ながら異なるCFPの数値が存在する場合
概要
企業内部では、同一製品でも異なるCFPの数値が算定される事例がある。これは異なる算定ルールに基づく要求があるためであり、複数の算定方法が存在する現状では異なるCFPが報告されることが必然的である。
企業の運用実態
企業は取引先ごとに異なるCFP算定方法を要求されることがあり、これにより同一製品に対して異なるCFPの数値を報告することがある。
素材メーカーの例
| CFP報告先 | 異なるCFPの数値 |
|---|
| 取引先A社 | kgCO2/t |
| 取引先B社 | ▲▲kgCO2/t |
| 取引先C社 | ■kgCO2/t |
不適切なCFP活用を防ぐための留意事項
- 報告先や制度によるCFP算定ルールに準拠する必要がある。
- 情報の受け手がCFP算定の条件を理解していることが重要である。
- 異なる制度・算定ルールに基づくCFPの値同士は比較すべきではない。
日本のCFPの活用の現状と課題
脱炭素に向けたCFPの活用
- 脱炭素を目的としたCFPの活用は進んでいるが、国際競争力強化のための戦略は十分に描けていない。
政策の現状と課題
| 政策 | 現状 | 課題 |
|---|
| 1. 政府調達 | 一部製品は政府調達でCFPの開示の有無が評価されている | 製品単位排出量に着目した政策が限られており、CFP活用が不十分である。 |
| 2. 民間企業によるCFP活用 | 規制対応に留まり、特に大手企業以外のCFP算定ノウハウ不足が課題である | 規制対応や取引先の要請に対する受動的な対応に終始し、企業間評価指標としての活用が難しい。 |
| 3. CFP応用指標の活用 | 日本企業による環境貢献の訴求手段として利用例が存在 | 社会貢献としての訴求は中心で、製品の競争力にはつながっておらず、他社との比較が困難である。 |
政府調達におけるCFPの活用
グリーン購入法
- グリーン購入法では特定の製品に対してCFPの開示が基準値として採用されている。
- 対象品目には以下が含まれる:
| 分野または品目 | 対象 |
|---|
| 文具類 | ○ |
| オフィス家具等 | ○ |
| コピー機 | ○ |
| タイルカーペット | ○ |
| その他の環境負荷の低減に貢献する製品 | 削減実績量が付された鉄鋼を使用した製品 |
各産業でのCFP活用状況
| 業界名 | CFP活用の目的 | 日本企業の取組状況 |
|---|
| 鉄鋼 | EU-CBAM、海外政府調達への対応 | 多くの鉄鋼企業がCFPに対応しており、要求が増加している。 |
| 化学 | エコデザイン規則への対応 | 大手企業は進めているが全体的進捗は遅れている。 |
| 窯業セメント | 対応必要な規制制度 | 自社固有のCFPを提供する企業が増加している。 |
| 製紙 | 規制対応 | 多くの取引先からCFPを要請される状況が続いている。 |
| 自動車 | EUバッテリー規則への対応 | プロダイバー満載の要請が増加している。 |
課題
- サプライチェーンにおけるデータ入手が難しく、特に中小企業によるCFP算定ノウハウの不足が顕著である。
CFPの応用指標の活用
- 削減貢献量や削減実績量の活用が進んでいるが、日本に限られ、国際的な競争力強化には繋がっていない。
- 削減貢献量は、自社の環境貢献を定量化する手段として企業の社会的評価を高める可能性がある。但し、実際には競争力とは直結しない課題が存在する。
以上が、CFPに関する現在の状況と課題の要約である。進展が期待される分野であり、今後の取り組みが注目される。