トランジションファイナンスに関する自動車分野の技術ロードマップ
概要
本資料は、経済産業省が策定した「トランジションファイナンス」に関する自動車分野の技術ロードマップの改訂案である。2023年3月に策定され、2025年10月に更新される予定である。
目次
| 章 | 節 | 概要 |
|---|
| 1. 前提 | | 自動車分野のロードマップの必要性・目的 |
| 2. 自動車産業について | | 日本国内における自動車産業の位置づけ・重要性・カーボンニュートラル化の方向性 |
| 3. カーボンニュートラルへの技術の道筋 | ①低炭素脱炭素技術 ②技術ロードマップ ③パリ協定との整合 | カーボンニュートラル実現のための短中長期の技術オプション |
| 4. 脱炭素化及びパリ協定の実現に向けて | | 他分野との連携・今後の展開 |
1. 自動車分野のロードマップの必要性
- 自動車分野はCO2を多く排出する産業であり、排出ゼロのための技術的・経済的な代替手段が現状では不十分である。
- 日本の自動車産業は約10%の雇用と約20%の輸出を支える基幹産業であり、国際競争力を維持しながら脱炭素化への移行が求められている。
- 自動車部門は日本全体のCO2排出量の**17%**を占めており、移行には多額の資金調達が必要である。
- 技術開発は2050年に向けたクリーンなエネルギー供給体制の構築や新たな市場の創出に寄与する。
2. 自動車産業の重要性
経済と雇用
自動車産業は日本経済の基盤を支えており、以下のように位置づけられている。
| 指標 | 数値 | 割合 |
|---|
| 出荷 | 約72兆円 | 製造業の約2割 |
| 雇用 | 約559万人 | 全産業の約1割 |
| 設備投資 | 約1.6兆円 | 製造業の約3割 |
| 研究開発 | 約4.3兆円 | 製造業の約3割 |
2023年のデータに基づく(出典:自工会)。
環境への影響
日本の運輸部門におけるCO2排出量の**19.2%**は自動車によるものであり、特に早急な脱炭素化が求められている。
3. カーボンニュートラルへの技術の道筋
技術の選択肢
- 電動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)など、多様な選択肢を追求する必要がある。
- 各国での電動化目標に向けた取り組みが進行中である。
| 国・地域 | 市場規模 (2024年) | 電動化目標 |
|---|
| 英国 | 232万台 | 2035年EV100% |
| EU | 1,285万台 | 2035年以降CO2排出100%減 |
| 日本 | 442万台 | 2035年EV100% |
| 中国 | 3,144万台 | 2035年新エネ車50%以上 |
4. 今後の展開と方針
- 2050年に向け、カーボンニュートラル達成を目指すための技術開発、インフラ整備、政策支援が求められる。
- 官民一体となった資金調達や投資が重要であり、自動車分野の脱炭素化戦略を金融機関や投資家に理解させ、トランジション・ファイナンスの利用促進につなげる。
重要な目標と具体的取り組み
2050年カーボンニュートラル化への基本的考え方
自動車関連産業は、2050年までにカーボンニュートラル化を目指し、以下の方針に基づき電動化や蓄電池産業の競争力を強化する。
-
幅広い政策の総動員
- 自動車産業に限らず、エネルギー供給や生活・仕事、モビリティ、地域づくりに関わる方策を採用する。
-
国際競争力の向上
- 特定技術に限定せず、最適なパワートレインや燃料を組み合わせる。
-
総合的な技術力の維持
-
中小企業の支援
- 中小企業の電動化や業態転換への取り組みを促進する。
電動化の目標
- 2035年までに乗用車の新車販売を100%電動車にする。
- 商用車は、以下の目標を設定する。
- 8t以下の小型車: 2030年までに新車販売の**20〜30%を電動車、2040年までに100%**を脱炭素燃料に適した車両にする。
- 8t超の大型車: 2020年代に5,000台の先行導入を行い、2030年までに目標を設定する。
インフラ整備の目標
- 充電インフラ30万口の整備を目指し、その中に公共用の急速充電器3万口を含める。
- 2020年代後半までに水素ステーション事業の自立化を進める。
燃料のカーボンニュートラル化
- 合成燃料の商用化を2030年代前半に目指す。
- ガソリンに関して、2030年度までに**バイオエタノール最大濃度10%の低炭素ガソリン供給を開始し、2040年度には最大濃度20%**へと拡大する。
蓄電池の目標
- 蓄電池の製造能力を150GWh/年にするため、国内の製造基盤を早急に確立する。
充電インフラの整備に関する取り組み
- 電気自動車の普及と充電インフラ整備は相互に進める必要がある。
- 現在、約6.8万口の充電器が整備されている。
- 急速充電器:約1.2万口
- 普通充電器:約5.6万口
- 2030年30万口の目標に向けて整備を加速中である。
重要鉱物のサプライチェーンリスク
- 蓄電池の原料であるリチウム、コバルト、ニッケルは特定国への依存度が高い。
- 特に中国における輸出管理が強化されているため、供給源の多角化が重要視される。
| 鉱物 | 採掘国 | 製錬国 | 輸入国 |
|---|
| リチウム | オーストラリア、チリ、中国 | 中国 | 日本 |
| コバルト | コンゴ民主共和国、ロシア | 中国 | 日本 |
| ニッケル | インドネシア、フィリピン | 中国 | 日本 |
脱炭素化に向けた助成と投資
- 経済安全保障推進法に基づく供給確保計画で認定された件数は蓄電池6件、部素材23件、合計35件となり、事業総額は約1兆7,797億円である。
燃料電池車(FCV)の特性と今後の方向性
- FCVは航続距離が長く、充填時間が短い特性を持ち、特に商用車での活用が期待されている。
- 現在、FC乗用車は8,857台、水素ステーションは161箇所の整備が行われている。
まとめ
本ロードマップは、経済産業省の指針に基づき、自動車産業におけるカーボンニュートラル実現に向けた戦略と方向性を示している。持続可能な自動車産業の発展と国家の経済安全保障の確保が求められる。