海外の電力・ガス規制機関調査報告について
本報告書は、三菱総合研究所が実施した海外の電力・ガス規制機関に関する調査を基に、日本との比較検証を行うものである。報告書は2024年5月17日にまとめられ、以下の主要な内容を含む。
調査・比較検証の目的
本調査の目的は、電力・ガス取引監視等委員会(EGC)と海外の規制機関を比較し、次の点を明らかにすることである。
- 海外の規制機関からの参考事例の抽出
- 日本への示唆を得ること
- 今後の電取委の組織方針を策定するための評価
主要調査項目
- 中期方針の策定(2024~2026年)
- 電取委の組織状況変化の整理
- 電取委の活動実績の整理
- 海外規制機関との比較検証
海外の規制機関と日本の比較
調査では、以下の海外の規制機関との比較が行われた。
| 日本 | 米国連邦 | 米国ペンシルベニア州 | 英国 | フランス | スウェーデン |
|---|
| 規制機関 | 電力ガス取引監視等委員会 (EGC) | 連邦エネルギー規制委員会 (FERC) | ペンシルベニア州公益事業委員会 (PA PUC) | ガス電力市場委員会 (GEMA)、ガス電力市場局 (Ofgem) | エネルギー規制委員会 (CRE) | エネルギー市場監督局 (EI) |
| 設立年 | 2015年 | 1977年 | 1937年 | 2000年 | 2000年 | 2005年 |
| 規制対象 | 電力、ガス | 電力、水力発電、天然ガス、石油 | 電力、天然ガス、通信等 | 電力、ガス等 | 電力、天然ガス | 電力、天然ガス |
| 備考 | 小売市場は監視対象外 | 卸市場は監視対象外 | | | | |
職員数と専門性の比較
職員数
海外の規制機関の職員数は日本のEGCと比較して多い。市場監視を担う部署の職員数は以下の通りである。
| 職員数 | 日本EGC | 米国連邦FERC | ペンシルベニア州PAPUC | 英国Ofgem | フランスCRE | スウェーデンEI |
|---|
| 市場監視を担う部署の職員数 | 64名 | 388名 | 45名 | 560名 | 97名 | 105名 |
専門職
海外の規制機関では、以下の専門職が採用されている。
- エコノミスト
- エネルギーアナリスト
- エンジニア
- データアナリスト
- ITスペシャリスト
専門人材の採用方法
各国における専門人材の採用状況は次の通りである。
| 国 | 専門人材の採用状況 |
|---|
| 米国 (FERC) | 給与水準は高くないが、様々な福利厚生が整備されている。 |
| 英国 (Ofgem) | サイバーセキュリティ専門等の高い競争率の職は給与を20%高く設定している。 |
| フランス (CRE) | 福利厚生が充実している。 |
| スウェーデン (EI) | 福利厚生面での優位性が人材を引き寄せる。 |
予算の比較
予算規模
規制機関の予算について、日本と海外の比較を行った。
| 日本EGC (2024年度) | 米国連邦FERC (2025年度) | ペンシルベニア州PAPUC (2022年度) | 英国Ofgem (2022年度) | フランスCRE (2023年度) | スウェーデンEI (2023年度) |
|---|
| 年間予算額 | | 5億6,540万ドル (800億円相当) | 8,527万ドル (120億円相当) | 1億4,000万ポンド (250億円相当) | 2,260万ユーロ (35億円相当) | 223百万クローネ (31億円相当) |
予算増加の要因
- 米国FERC: 人件費の増加とAIの導入による業務効率化投資
- 英国Ofgem: ガス危機対応やサイバーセキュリティ対策のための費用増加
英国の規制機関の役割拡大
Energy Act 2023の概要
英国Ofgemは、2023年10月に制定されたEnergy Act 2023に基づき新しい義務が課され、以下のような役割が与えられた。
| 新しい義務 | 概要 |
|---|
| FSOの設立 | 既存の電力系統運用者とガス系統計画者を統合し、新たにFSOを設立する。 |
| CO2輸送・貯留の規制 | OfgemがCO2輸送・貯留の経済規制機関としての役割を果たす。 |
| 熱ネットワークの規制 | 熱ネットワーク事業者の監視を行う。 |
| エネルギー規約のガバナンス | 規約マネージャーの新設により消費者の利益に基づく規約の更新を推進。 |
予算に関する規制機関の独立性
規制機関は被規制事業者からのライセンス料を用いて予算を賄い、政府からの独立性を保持している。以下は予算確保の方法の比較である。
| 国名/機関 | 予算確保方法 |
|---|
| 米国連邦 (FERC) | 年金費と申請料を通じて完全回収。 |
| ペンシルベニア州 (PUC) | 州からの資金と公営事業者からの収入基に運営コストを回収。 |
| 英国 (Ofgem) | ライセンス料で運営コストを回収。 |
| フランス (CRE) | 国家予算と規制事業者の手数料により運営コストを回収。 |
| スウェーデン (EI) | 国家予算と規制事業者からの資金で運営コストを回収。 |
規制機関の権能
権限の比較
各規制機関の権限については以下の通りである。
| 権能 | 日本 (EGC) | 米国連邦 (FERC) | ペンシルベニア州 (PAPUC) | 英国 (Ofgem) | フランス (CRE) | スウェーデン (EI) |
|---|
| 規制制定 | あり | あり | あり | あり | あり | あり |
| 事業許可 | あり | あり | あり | あり | あり | あり |
| 罰則適用権限 | なし | あり | あり | あり | あり | なし |
罰則適用・報告権限
- 海外規制機関の多くは報告徴収権限と罰則適用権限を有しており、日本でも権限変更や強化の必要性を検討する必要がある。
規制機関の広報活動
各国の規制機関は、市民参加を促進する広報活動を展開している。
- 米国FERC: 公衆参加局を設け、市民への情報提供を行う。
- 英国Ofgem: SNSやウェブサイトを通じて情報を発信し、消費者向けのアドバイスも提供する。
- フランスCRE: SNSやYouTubeを利用してエネルギーの説明動画を敷設し、消費者教育に努める。
まとめと示唆
人員に関する示唆
- 海外と比較して少ない職員数を市場監視に充てている日本において、職員の増員が必要である。
- 複数の専門職をインクルードした採用が求められる。
予算に関する示唆
- 予算増加に対応する柔軟な施策が必要とされる。
- 自立的な予算確保方法の検討が求められる。
権能に関する示唆
- 現在の権限についての見直しや改善が議論されるべきである。
デジタルツールの推進
- デジタルツールを活用して市場監視の高度化を進める必要がある。
広報活動の強化
- 市民理解を深めるための広報機能の強化が期待される。
本報告書は、海外の事例を通じて今後の日本における電取委の方針策定に重要な示唆を提供するものである。