トランジションファイナンスに関する鉄鋼分野の技術ロードマップ更新案
資料の目的・背景
本資料は、経済産業省が策定した「トランジションファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップの更新案である。このロードマップは、2021年10月に初版が策定され、2026年2月に更新される予定である。
技術ロードマップの構成
本技術ロードマップは以下の4つの章で構成されている。
| 章 | 節 | 概要 |
|---|
| 1. 前提 | | 技術ロードマップの必要性と目的・位置づけ |
| 2. 鉄鋼業について | | 鉄鋼業の生産規模、将来動向、CO2排出量、特徴 |
| 3. カーボンニュートラルへの技術の道筋 | ①・②・③ | 低炭素・脱炭素技術、技術ロードマップの内容、パリ協定との整合性 |
| 4. 脱炭素化及びパリ協定への対応 | | 他分野との連携と今後の展開 |
鉄鋼分野の技術ロードマップの必要性
- 鉄鋼業はCO2の多排出産業であり、カーボンニュートラルに向けた代替手段が現在利用可能でないため、トランジションが急務である。
- 鉄鋼の軽量化や強靭化が輸送機械、エネルギー、建築等の分野にも貢献する。
- 日本の鉄鋼業は高効率な高炉技術を有するが、依然としてCO2を多く排出しており、ネットゼロに向けた移行が必要である。
- 移行には、省エネ設備の導入や技術革新、資金調達が求められ、国内外の技術を整理して2050年に向けた道筋を描くことが重要である。
本技術ロードマップは、2050年のカーボンニュートラル達成を最終的な目標としている。
鉄鋼業の現状と将来動向
産業規模
- 日本の鉄鋼業は、**GDPの10.7%**を占め(約14兆円)、年間最大1千万トン以上の鉄鋼を生産する。
- 世界の粗鋼生産量の中で、日本は約1億トンを生産し、全体の約4%を占めている。
CO2排出の現状
- 2023年度、日本のCO2排出の34%が産業部門からで、その39%を鉄鋼業が占める。
- 鉄鋼業におけるCO2排出量の削減が喫緊の課題である。
カーボンニュートラルに向けた取り組み
- IEAは2050年にはグリーンスチールの市場規模が約5億トンになると予測している。
- 日本の鉄鋼業では、複数の企業が2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、水素還元製鉄や革新的な電炉の開発に取り組んでいる。
研究開発・技術革新の進行状況
- 鉄鋼業における水素還元技術の研究開発が進められ、プロジェクトが順調に進行している。
- 特に、高炉を用いた水素還元技術や直接水素還元技術の開発が行われている。
今後の展望
- 採用される技術や方針によって、国際競争力を高め、脱炭素化を進めることが目指されている。
鉄鋼業についての重要な取り組み
1. 海外鉄鋼メーカーによる技術開発動向
- 欧州、中国、韓国の大手鉄鋼メーカーは2050年までのカーボンニュートラルを目指し、研究開発や実証を進めている。
- 2030年までに高炉製鉄からのCO2排出を30%削減することを目標としている。
欧州の技術開発
- 高炉利用に加え、直接還元炉や電炉の開発に取り組んでいる。
- 具体的には以下の技術開発が進められている:
- 水素投入
- 排ガスから回収した炭素を還元剤として再利用するCCU
- CO2貯留による低炭素技術の開発
中国の技術開発
- 「酸素高炉」技術の開発を進め、熱風の代わりに純酸素を吹き込むことで石炭使用量の削減を目指している。
韓国の技術開発
- 排ガスの有効活用やAI技術を活用し、高炉操業の効率化・省エネを目指している。
- CO2排出量を2030年までに20%、2040年までに50%削減、2050年にはカーボンニュートラルを実現することを目標としている。
これらの削減幅は基準年度や現状の効率により異なるため、単純に数値で比較することに留意する必要がある。
2. GX価値の見える化の必要性
- GX投資による生産された鉄は初期段階ではコストが高くなると考えられるが、機能面では変化がない。
- 環境価値を需要家に訴求しない限り、市場での受け入れが難しく、GX投資の進展が懸念される。
- 需要家のニーズに基づいたGX価値の見える化や、購入支援のインセンティブが重要である。
3. GX推進のためのアクションプラン
- GX価値の訴求と国際標準への反映を図り、国内外での理解促進や国際的な製品評価手法の議論を進める必要がある。
- 鋼材のCFP活用拡大を進め、需要家におけるCFPの活用促進やデータの整備・開示が求められる。
- 需要側への支援や政府によるGX製品の優先購買支援が求められる。
- 供給側へは複線的な技術開発や設備投資の支援、鉄スクラップの有効活用を促進する必要がある。
4. 今後の予定に関するスケジュール
| 年 | アクション |
|---|
| 2025 | 官民でのGX推進アクション |
| 2026 | 技術開発の初期段階支援 |
| 2027 | サステイナブル・ファイナンス制度の導入 |
| 2028 | 市場拡大に向けたインセンティブ |
| 2029 | 需給の調整と促進策の実行 |
| 2030 | 中長期の株式会社戦略と実行 |
5. 2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み
- 鉄鋼業は引き続きインフラ分野や自動車向けの必須素材であり、電炉や水素還元製鉄技術の進展、大型革新電炉の導入による低炭素化を計画している。
- カーボンニュートラル実現のためには、安定した水素と電力の供給が不可欠である。
以上が、鉄鋼業に関する審議会資料の主な内容であり、これらの取り組みは持続可能な製造プロセスを確立し、カーボンニュートラル社会の実現に向けた重要なステップである。