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補完オークション案と休廃止予定火力――維持・再稼働を判断する前に何を見るか

補完オークションは、メイン・追加オークションで確保しきれない供給力を、休廃止予定の高経年火力などから補う構想だ。2026年9月の資料は調達基準や参加要件を検討する段階で、落札や稼働を保証していない。火力事業者は、設備を維持できる費用、立ち上げに要する期間、追加オークションとの関係を別々に試算する必要がある。1
2 件参照

この記事でわかること

  • 補完オークションは既存の容量市場・kW公募とどう関係するか
  • 休廃止予定火力の適格性と維持費を、どの条件で見積もるか
  • 調達基準や立ち上げ判断の未決部分をどう監視するか

追加オークションを置き換える仕組みではない

広域機関の2026年9月資料は、2030年度実需給までを念頭に、実需給1~3年前の供給力を確保する補完オークションを整理した。対象は、供給計画上は休廃止予定で需給見通しへ供給力として計上されない高経年電源を想定する。コストベースのマルチプライス調達を基本とし、複数年契約も可能にする方向だ。通常のメイン・追加オークションを補う位置付けであり、対象電源の新設を支える一般的な投資制度とは異なる。1

2027年度向け追加オークションでは、応札電源が全て落札されても全国の供給信頼度は目標未達となり、北海道に追加可能な電源がなかった。これは追加の供給力確保策を考える背景になるが、今回の不足評価だけで補完オークションの募集量や落札電源が決まったわけではない。発電事業者は既存の追加オークション結果と、将来の補完オークション案を別の案件として扱う。21

特別オークション、予備電源、電源入札とも位置付けが違う。資料は、従来なら特別オークションで扱い得た一部の確保策を補完オークションとして明確化する考えを示す一方、大規模災害リスク分まで一括で募集するかや費用負担は国と検討を続ける。制度名が似ていても、稼働の蓋然性、募集時期、リクワイアメントを混同しない。1

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「3%確保・5%を目指す」は募集量そのものではない

従来のkW公募は、実需給1年前の厳気象H1予備率3%を一つの基準としてきた。補完オークションは最長3年前の募集を想定するため、需要や市場退出の変化をどこまで織り込むかが論点になる。資料は3%を確保し5%を目指す方針を基本としつつ、過去の市場退出最大値533万kWから追加オークションで期待できる過年度最大応札量47万kWを差し引いた486万kWを追加リスク量として扱う案を示した。これは2029年度の9エリア合計H1需要の約3%に相当する。1

そのため、6%水準まで確保を目指す案が資料に現れるが、正式な調達基準は未決定だ。需要想定の変動を別に織り込むか、発動指令電源の退出分が他の仕組みで補われるかも確かめる必要がある。火力事業者が「6%分の募集枠が必ずできる」と仮定し、設備維持費を将来の落札収入で全額回収する計画は、この資料からは導けない。1

2~3年前の募集は設備の状態と供給計画が鍵になる

資料は、2~3年前の募集対象を、原則として安定電源に区分される送電端10万kW以上の火力で、募集対象期間以降の供給計画に供給力として計上されていない電源とする案を示す。設備単位で募集し、部分入札を想定しない。環境方針等によって運転しない予定の電源も対象となり得る一方、対象判定や計画へ再計上する時期は検討課題だ。自社の発電所が規模を満たしても、自動的に参加資格を得るわけではない。1

設備を確保してすぐ実需給で常時発電する構想でもない。2~3年前に確保した設備は、一定期間内に立ち上げられる状態を維持し、必要な時期に1年前募集分と同等以上の稼働ができる方向で整理される。補修のリードタイム、部品調達、人員確保、燃料や環境設備の状態が、単に「設備を残す」判断を左右する。固定維持費と立ち上げ費を分けて見積もり、どの段階で発生するかを示す。1

立ち上げ判断は追加オークション後が原則案

補完オークションで早く設備を確保しても、実際に立ち上げるかは原則として追加オークション後の需給評価まで引き付ける考えが示された。追加オークション前に立ち上げ未決定の設備を供給力に数えない整理である。ただし大規模補修の都合で先行判断が必要となる例外も想定される。維持費がかかる期間と、再稼働費を投じる判断点が分かれる。1

発電事業者の収支モデルでは、最低限の維持シナリオ、追加オークション後に立ち上げるシナリオ、補修の都合で先行投資するシナリオを分ける。費用は合理的なリクワイアメント対応を基礎にする方向だが、実際の認定費用、収益還元、精算、契約解除条件は確定文書で確認する必要がある。本文の案を確約された収入として投資委員会へ提示しない。1

休廃止を検討する発電所では、補完オークションを参加可能な収入として先に置くと判断が逆転しかねない。年度ごとの保守費、再稼働に要する期間、燃料・人員の確保、既存の容量契約や相対販売の義務を先に示す。その上で、募集の有無、対象電源、必要な供給力、応札価格の規律が正式に決まった場合だけを条件付きケースとして追加する。実需給の2~3年前に募集する案であっても、修繕や廃止届の期限が先に来る設備はある。制度決定を待てる期限と、待つ間の維持費を同じ工程表へ載せれば、期待収入だけで設備を残す判断を避けられる。追加オークションとの役割も分けて管理する。

判断項目確認条件判断への示唆
対象電源休廃止予定、供給計画への未計上、10万kW以上等の正式要件規模だけで参加可能と決めない
維持費補修・人員・部品・環境対策、立ち上げリードタイム維持と再稼働の費用を分ける
調達基準H1予備率、市場退出リスク、正式募集量6%案を確定募集量にしない
立ち上げ追加オークション後の需給評価と例外投資時期と供給力計上時期を分ける
Key Points·立場別に見る実務ポイント

火力発電事業者の設備計画担当者

  • 設備の残存条件を確認する。 供給計画の記載、送電端容量、補修・部品の状態を設備ごとに整理する。
  • 維持と稼働を別決裁にする。 確保期間中の最低限の費用と、立ち上げ時の追加支出・期間を分ける。
  • 制度案を確定収入へ入れない。 正式な募集要綱と価格・精算条件が示されるまで複数シナリオで判断する。

まず行うこと

  1. 休廃止予定電源の供給計画と設備状態を一覧化する。
  2. 維持費・補修費・立ち上げリードタイムを分けて見積もる。
  3. 募集要件が決まった時点で適格性を再判定する。

監視する指標

  • 補完オークションの正式要件。 対象電源と契約期間を見る。
  • H1予備率と追加リスク量。 調達基準の採否を追う。
  • 追加オークションの結果。 立ち上げ判断との順序を確認する。
  • 費用回収・収益還元ルール。 実際の採算条件を更新する。1

参考文献

  1. 1.
    補完オークションについて
    電力広域的運営推進委員会2026/09/29PDF

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