需給調整市場における揚水発電応札の課題と対応
資料の目的・背景
本資料は、2024年度から全面的に実施される需給調整市場において、揚水発電の応札拡大に向けた課題とその対応方向を検討することを目的としている。また、従来の揚水運用からの変化に伴う課題の深掘りも行っている。
目次
- 背景
- 過去(〜2023年度)の揚水運用の概要
- 2024年度からの揚水運用の概要
- 需給調整市場で顕在化している課題
- 応札拡大にむけた課題と対応
- 課題の深掘り(問題構造の分析)
- 考えられる対応の方向性
- 揚水予備率計上がBG行動に与える影響(補論)
- まとめ
背景
過去(〜2023年度)の揚水運用の概要
- 調整力公募に基づき、主に一般送配電事業者が揚水運用を行っていた。
- 揚水の運用は、以下の指令権に基づいていた。
2024年度からの揚水運用の概要
- 沖縄エリアを除いて調整力公募が終了し、揚水の運用主体が調整力提供者に変更される。
- 市場取引が開始され、調整力の調達が需給調整市場に依存するようになる。
需給調整市場で顕在化している課題
- 応札不足が継続しており、特に揚水に関しては応札が期待されているが進展がない。
- ヒアリング結果から以下の課題が把握されている。
| ヒアリング項目 | ヒアリング結果概要 |
|---|
| 応札準備状況 | 必要なシステム整備が進んでおり、初回取引には間に合う見込み |
| 一次及び二次商品の並列要件 | 揚水発電所が要求要件を満たせず応札できない見込み |
| 機会費用収入の低さ | 余力活用契約との比較で市場拠出が経済合理的ではないと認識 |
| 起動回数制限の影響 | 取引規程により追加起動を行わない傾向 |
| 電源Iは全量供出しない可能性 | 卸販売契約による制約 |
応札拡大にむけた課題と対応
課題の深掘り(問題構造の分析)
- 応札準備状況、商品の並列要件、経済合理性等が揚水の応札に影響を与えている。
考えられる対応の方向性
- 調整力提供者と一般送配電事業者との役割分担を明確化し、透明性を保つことで応札の促進を図る必要がある。
- 現行の需給調整市場の運用規則に従い、必要な調整力を市場による競争を通じて確保する体制を築くべきである。
重要な数値・データ
- 2024年度以降の調整力市場においては、従来の運用からシフトし、競争を通じた調達が求められる。
まとめ
- 2024年度からの揚水運用においては、調整力の調達が透明性のもとで行われることが重要であり、それに基づく応札環境の整備が今後の課題となる。
- 昨今のヒアリング結果や応札状況の分析を通じて、より効果的な対応策の検討が必要である。
揚水の応札不足に関する課題分析
1. 揚水TSO運用の過去の状況
- 目的: 過去(〜2023年度)の揚水TSO運用を分析し、調整力(ΔkW)としての揚水の活用を把握。
- 運用方法:
- 揚水のスケジュール(発電・ポンプ)を事前に決定。
- 調整力(ΔkW)の活用は以下のように行われていた:
- GF(一次)・LFC(二次①): 揚水発電が系統並列している時間帯のみ調整力として期待。
- EDC(二次②~三次②): 短時間で並列可能なため、供給余力を調整力として期待。
2. 現在(2024年度から)の揚水BG運用と課題
- 課題の検討:
- TSOが揚水を調整力として確保する際の課題:
- 課題①: ΔkW電源は誤差対応のため、ポンプアップ原資(kWh)の確保が要件。
- 課題②: 並列必須なΔkWを確保する場合の電源態勢持ち替えが発生。
3. 課題に対する対応の方向性
課題①(ポンプアップ原資)
- ヒアリング意見: ポンプ計画策定後の余力発動の不確実性により、ΔkW応札量が減少またはゼロになる意見。
- 提案:
- 過去の使用率等を考慮し、ポンプ計画を策定する。
- 想定以上の発動時は、自社火力や市場での充当を行う。
課題②(電源態勢持替え)
- ヒアリング意見: 一次・二次①の並列必須要件により、計画不一致リスクを負うことが困難。
- 提案:
- 揚水以外の代替ΔkWを用意する。
- 系統並列(最低出力分)を確保し、上げ調整と持ち替え先を準備。
4. 課題と論点の整理
| 課題 | パターン I | パターン II | パターン III |
|---|
| 課題①: ポンプアップ原資 | 自社火力で充当 | 相対卸電力市場で充当 | 相対卸電力市場で充当 |
| 課題②: 電源態持替え | 自社火力で持替え | 発電販売計画で実施 | 発電販売計画で実施 |
5. まとめ
- 新たな取引の開始に向けて、揚水発電の応札期待が高まる一方で、課題分析を通じた具体的な対応策の検討が急務である。特に、ポンプアップ原資と電源態勢の持替えに関する対策を明確にする必要があり、国との連携を図ることが求められる。