ガスシステム改革の進捗と取組に関する報告
資料の目的・背景
この資料は、経済産業省が作成した「ガスシステム改革の進捗と委員会の取組」に関するものであり、2020年10月27日に行われた電力・ガス取引監視等委員会の報告を基にしている。
ガスシステム改革の概要
ガスシステム改革は以下の要素に基づいて進められている。
1. 日本のガス供給の仕組み
日本のガス供給は以下の3つに分けられる:
- 都市ガス: LNG基地から導管を通じて供給。2017年4月より自由化。
- 簡易ガス: 団地などの簡易なガス発生設備から供給。2017年4月より自由化。
- LPガス: ボンベなどを用いて供給しており、こちらは開始時から自由。
需要家規模(2018年度)
| ガスの種類 | 需要家件数 | ガス販売量 |
|---|
| 都市ガス | 約2,714万件 | 387億m³/年 |
| 簡易ガス | 約113万件 | 1.4億m³/年 |
| LPガス | 約2,433万件 | 65億m³/年 |
2. 都市ガスの供給区域
都市ガスの供給区域は以下の通りである:
- 都市ガスの供給可能地域は国土の**約6%であり、総世帯数の約49%**が都市ガス供給を受けている。
- 各地域の供給区域は194事業者が存在し、47.0%のガスメーター取付個数が認められている。
3. ガス事業の概要
都市ガス調達の上位者は以下の通り:
| 保有者 | 基地数 | タンク数 |
|---|
| ガス | 14 | 48 |
| 電力 | 10 | 53 |
| ガス/電力共有 | 6 | 67 |
| その他 | 7 | 28 |
| 計 | 37 | 196 |
ガス導管については198者が存在し、大手3社が導管総延長の**50%**を保有している。
4. ガスシステム改革の目的
ガスシステム改革は以下の4つの目的を持つ:
- 天然ガスの安定供給: 防災対策も含めた供給体制の強化。
- ガス料金抑制: 競争を通じた価格低下の実現。
- 利用メニュー多様化: 多様な料金メニューやサービスを用意することで選択肢を拡大。
- 新たな利用方法の拡大: 燃料電池、コージェネレーション等への新規参入促進。
ガスシステム改革の進展状況
ガス小売全面自由化の状況
以下の進展が見られる:
- 新規参入者数: 2020年10月時点で82者が新規参入。
- シェア: 新規参入者によるガス販売量は、2020年6月時点で**15%**を占めている。
- 悪影響回避: 需家保護のための最終保障サービスを設けることが求められている。
料金とサービスメニューの多様化
小売自由化を通じて事業者の料金やサービスが多様化している。
| 新たな料金メニューの類型 | 提供数 |
|---|
| セット割引 | 48 |
| ポイントサービス | 23 |
| 見える化サービス | 8 |
| 暮らしサービス | 37 |
| 電力買取サービス | 5 |
課題・今後の予定
- 戦略的に連携し、供給源の多様化や透明性を確保することで、さらなる競争が促進されることが期待される。
- 今後は、託送供給制度の見直しやサービスの多様化を推進し、需家の選択肢を更に拡大させる必要がある。
ガス分野における委員会の取組
委員会の目的
委員会は、ガスの小売全面自由化に関連する多様な取組を実施し、需要家保護や競争促進を図っている。
主要な取組内容
1. 需要家に対する情報提供・相談対応
- 自由化セミナーの開催による普及啓発
- 相談窓口の設置と相談事例やアドバイスの公表
2. 適正な取引の確保
- 小売事業者が遵守すべきルールの明確化(小売営業ガイドライン)
- 問題のある事業者に対する指導(勧告等)
3. ガス小売料金に係る対応
- 規制料金の事後評価
- 規制解除後の料金に対する特別な事後監視
4. ガス卸取引の活性化
- LNG基地の第三者利用制度の改善(ガイドラインの改正等)
- 卸供給の取引条件に関する適切な対応の要請
小売全面自由化に関する情報提供
全国の商店街やショッピングモール等で電力・ガス自由化セミナーを計30か所開催。
需要家からの相談窓口
- 委員会では、需要家向けの相談窓口を設置している。
- 電力・ガス自由化に関する相談件数は、ガスが電力の約1割程度。
相談事例とアドバイス
-
訪問勧誘に関する疑問(個人情報の取り扱い)
重要な個人情報には供給地点特定番号が含まれ、注意が必要である。
-
想定外のガス料金引き落としに関する問題
通常、複数回の引き落としはあり得ず、異常があれば契約先に確認を求めるべきである。
相談事例やアドバイスの公表
- 国民生活センターや消費者庁と連携し、相談事例とアドバイスを公表。
- トラブル速報を定期的に発行し、消費者の注意を促す。
「ガスの小売業に関する指針」の建議
- 2016年12月に制定された指針により、需要家保護のため適切な情報提供及び営業方法を規定。
指針の主要な内容
- 需要家への情報提供
- 営業・契約形態の適正化
- 契約内容の適正化
- 苦情・問い合わせへの対応
- 契約解除手続きの適正化
業務改善勧告の実績
- 委員会は過去にガス小売事業者に対し、不適正な行為に関する業務改善勧告を4件実施。
| 日付 | 対象事業者 | 概要 |
|---|
| 2020年9月9日 | 東京電力エナジーパートナー株 | 不十分な説明や虚偽の説明を行い法に規定する義務を果たさなかった |
| 2019年8月21日 | 関西電力株 | 契約締結に関する交付を行わなかった |
| 2018年10月11日 | 東京電力エナジーパートナー株 | 契約締結に関する交付を行わなかった |
| 2018年3月2日 | 東京電力エナジーパートナー株 | 訪問営業や電話営業において交付を行わなかった |
経過措置料金規制の残る地域
- 小売料金の規制は基本的に撤廃されたが、競争が不十分な地域では経過措置として規制料金が存続中。
- 委員会は毎年、事後評価を実施し、これらの規制料金の適正性を確認。
特別な事後監視対象
市町村や供給地点における監視の必要性が高い地域をリストアップし、状況を把握。
| 旧一般ガスみなし事業者 | 9事業者 | 9区域 |
|---|
| 旧簡易ガスみなし事業者 | 291事業者 | 1,109地点 |
その他の改善点
- LNG基地の第三者利用制度の運用改善に向けた対策を提言し、卸取引の活性化を図っている。
託送料金の事後評価の結果
超過利潤の発生要因分析
2019年3月15日、第37回料金審査専門会合において、2017年度の超過利潤を得た22社について分析が行われた。以下のポイントが報告されている。
- 超過利潤の発生要因を分析し、今後も超過利潤が継続的に発生する可能性がある事業者に対して自主的な料金値下げの意向を聴取。
- 結果として、6社が自主的な料金値下げを実施。
- 4社の料金値下げも行われた。
制度改正に関する結果
委員会は、ガス導管事業者の事後評価の結果に基づき、必要とされる制度改正を提案し、以下の改正が行われた。
- 一般ガス導管事業者は地域別の託送収支計算書を作成・公表。
- 特定ガス導管事業者は特定導管ごとの託送収支計算書を作成・公表。
- 新制度に基づく託送料金の認可を受けた事業者は、超過利潤が一定水準を超過した場合に、次回料金値下げを総括原価方式で申請。
大手3社の効率化取り組み
事後評価では、託送収支以外にも効率化の取組が分析された。以下に、大手3社からの効率化取組の事例が示されている。
- 計測機器の点検頻度見直しによるコスト削減
- 工法改善(中低のPE管導入、非開削工法の導入)
- 業務効率化(タブレット導入、通信機能付きメーター活用)
- 工事発注手法の工夫(まとめ発注、条件変更の事前設定)
内管工事に関する実態分析
ガス導管事業者が独占的に行う内管工事について以下の対応が行われた。
- 見積単価の適正性確認: 内管工事の利益率が高い事業者に対し、見積単価表の改定見通しを聴取。
- 収支管理の徹底: 内管工事の収支管理を整理し、各社に周知。
- 情報公表の推進: 参考見積額を公表するよう依頼。
| 作業対象 | 内容 |
|---|
| 作業対象 | 需要家資産のガス工作物敷地境界からガス栓まで |
| 委託先 | 内管工事を適正に施工する能力を有する工事会社 |
ガス導管事業者の監査
委員会は、毎年ガス導管事業者の業務を監査し、以下の点を確認する。
- 託送供給約款に従った業務運用
- 差別的取扱い等の禁止行為の有無
監査結果
| 年度 | 指導件数 | 指導例 |
|---|
| H28 | 25 | 収益の算定誤り |
| H29 | 97 | 地域別配賦計算の誤り |
| H30 | 302 | 適用約款の誤り |
| R1 | 166 | - |
スイッチング手続きの標準化
新規参入事業者の負担を減らすため、業務フローや申請様式の標準化が進められた。
| 業務名称 | 主な手続 |
|---|
| スイッチング業務 | スイッチング申込、廃止等 |
| 開栓業務 | 託送開始申込、開栓報告等 |
| 閉栓業務 | 託送終了申込、閉栓報告等 |
| 情報変更業務 | 名義、住所変更等 |
不適切対応への指導とガスの逆流連結託送
新規参入者の接続に対する不適切な対応が指摘され、問題のある導管事業者には指導が行われた。
- 東電EPからの相談。
- 複数回の関係者会合を開催。
- 2018年3月に手続きが認可、2019年度から実施。
ガス導管部門の法的分離と行為規制
2022年4月から、大手3社の法的分離が行われる。この改正により導管事業者と小売・製造事業者との兼業が禁止され、人事や業務委託等に関する規制が導入される。
この法的分離により、ガス市場の競争が促進される見込みである。