資料の目的
本資料は、2024年12月27日に開催された「第104回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」に関するものであり、「再エネ主力電源化」を目指す技術的課題及びその対応策についての検討状況をまとめている。特に、系統事故時における電圧・周波数の急峻な変動への対応が主なテーマである。
概要
- 系統事故による電圧や周波数の急変は、インバータ電源の運転停止を引き起こす恐れがあり、その結果、大規模停電が発生する可能性がある。
- 2050年を想定した系統事故時の影響評価について、今後の対応策を審議することが目的である。
主要な内容
現状の系統状態
- インバータ電源(太陽光、風力)の導入拡大に伴い、主力電源化が進んでいる。
- 同期電源(火力など)の減少が進行中であり、その影響が懸念されている。
想定される課題
- 短絡容量の減少により、系統事故時の電圧・周波数変動が拡大する。
- 急峻な変動によってインバータ電源が停止するリスクが高まっている。
- 系統事故時の周波数低下が深刻で、大規模停電のリスクが存在する。
対策検討
インバータ電源の動作特性の理解
- メーカーへのアンケート結果に基づき、系統事故時のインバータ電源の動作特性を評価している。
周波数低下の影響評価
- 2030年及び2050年を想定した周波数低下の影響評価を行う必要がある。
対応策の必要性
- 系統側及び機器側の対策を検討し、周波数低下の影響に応じた対応策を構築する必要がある。
シミュレーション結果
2030年の想定
| エリア | 電源停止量 (MW) | 負荷制限量 (MW) | 系統維持の状況 |
|---|
| 中西Eエリア | 433 | 281 | 系統維持可 |
| 東北東京エリア | 625 | 459 | 系統維持可 |
| 北海道エリア | 157 | なし | 系統維持可 |
2050年の想定
| エリア | 電源停止量 (MW) | 負荷制限量 (MW) | 系統維持の状況 |
|---|
| 東北東京エリア | 1,283 | 1,113 | 系統維持可 |
今後の課題と検討
-
系統事故時のインバータ電源の運転停止による影響:
- 多数のインバータ電源の停止が周波数低下を引き起こし、調整力が求められる。
-
対応策の必要性:
- 同期電源の追加運転やFRT要件の見直しが重要である。
審議会資料概説
本資料は、系統側及び機器側の対策に関する分析を行ったものであり、特に同期電源の運転と同期調相機の設置に関する費用試算及びFRT要件の見直しについて議論が行われた。
① 系統側対策
対策コストの試算
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同期電源の運転
- 費用:2,160〜8,400万円/GW・日
- 条件:起動並列が容易な50万kWの火力発電機をモデルとし、最低運転25万kWで運転
- 燃料単価差:
- 石炭の場合:2.6円/kWh
- 再エネの場合:13円/kWh
- 起動費:150万円/回
- 1日あたりの運転時間:6時間
-
同期調相機の設置
- 設置費用:5千万円/MVA
- 40年間の総コスト:1519億円/GW
- 年間コスト:38億円/GW・年
| 対策 | 費用範囲 | 経済合理性判断 |
|---|
| 同期電源の運転 | 2,160〜8,400万円/GW・日 | 短期(45〜181日未満)で優位 |
| 同期調相機の設置 | 38億円/GW・年 | 長期(45〜181日程度以上)で優位 |
② 機器側対策
FRT要件の見直し
- 影響状況
- 現行のFRT要件では、周波数変動に対する耐量が規定されているが、事故時には規定を超えた周波数変動が発生している。
- 電圧位相変動時の耐量を超えた変動も確認されており、系統事故時のインバータ電源の運転停止を防ぐことが求められる。
見直し案の方向性
| 要素 | 現状のFRT要件 | 見直し方向性 |
|---|
| 周波数ステップ要素 | 0.8Hz(50Hzエリア)、3サイクル内なら運転継続 | 事故時の瞬間的な周波数変化に運転継続 |
| 周波数ランプ要素 | 改訂無し | 事故時の急変に運転継続 |
| 電圧位相ステップ要素 | 現状無し | 瞬間的な位相変化に運転継続 |
事故時の運転停止防止策
この対策は、系統維持の面でも優れており、周波数低下による負荷制限を回避する効果がある。
まとめ
本資料は、電力系統の安定性に向けた課題と対応策の検討状況を示している。系統事故における影響評価やインバータ電源の動作特性に基づく対策が求められる中で、これらの検討結果を踏まえ、今後の政策に資することが期待される。