再生可能エネルギーの主力電源化に向けた技術的課題と対応策
背景・目的
第117回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会は、再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化に向けて技術的課題と対応策を検討することを目的としている。本資料では、特にインバータ電源(太陽光、風力等)が系統事故時に運転停止するリスクについて議論されている。
概要
- 系統事故や需給バランスの乱れによる周波数低下の影響を抑制するために、FRT(Fault Ride Through)要件の見直しが必要である。
- 2030年および2050年を見据えた系統状況についてのシミュレーション結果を基に、今後の対応策が提案されている。
主要な検討内容
系統事故時のリスク
- インバータ電源は急激な電圧や周波数変動を検知すると運転を停止する可能性がある。
- 特に短絡容量が小さくなると、系統事故時の電圧・周波数変動が拡大する懸念が存在する。
想定される課題
- 同期電源(火力等)の減少に伴い、慣性力の低下、電圧変動の拡大、周波数低下のリスク増加が予想される。
- 将来的には系統事故によるブラックアウトのリスクが高まる可能性がある。
対策検討
- インバータ電源の応動: アンケート調査を基に、インバータ電源の運転特性を評価。
- 周波数低下の評価: 2030年及び2050年想定に基づいたシミュレーションを実施。
- FRT要件の見直し: 新しい事故条件に対応できるよう、FRT要件の柔軟化が提案されている。
今後の計画
- 本資料を基に、次回以降の委員会でFRT要件の具体的な見直し案を検討する予定である。
重要なデータ
以下の表は、2030年および2050年を想定したシミュレーション結果を示すものである。
| 年度 | エリア | 電源停止量(万kW) | 負荷制限(万kW) | 系統維持の可否 |
|---|
| 2030年 | 中西6エリア | 433 | 281 | 〇 |
| 2050年 | 中西6エリア | 3,584 | 2,230 | ブラックアウトの恐れ |
課題・リスク
- 系統事故時のFRT要件の見直しが不十分である場合、将来的な電圧・周波数変動に対応できず、重大な系統事故を引き起こすリスクがある。
結論
FRT要件の見直しは再エネの主力電源化を進めながら、系統の安定性を確保するために不可欠である。技術的課題を解決することで、電力需給の安定を図る必要がある。
現状の再エネ電源停止量に関する分析
Δfによる再エネ電源停止量
- 現在の再生可能エネルギー(再エネ)電源停止量は、周波数ランプ変動(RoCoF)の値を基に算定されている。
- RoCoFは100ms間の周波数変動量を用い、2Hz/sを超過した場合に電源が停止することを前提としている。
RoCoF時間窓の見直し
- ロード・ケースとして関西中国間連系線事故を分析した。
- 案1: RoCoFの時間窓を段階的に拡大した結果、300ms以上で系統維持に必要な低減効果が得られることを確認。
- 案2: 事故発生から100msの間、電圧低下耐量を優先する扱いを導入したところ、周波数変動による停止量をゼロにすることが可能であることを確認。
必要なフォローアップ
- 提示された案1・2については設備側の対応要否を確認しつつ、具体的な規定をグリッドコード検討会で詳細に検討する必要がある。
電力中央研究所によるシミュレーション
| 現状(Δfによる停止量) | 100ms | 200ms | 300ms | 事故発生から100ms間は電圧低下耐量優先 |
|---|
| 再エネ電源停止量(万kW) | 2789 | 1900 | 52 | 0 |
| ブラックアウト回避水準 | 850〜900 | | | |
FRT要件に基づく位相変動耐量の定義
- 現在のFRT要件では、位相変動耐量に特化した具体的な規定は存在せず、電圧低下耐量との関連で残電圧に応じた位相変動の耐量が規定されている。
位相変動耐量の要件イメージ
| 残電圧(%) | 位相変動(度) | 備考 |
|---|
| 52 | 41 | 電圧低下中にこの位相変化を考慮 |
| 20 | - | 位相変化がないものとする |
| 0 | - | 位相変化を伴わない電圧低下時のみの対応 |
2030年代以降の系統課題と対策
系統維持の課題と提案
| 課題 | 現状 | 2030年代 | 2040年代 | 2050年代 |
|---|
| 周波数面 | 停止量を想定し運用対策実施 | 事故時の電源停止量の増加 | | 電圧復帰時出力特性の強化が必要 |
| 電圧面 | 問題なし | 再エネ電源の比率上昇で電圧維持が困難 | | 出力ゼロでは電圧維持が困難 |
| 必要な対策 | - | 電圧復帰後の出力回復 | 緊急時の出力特性改善 | 出力ゼロ回避 |
| FRT要件見直し案 | グリッドコードに反映 | 出力ゼロを回避可能な範囲で出力維持 | | 劣化更新により新FRT要件に対応 |
まとめ
- 2050年想定における系統事故時の電圧・位相・周波数変動に関する対応策として、FRT要件の見直しが議論された。
- 【主要な見直し案】
- RoCoF時間窓の定義や、事故時100msの電圧低下耐量優先の取り扱いが系統維持に寄与することを確認。
- 残電圧0.2pu〜0.52puの入力に対して出力ゼロを回避し、系統を維持できる可能性が示唆された。
- 今後はグリッドコードへの具体的な反映を検討していく必要がある。