電力・エネルギー分野に関する事業報酬算定の詳細
目的・背景
本資料は、2023年3月3日に開催された経済産業省の第37回料金制度専門会合において、電力・ガス取引監視等委員会が提出したものである。目的は、北海道電力及び**東京電力エナジーパートナー(東京電力EP)**による事業報酬に関する申請内容の議論を促進することである。
主要な検討内容・論点
本資料では以下の内容が検討されている:
- 事業報酬の位置づけ: 事業を継続するためには、適切な費用回収と資金調達が必要である。
- 規制料金の計算式:
- 計算式:
料金原価 = 支出(営業費) + 資金調達コスト(事業報酬) - 収入(控除収益)
- 事業報酬の算定方法:
- 事業資産の価値(レートベース)に、債権者や株主が期待するリターン(事業報酬率)を乗じて算定される。
事業報酬制度の概要
- 事業報酬制度は1960年に導入され、以下の計算が行われる。
- 事業報酬 = レートベース × 事業報酬率
- 特定固定資産や建設中の資産が含まれる。
レートベースの定義
レートベースは、以下の事業資産の価値を基に算定される:
- 特定固定資産
- 建設中の資産
- 使用済燃料再処理関連加工仮勘定
- 核燃料資産
- 特定投資
- 運転資本
- 繰延資産
事業報酬率の算定例
事業報酬率は、自社の自己資本報酬率及び他人資本報酬率の組み合わせによって算定される。
事業報酬の位置づけに関するポイント
- 継続的な事業運営には、必要な資金を円滑に調達する要件がある。
- 負債利子率や株主が期待する利益率を適正水準として、事業報酬が電気料金から回収される。
- 事業資産の評価とその経済的根拠に基づく監査が重要である。
特別監査の実施
特定固定資産・建設中の資産について、経済的合理性や需要供給の整合性が確認される。不適切と判断された場合は、料金原価への算入が認められない可能性がある。
重要な数値データ
以下の表は、各事業者の現在の原価と今回申請された原価の比較を示す。
| 事業者 | 特定固定資産 (億円) | 建設中資産 (億円) | 核燃料資産 (億円) | 総合計 (億円) |
|---|
| 北海道 | 4,915 / 4,677 | 607 / 919 | 1,254 / 1,114 | 7,559 / 8,384 |
| 東北 | 8,500 / 11,477 | 655 / 1,147 | 1,599 / 1,504 | 12,867 / 18,330 |
| 北陸 | 5,811 / 4,155 | 13 / 1,163 | 849 / 840 | 6,569 / 7,587 |
| 中国 | 5,503 / 9,050 | 1,516 / 4,838 | 1,401 / 1,358 | 8,942 / 17,764 |
| 四国 | 2,627 / 3,771 | 193 / 113 | 1,384 / 928 | 4,963 / 6,309 |
| 沖縄 | 2,799 / 3,257 | 139 / 133 | - / - | 3,003 / 3,750 |
運転資本
- 運転資本は、営業活動に投下されている資金である。
- 営業資本や火力燃料、その他の貯蔵品にかかる資金は、料金収入として回収されるまでの間(概ね1.5ヶ月)経営の土台として眠っている状態である。
- このため、運転資本の1.5ヶ月分に相当する金額が、レートベースに織り込まれ、事業報酬として料金原価に算入される。
営業資本と貯蔵品に関するデータ
以下の表は、地域ごとの営業資本および貯蔵品に対する現行原価と今回申請された金額を示している。
| 地域 | 営業資本現行原価 (億円) | 営業資本今回申請 (億円) | 貯蔵品現行原価 (億円) | 貯蔵品今回申請 (億円) | 計 (億円) |
|---|
| 北海道 | 378 | 732 | 173 | 447 | 1,180 |
| 東北 | 1,068 | 1,946 | 575 | 1,403 | 3,349 |
| 北陸 | 299 | 614 | 137 | 498 | 1,112 |
| 中国 | 639 | 1,178 | 325 | 678 | 1,856 |
| 四国 | 351 | 501 | 137 | 274 | 775 |
| 沖縄 | 146 | 267 | 68 | 153 | 420 |
事業報酬の算定方法
東京電力EPを除く6事業者の事業報酬算定方法
事業報酬は、以下の計算式に基づいて算定される:
[(①電気事業全体の事業報酬 − ②送配電事業の事業報酬) \times ③発電小売事業に占める小売事業の割合]
各地域の事業報酬の算定結果
以下の表は、各地域の電気事業全体の事業報酬および送配電事業の事業報酬に基づく最終的な事業報酬を示している。
| 地域 | 電気事業全体 | 送配電事業 | 事業報酬 |
|---|
| 北海道 | 15,177 | 6,793 | 323 |
| 東北 | 34,659 | 16,329 | 660 |
| 北陸 | 11,951 | 4,366 | 255 |
| 中国 | 27,078 | 9,315 | 527 |
| 四国 | 11,098 | 4,789 | 209 |
| 沖縄 | 3,750 | 2,670 | 62 |
東京電力EPの事業報酬の算定方法
東京電力EPの事業報酬も同様に算定されるが、発販分離会社であるため、「発電小売事業に占める小売事業の割合」は必ずしも100%とはならない点が異なる。
β値の算定方法
- β値は、各事業者の株価が市場全体の株価指数に対してどの程度連動しているかを示す指標である。
- 委員の意見から、長期の採録期間を確保することや震災後の状況を考慮する必要があるとの意見が上がっている。
課題・リスク
- 計算方法や期間の選定において恣意性が入り込むリスクがあり、厳密な検討が求められている。
- 今後の議論では、データの整合性や市場動向を反映した適切な算定基準が重要である。
まとめ
本資料は、事業報酬の算定方法を中心に、運転資本に関連した資金の定義やデータを示し、各地域の事業報酬についての議論や検討事項を整理している。事業報酬の適正な算定に向けた各事業者の意見や、今後の課題が議論されている。