本資料は、次世代分散型電力システムの検討に向けて、デマンド・レスポンス(DR)の国内外の事例を整理したものである。
主な対象は以下のとおりである。
DRは、需要家との契約形態によって、需要削減の確実性(Dispatchability)が異なる。一般に、料金によって需要家の行動を誘導する方式から、設備の制御権を第三者に譲渡する方式に向かうほど、DRの確実性は高くなる。
| 類型 | 概要 | DRの確実性 |
|---|---|---|
| TOU | 時間帯ごとに異なる電気料金を設定する | 低 |
| CPP | 需給ひっ迫時など、特定時間帯に高い料金を設定する | 低~中 |
| RTP | 需給状況や卸電力市場価格に応じて料金を変動させる | 中 |
| 非コミット型リベート | 需要削減を事前に約束せず、実際に削減できた場合に報酬を支払う | 中 |
| コミット型リベート | 需要削減をあらかじめ約束し、必要時に削減を依頼する | 中~高 |
| 制御権譲渡 | 設備の制御権をアグリゲーター等に譲渡し、必要時に制御する | 高 |
アグリゲーターや小売電気事業者にとっての収益源として、資料では以下が挙げられている。
契約形態と収益源は、一定程度結び付いて選択されるものとして整理されている。一方、関連する市場については、資料では「市場自体の立ち上がりは先」とされている。
国内事例では、料金によって需要を誘導するTOU・RTP、削減実績に応じて報酬を支払うリベート型、機器を遠隔制御する制御権型DRが確認されている。
家庭向けに、太陽光発電の発電量が増える9~15時の電力量料金を割安にする料金メニューである。
主な特徴は以下のとおりである。
| 電力エリア | 昼間時間 | その他時間 |
|---|---|---|
| 東北電力エリア | 27.70円/kWh | 30.80円/kWh |
| 東京電力エリア | 26.90円/kWh | 29.90円/kWh |
| 中部電力エリア | 26.90円/kWh | 29.90円/kWh |
| 北陸電力エリア | 22.90円/kWh | 25.50円/kWh |
| 関西電力エリア | 22.90円/kWh | 25.50円/kWh |
| 中国電力エリア | 23.90円/kWh | 26.60円/kWh |
| 四国電力エリア | 24.40円/kWh | 27.30円/kWh |
| 九州電力エリア | 25.10円/kWh | 27.90円/kWh |
Looopは、2022年12月からリアルタイムプライシング型の「スマートタイムONE」を提供している。
市場価格が比較的落ち着く春・秋には、固定単価の料金プランより安くなる場合がある。一方、夏・冬など市場価格が高騰する時期には、固定単価のプランより高くなるリスクがある。
スマートタイムONEは、市場価格の変動を需要家が直接受ける料金メニューである。
国が支援する節電プログラムでは、需要家が所定の電力使用量削減を達成すると、ポイント等の特典を受け取ることができる。削減を達成できなかった場合のペナルティはない。
| 種類 | 削減の単位 | 達成条件・特典 |
|---|---|---|
| 月間型 | kWh | 前年同月比で3%以上削減。低圧は月額1,000円相当、高圧・特高は2万円相当 |
| 指定時型 | kW | 指定日時にベースライン比で削減。削減量に応じて特典を付与し、上限は40円/kWhの同額上乗せ |
九州電力は、スマートフォンアプリを活用し、需要を増やす上げDRと需要を減らす下げDRの双方を実施している。
| サービス | DRの方向 | 実施内容 | 2023年の実施期間 |
|---|---|---|---|
| 使ってお得・エコチャレンジ | 上げDR | 太陽光発電の供給が需要を上回りやすい時間帯に電気を使う | 4月25日~6月30日 |
| 節電チャレンジ | 下げDR | 需要が多く、太陽光発電の供給が減少する夕方等に節電する | 7月1日~9月30日 |
需要家は、九電ecoアプリで前日に案内を受け、チャレンジにエントリーする。指定時間帯に需要をシフトし、成功するとPayPayポイントが付与される。
ENECHANGEは、小売電気事業者向けにDRプラットフォームを提供している。2021年にはサミットエナジーと協業し、スマートリモコンやスマートプラグを活用した実証を行った。
実施の流れは以下のとおりである。
2022年冬の実証では、エアコンの暖房運転を20℃設定に遠隔設定し、DR指令時間帯のデマンド削減量は0.1~0.35kWh/コマであった。
海外調査では、需要家への料金シグナルによって電力使用時間を誘導する料金型DRを対象としている。主な対象はTOU、CPP、RTPである。
2020年6月時点の主な提供方法と参加状況は以下のとおりである。
| 国・州・地域 | 料金タイプ | 提供方法 | 参加状況 |
|---|---|---|---|
| Arizona | TOU | オプトイン | APS:57%、SRP:36% |
| California | TOU | デフォルト化 | 75~90%程度 |
| Colorado(Fort Collins) | TOU | 義務 | 100% |
| Illinois | RTP | オプトイン | 50,000件 |
| Maryland | PTR | デフォルト | 80% |
| Michigan | TOU | デフォルト化 | 75~90%程度 |
| Oklahoma | VPP | オプトイン | 20%、130,000件 |
| Canada(Ontario) | TOU | デフォルト | 90%、360万件 |
| France | TOU | オプトイン | 50% |
| Great Britain | TOU | オプトイン | 13%、350万件 |
| Hong Kong | PTR | オプトイン | 27,000件 |
| Italy | TOU | デフォルト | 75~90%程度 |
| Spain | RTP | デフォルト | 40% |
なお、75~90%程度とされる参加率は、資料上、過去の傾向に基づく推定値である。
カリフォルニア州では、制度的な措置によって家庭向けTOUの普及を促進している。また、2023年4月1日からは、大手電力会社等に対して、少なくとも1時間ごとに変動する小売料金の提供が求められている。
| 類型 | 概要 |
|---|---|
| 固定型料金 | 時間帯にかかわらず一律の単価を設定 |
| TOU | 時間帯に応じて複数段階の単価を設定 |
| CPP | 需給ひっ迫時などに高い単価を設定 |
| RTP | 各コマの卸価格に連動して単価を設定 |
| EV向けTOU | EV充電向けに夜間等の単価を安く設定 |
EV向けTOUの一部では、EV充電専用メーターの設置が必要である。
| 制度・施策 | 時期 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Residential Rate Reform | 2015~2019年 | 段階料金の価格差を是正し、大手電力会社にTOU移行を義務付け。移行後は顧客に選択権を付与 |
| TOU Pilot Program | 2016~2017年 | 住宅向けTOUをオプトインで実証し、需要削減や支払額への影響を検証 |
| Load Management Standards | 2022年採択、2023年4月1日施行 | 大手電力会社等に時間変動料金の開発・提供、料金情報の更新、第三者サービスへの情報アクセス支援等を義務付け |
Residential Rate Reformにより、従来4段階であった段階料金は2段階料金へ整理された。
TOU Pilot Programでは、PG&E、SCE、SDG&Eの大手3社が参加し、各社が複数のTOUメニューを用意した。各メニューには5万世帯以上を割り当て、需要家は選択バイアスを排除するため無作為に割り当てられた。
検証項目は以下のとおりである。
詳細な実証結果では、ピーク時間帯の需要削減率は概ね**3~6%**であった。多くの料金メニューで、冬季より夏季の削減率・削減kWが大きかった。
| 電力会社 | 料金メニュー | 2016年夏季 | 2016/17年冬季 | 2017年夏季 |
|---|---|---|---|---|
| PG&E | Rate 1 | 5.8% | 3.6% | 5.3% |
| PG&E | Rate 2 | 6.1% | 3.6% | 3.8% |
| PG&E | Rate 3 | 5.5% | 3.5% | 5.6% |
| SCE | Rate 1 | 4.4% | 1.4% | 3.6% |
| SCE | Rate 2 | 4.2% | 2.9% | 4.1% |
| SCE | Rate 3 | 2.7% | 3.2% | 4.0% |
| SDG&E | Rate 1 | 5.4% | 2.3% | 4.6% |
| SDG&E | Rate 2 | 4.6% | 1.7% | 4.1% |
料金差の大小と、削減率・削減kWとの間には、明確な傾向はみられなかった。
なお、資料の別の整理にはピーク時デマンド削減効果を**約36%とする記載もあるが、TOU Pilot Programの詳細表および結果整理では約3~6%**とされている。本資料では、実証結果として具体的に示された3~6%を中心に整理する。
TOU導入により、夏季の支払額は通常料金より増加した一方、年間支払額はほとんどの顧客でわずかに減少した。
顧客離脱率は、電力会社、料金メニュー、サービス地域、気候地帯、顧客セグメントなどによって異なった。
| 電力会社 | 離脱率の範囲 |
|---|---|
| PG&E | 1~10% |
| SCE | 0.5~14% |
| SDG&E | 1~3.9% |
細かなセグメント別では、離脱率は概ね1~15%程度である。気候地帯別では、暑い地域ほど離脱率が高かった。
所得層による傾向は電力会社ごとに異なる。
各電力会社は、複数の料金メニューを用意し、ピーク時間帯や季節ごとの料金区分を変えていた。
| 料金メニュー | 主な特徴 | 夏季ピーク料金 |
|---|---|---|
| Rate 1 | 比較的単純なピーク・オフピーク構成。平日16~21時が主なピーク | 41.0 |
| Rate 2 | 夏季にPartial-Peakを設定 | 43.5 |
| Rate 3 | 春季にSuper Off-Peakを設定 | 55.6 |
| 料金メニュー | 主な特徴 | 夏季の高料金帯 |
|---|---|---|
| Rate 1 | Super Off-Peak、Off-Peak、Peakを設定 | 34.8 |
| Rate 2 | Rate 1より高いピーク料金 | 55.2 |
| Rate 3 | Super On-Peak等、季節・曜日による区分が多い | 37.0 |
| 料金メニュー | 主な特徴 | 夏季ピーク料金 | 冬季ピーク料金 |
|---|---|---|---|
| Rate 1 | Super Off-Peak、Off-Peak、Peakの3区分 | 62 | 41 |
| Rate 2 | Off-PeakとPeakの2区分 | 62 | 41 |
2022年10月に採択された2022 Load Management Standardsにより、2023年4月1日から、PG&E、SCE、SDG&E、SMUD、Los Angeles Water and Power、大規模CCAなどが対象となった。
主な義務は以下のとおりである。
資料では、この制度により、以下の便益が想定されている。
PG&Eでは、2021年時点で料金型DRへの参加世帯は総世帯の約半数であった。家庭用総メーター数は491万世帯とされている。
2020年10月から2022年にかけて、多くの顧客がTOUへ自動的に移行されたため、資料では現在の参加率は2021年時点より高くなっていると見込んでいる。
イギリスでは、カリフォルニア州のように制度によって家庭全体をTOUへ移行させるのではなく、小売事業者が個別の料金メニューを提供している。
| 料金メニュー | 特徴 |
|---|---|
| Fixed tariff | 固定料金型 |
| Standard Variable Tariff(SVT) | 一律単価だが、市場状況に応じて定期的に変更 |
| Economy7・Economy10 | 時間帯別料金 |
| CPP | クリティカルピーク料金 |
| RTP | リアルタイムプライシング |
| EV tariff | EV向け時間帯別料金 |
イギリスではSVTが主流である。Economy7・Economy10は従来型のTOUとして存在するが、新規契約を受け付ける事業者は限られ、契約顧客数は減少している。
EDFの料金例は以下のとおりである。
| 料金メニュー | 基本料金 | 昼間・ピーク料金 | 夜間・オフピーク料金 |
|---|---|---|---|
| Economy7 | 33.25ペンス/日 | 50.60ペンス/kWh | 14.56ペンス/kWh |
| Economy10 | 33.25ペンス/日 | 62.07ペンス/kWh | 14.56ペンス/kWh |
Economy7の減少要因として、資料では以下が挙げられている。
蓄熱暖房住宅の割合は、以下のように減少している。
| 年 | 蓄熱暖房住宅の割合 |
|---|---|
| 1996年 | 8.0% |
| 2013年 | 6.1% |
| 2017年 | 5.1% |
イギリスでは、EV向け料金が比較的多く提供されている。多くはEVの充電だけでなく、EVを保有する家庭全体を対象とした料金メニューである。
| 事業者 | メニュー | オフピーク時間・料金の例 | 主な加入条件 |
|---|---|---|---|
| British Gas | Electric vehicle tariffs | 0~5時、9.4ペンス/kWh | 自宅充電可能なEV、スマートメーター |
| EDF Energy | GoElectric Overnight | 冬季0~5時、夏季1~6時、8ペンス/kWh | 自宅充電可能なEV、対応スマートメーター |
| E.ON Next | Next Drive | 0~7時、9.5ペンス/kWh | 自宅充電可能なEV、スマートメーター |
| Octopus Energy | Octopus Go | 0時30分~4時30分、9.5ペンス/kWh | 自宅充電可能なEV、対応スマートメーター |
| OVO Energy等 | Charge Anytime | EV充電分を常時10ペンス/kWh | 対応スマートメーター、EVまたは充電器 |
Charge Anytimeは時間帯にかかわらず同一単価であるため、厳密にはTOUではないが、EV向けメニューとして資料に含まれている。
Octopus Energyの「Agile Octopus」では、30分ごとに小売価格が設定される。
卸電力価格がネガティブとなるタイミングには、使用電力量に対する報酬を受け取れる「Plunge Pricing」も導入されている。需要家にはSMSやアプリで通知される。
| 比較項目 | カリフォルニア州 | イギリス |
|---|---|---|
| TOU導入の主体 | 制度的措置により導入を推進 | 小売事業者が中心 |
| 家庭全般向けTOU | デフォルト化により普及 | Economy7・Economy10は存在するが縮小傾向 |
| EV向けTOU | 提供が進展 | 各小売事業者が複数メニューを提供 |
| RTP | 2023年4月1日から大手電力会社等に提供を求める | 一部の小売事業者が提供 |
| 普及方法 | TOU移行義務化、デフォルト化、RTP提供義務化 | 小売事業者による任意提供 |
| 料金型DRの特徴 | 家庭全体を対象とする制度的普及 | EVや蓄熱設備など、特定の需要家を対象とするメニューが中心 |
| 実証で確認された効果 | ピーク時デマンドを概ね3~6%削減 | 資料では、料金型DRの普及は限定的と整理 |
本資料では、DRを、料金による需要誘導から設備の自動制御まで、需要削減の確実性に応じて整理している。国内では、太陽光発電の余剰電力活用を目的とした上げDR、市場価格に連動するRTP、節電実績に応じたリベート、スマート機器を用いた制御権型DRなど、多様なサービスが提供されている。
海外の料金型DRについては、カリフォルニア州とイギリスで普及方法に違いがある。
カリフォルニア州
イギリス
したがって、資料の中心的な整理は、カリフォルニア州が制度・義務化を軸にTOUおよびRTPを家庭全体へ普及させているのに対し、イギリスでは小売事業者がEV保有者など特定の需要家に向けて料金型DRを提供しているという違いである。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「次世代分散型電力システムに関する検討会 -国内外におけるDR・電気料金メニューの調査-」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_bunsan/index.html)をもとに当社作成
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