本資料は、EV(電気自動車)等を電力システムで活用する際の、今後の検討方針を示すものである。
EVは、移動手段であると同時に、充放電を通じて電力系統に貢献できる分散型エネルギーリソースでもある。一方、EVや充電器の普及が進むと、同時充電による負荷増大や配電系統の混雑など、新たな課題が生じる可能性もある。
そのため、資料では以下を両立することが重要としている。
2035年に国内の新車販売を全数電動車とする方針も踏まえ、EVや充放電器の普及後に対応するのではなく、普及段階から将来の影響や必要な対策を検討することが求められている。
EVは、次のような複数の価値を持つものとして整理されている。
したがって、EVを電力システムに統合する際には、電力系統側の都合だけで充放電を制御するのではなく、移動ニーズやユーザーの利便性を維持する必要がある。
また、EV単体で活用するだけでなく、複数のEVや他の分散型リソースを束ねることで、より安定的に電力システムへ貢献できる可能性が示されている。
現時点では、EVは主に以下の用途で活用されている。
将来的には、以下のような活用が議論されている。
| 分野 | 主なニーズ | EVによる貢献の可能性 |
|---|---|---|
| 系統 | 需給調整、需給バランスの確保 | 充放電による調整力の供出、充放電時間のピークシフト |
| 配電 | 電圧調整、混雑緩和、設備増強の回避 | 充放電制御による電圧調整、混雑緩和、増強回避 |
| 小売 | 電力調達、インバランスの回避 | 充放電時間のシフトによる電力調達の最適化 |
| 需要家 | 電気料金削減、レジリエンス向上 | ピークシフトによる料金削減、災害時の非常用電源 |
活用分野によって、制度・技術の検討状況は異なる。BGでの需給調整や災害時の給電では、既に一定の価値が発揮されている。一方、需給調整市場や配電系統での活用には、技術面・制度面の整備が必要である。
EVの系統への貢献は、電力システム側だけでなく、EVユーザーにとっても以下のメリットとなり得る。
EVの普及は電力システムへの貢献をもたらす一方、充電需要の増大によって系統への負荷を高める可能性がある。
特に、超急速充電器は充電負荷が大きく、充電特性も急峻であるため、配電系統に大きな影響を与える可能性が高いとされている。一方、普通充電器や急速充電器は、現在の負荷管理で対応できる可能性が高いと整理されている。
ただし、EVの増加に伴う充電設備の増設が、系統にどの程度影響を与えるかについては、定量的な評価がなお不十分である。
EV普及後に対策を講じるのではなく、将来のEV・充電器の設置状況を想定し、普及が進む段階から対策を進めることが重要である。
想定される施策は以下のとおりである。
系統接続ルールを厳しく設定すると、充電器の設置コストが増加し、EVの利便性を阻害する可能性がある。そのため、系統対策だけでなく、充電時間の変更などに参加するEVユーザーにもメリットが生じる電気料金制度や対価の仕組みを組み合わせることが論点となっている。
EV等のリソースについて、以下を検討する。
EVやV2H等の低圧リソースについて、需給調整市場で活用できる可能性を検討する。
現状では、需給調整市場にV2H等の低圧リソースが参加できないことが課題として指摘されている。
EV等が配電系統のニーズに応えられるかを検証する。
NEDO実証等を通じて技術検証を継続する方針であり、以下の論点も整理が必要である。
EVを電力システムで活用するためには、車両・充電器・電力系統間で必要な情報を取得し、適切に制御する仕組みが必要である。
検討対象は以下のとおりである。
経済産業省が作成を検討する充電インフラロードマップ等において、まず海外動向を調査する方針である。
将来普及すべき機能を備えた充放電インフラの導入を進めるため、以下を検討する。
EVを分散型リソースとして活用するには、車両や充電器の状態を把握し、複数台を適切に制御する必要がある。しかし、現状では以下の課題がある。
実証等を通じて、次の点を定量的に評価することも求められている。
移動する車両に充放電を求めるためには、適切なインセンティブも必要である。特にEV単体では利用予測のずれが大きくなり得るため、複数のEVや他の分散型リソースを束ねるVPP等の仕組みが論点となる。
利用時間や運行予定を比較的把握しやすい、以下のような地域密着型・業務用車両が例として挙げられている。
これらの車両を活用し、データ取得や系統への貢献可能量を定量的に評価することが期待されている。
EVと電力システムの統合には、自動車、充電器、電力、通信、データ等の複数分野が関係する。そのため、個別業界だけで課題を解決するのではなく、関係業界が互いの課題を解決し、全体最適につながる仕組みを検討する必要がある。
| 区分 | 検討項目 | 位置付け |
|---|---|---|
| 需給調整 | 需給調整市場における機器個別計測の活用 | 本検討会で議論中 |
| 需給調整 | 需給調整市場における低圧リソースの活用 | 本検討会で議論中 |
| 配電 | 配電系統における分散型リソースの活用 | 本検討会で議論中 |
| 共通基盤 | EV等のデータ取得・制御方法に関するルール整備・統一 | 新たな検討の場で扱う対象 |
| 機器 | 充放電器等のコスト低減 | 補助金等で支援する方向 |
資料では、関係業界が参加し、EVと電力システムの統合に向けた共通課題を検討する場として、来年度に「EVグリッドワーキンググループ(仮称)」を立ち上げる方針が示されている。
検討事項は以下のとおりである。
検討結果は、来年度内を目途に取りまとめ、本検討会へ報告する予定である。
| 分野 | 参加者 |
|---|---|
| 自動車 | 自動車メーカー |
| 機器 | 充放電器等の機器メーカー |
| サービス | 充電器サービス事業者 |
| 電力 | 一般送配電事業者、小売電気事業者 |
| エネルギーサービス | アグリゲーター |
| データ | データプラットフォーマー |
| 専門家 | 有識者、標準化に関する有識者 |
事務局は、資源エネルギー庁の電力・ガス事業部、省エネルギー・新エネルギー部、製造産業局自動車課、産業技術環境局国際電気標準課が担う案とされている。
検討にあたっては、EVや関連データ、取引の担い手を明確にする必要がある。
特に、EV関連データを扱うデータプラットフォーマーの出現が想定されており、TSO/DSO、小売電気事業者、アグリゲーター、自動車・充電器メーカー、EVを保有する需要家等との関係整理が課題となる。
再生可能エネルギーの導入が進む地域では、再エネ余剰等によって卸市場価格が0.01円/kWhとなる時間帯が増加している。
これを背景として、資源エネルギー庁は令和2~4年度に「ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業」を実施した。
この実証は、再エネ電気を最大限活用することを目的としたものである。料金制度は、系統負荷の抑制だけでなく、EVユーザーにとっての料金削減というメリットにもつながる施策として位置付けられている。
IEAの報告書「Grid Integration of Electric Vehicles」(2022年12月)では、EVのグリッド統合に向けて、以下の4分野で提言が整理されている。
また、IEAは、EV、EVSE(充電設備)、電力系統の間の通信プロトコル標準化を推奨している。これにより、車種にかかわらず管理された充電を行いやすくなり、系統向けサービスに活用できるEVの範囲を広げられると整理されている。
ノルウェーのNOBILは、EVユーザーや充電事業者等から情報を集め、充電器に関する主要データを公開するデータベースである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発・維持 | Norwegian Electric Vehicle Association |
| 所有権 | Enova |
| カバー範囲 | 約3,500充電ステーション、25,000以上の充電ポイント |
| 公開情報 | コネクタ種類、充電容量、位置、写真、利用可能性、技術情報等 |
| データ連携 | APIを通じてウェブサービスやモバイルアプリ等と連携 |
政府機関であるEnovaが資金を提供し、公的所有権を確保する一方、NOBILのデータを利用したサービス開発は市場に委ねられている。
英国では、2022年6月末から、家庭・職場向けに販売される対象充電器に、以下の要件が義務付けられている。
米国のニュージャージー州等では、電力系統の空き容量を示すホスティング・キャパシティ・マップを作成・公開している。
このマップは、既存負荷、ネットワーク容量、配電会社の性能要件等を踏まえ、充電ステーションの接続可能性を示すものである。特に電力需要の大きい充電ステーションの設置場所を検討する際の指針となる。
英国では、系統の供給力が十分でない地域にも急速充電インフラを整備するため、蓄電池の併設が計画されている。
カリフォルニアでは、CAISO、CEC、CPUC等の共同機関が、EVのグリッド統合であるVGI(Vehicle-Grid Integration)を支援する政策を策定している。
政策立案に貢献する場としてVGI Working Groupが設置され、以下の事項が検討された。
自動車メーカー、電力会社、系統運用者、規制機関、アグリゲーター、充電器メーカー、交通事業者、研究機関等が参加しており、業種横断で検討する体制の事例となっている。
本資料では、EVの普及を電力システムとの統合につなげるため、次の手順で検討を進める方向性が示されている。
以上のように、本資料は、EVを単なる電力需要として扱うのではなく、移動サービスとしての価値を維持しながら、需給調整、配電系統運用、再生可能エネルギーの活用、災害時の電源等に役立つ分散型リソースとして活用するための制度・技術・ビジネスモデルを、関係業界が共同で検討する方向性を示すものである。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「EV等の電力システムにおける活用に関する今後の検討方針について」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_bunsan/index.html)をもとに当社作成
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