中期的な卸電力市場政策に関する報告
資料の目的・背景
この資料は、経済産業省が提出した第35回制度設計専門会合における中期的な卸電力市場政策についての報告である。卸取引所のシェアを拡大し、より透明性の高い市場を形成することを目的として議論が行われている。
本日の議論の概要
- 卸電力市場は、旧一般電気事業者の自主的取組を中心に取引所のスポット市場の流動性向上に注目してきた。
- スポット市場では**30%**を超えるシェアを持つ事業者が増加しているが、中長期の取引は依然低調で、収益の安定化や電源確保に課題がある。
- 今後、中期的な卸電力市場の役割と必要な機能を整理する必要がある。
定義
資料内での「卸電力市場」とは、卸電力取引所及び取引所外で行われる電力の現物相対取引を含む広範な範囲を指す。
卸電力市場の現状
- 卸電力市場は短期市場(スポット・時間前)と中長期市場(先渡市場等)に分かれる。
- 旧一般電気事業者は、余剰電力の市場供出や小売予備力の削減を行い、市場環境の改善に寄与している。
スポット市場の流動性向上
- 2018年10月時点で、スポット市場の参加シェアは**29.0%**であり、欧州のフランスを超えるレベルに達している。
- この取引の増加は、間接オークションの導入などの施策によるものである。
スポット市場の取引シェア(2018年時点)
| 国・地域 | 取引シェア |
|---|
| 日本 | 29.0% |
| 英国 | 約50% |
| フランス | 約25% |
これまでの取組
スポット市場における取組
- 旧一般電気事業者が一定量の余剰電力を市場へ供出。
- 効率性向上を図るため、入札制約の合理化やグロス・ビディングの実施が行われている。
その他取引市場の状況
- 時間前市場は需要調整の役割を担っており、一定の取引量が存在するが、先渡市場の取引シェアは低迷している。
課題・リスク
- 中長期市場の育成が求められている一方で、短期市場への依存が続いていることが重要な課題である。
- 再生可能エネルギーの増加に伴う需給調整の変化に注意が必要である。
重要な事象・環境変化
- スポット市場での価格スパイクの発生。
- 再生可能エネルギーの増加により、需給調整タイミングが変化。
- 大きな取引量を持つ事業者属性の変化が観察されている。
今後の予定
- 卸電力市場の各種施策に関する検討を引き続き行う必要があり、具体的な論点については次回の会合で詳細に議論する予定である。
Ofgemによる流動性の定義と重要性
Ofgemは流動性を「大幅に価格を変更することなく、かつ大幅な取引コストを発生させることなく、マーケット参加者が電気を売買することができる機能」と定義している。この機能は、市場の競争と効率を支えるために不可欠である。
流動性の特徴
流動性が高い市場では以下の特徴が観察される:
- 新規の発電・小売事業者の市場参加が可能
- 価格の透明性が高まり、市場全体の競争が活性化
- 垂直統合型企業と同じ条件で市場で競争できることで、独立系企業の競争力が向上
Ofgemの流動性に関する目標
Ofgemは市場の活性化のために流動性を重視し、以下の3つの目標を設定している:
- ヘッジ支援: 価格の大幅な変動リスクをヘッジするための長期的な製品の範囲の確保
- 参照価格のサポート: 市場参加者が利用できる堅牢な参照価格の確保
- 有効な短期市場の促進: すべての企業が顧客に必要な電力を購入できる市場の促進
短期市場における流動性と価格指標性
短期市場では流動性が一定程度確保されているが、需給が逼迫した場合には流動性と価格指標性に問題が生じる。経済DRの大幅な増加がない限り、逼迫時における流動性の期待は難しいとされる。
論点と課題
| 個別論点 | 内容 | 課題例 |
|---|
| 売入札量の確保 | 需給逼迫時も流動性を確保するため経済DRの増加が必要 | 需給の即時把握、入札制約の合理化 |
| 相場情報の公開 | 市場価格予測の向上と共にコスト情報公開によるリスク | 入札電源出力情報の公開、事業者匿名性の担保 |
| インバランス料金制度の確立 | 需給一致のインセンティブ確保が公正な価格形成に寄与するが、問題があり見直しが必要 | インバランス料金制度の見直し |
| 市場支配力の排除 | 市場支配力を定義・排除する基準が必要 | 市場支配力の判断方法の確立 |
再生可能エネルギーと需給調整
需給調整の必要性が増大している中、現行の市場設計では再生可能エネルギー(RE)の発電量予測が難しく、需給逼迫時には柔軟な対応が求められる。
課題の例
- スポット市場と時間前市場との関係
- 時間前市場への送配電部門の参加可能性
- 経済DR(上げ、下げ)の参加促進
- GC直前での取引容易化
- 需給逼迫時のバランス停止機の利用可能性
今後の進め方
専門会合での議論を円滑に進めるため、次のことが提案されている:
- 卸電力市場の事象や変化の特定
- 各論点における基本的考え方の整理
- 関係事業者とのヒアリングを通じた議論の深化
このように、流動性と価格指標性の向上を目指しつつ、市場設計の見直しと課題解決が求められている。