資料は、排出量取引制度の設計に向けた民事法上の論点を提示するものであり、結論や制度決定を示すものではない。排出枠は、保有者が償却などの利益を排他的に得られ、第三者への移転によって譲受人も同様の利益を得られることから、従前の国内検討会の整理を踏まえて「特殊な財産権」と位置付ける案が示されている。どこまで法的性質を明確化するかは未決である。京都クレジットは過去に「動産類似」と整理されたが、資料はその本質が特殊な財産権という理解と異なるかを問いかける。EUでは統一見解がなく、加盟国ごとに無体財産などとされる例がある。
排出枠の帰属を口座簿の記録で定める想定のもと、温対法上のJCMクレジットにある規律を排出枠にも置くかが論点である。参照される規律は、①帰属を口座簿記録で確定、②口座間の振替記録を譲渡の効力発生要件とする、③記録名義人の適法保有を推定、④振替で取得した者の善意取得を認める(悪意または重大な過失がある場合を除く)という内容である。
詐欺による売買を取り消した場合の例では、一般民法の規律に委ねるか、取引の安全を高めるため善意取得の主観的要件を緩和するかが問われる。また、取消し後に真正な保有者が第三者へ排出枠の返還を求める根拠として、物権的返還請求権の類推、不当利得返還請求、口座記録の準占有などが候補として挙げられる。請求権を法文で明確にするか、口座簿管理者への誤記録訂正請求を認めるかも未決である。
取消し後に第三者が償却した場合は、取消しの遡及効により権利取得と償却を無効とし、排出枠を真正な保有者の口座へ戻す考え方がある。一方、行政庁が真正な保有者を判定しにくいこと、償却期限があることを踏まえ、いったん行われた償却を覆さない案も示され、選択は委ねられている。さらに、誤った無償割当てを取り消す場合、後続の善意取引には影響させず、行政庁が元の割当先に同量の返還を求める案や、割当先に同量の排出枠を国へ提出させて以後使用できなくする義務を課す案が提示されている。第三者が悪意の場合の扱いも論点である。
質権については、排出枠への設定を認めるか、認める場合に質入口座など口座簿上の設定・対抗要件制度を設けるかが論点である。京都クレジットでは国際的議論との調和を理由に質権が禁止されたが、資料は国内制度である排出枠には同じ理由が必ずしも当てはまらず、禁止しない設計もあり得るとしている。
民事執行では、償却義務の確実な履行のため差押えを禁止する案と、現行法の考え方に沿って差押えを認める場合の処分制限・口座簿上の表示方法が論点である。破産では、管財人による譲渡などを一律に禁止する案の現行法との整合性が問われる一方、管財人の善管注意義務により償却履行が期待できるとの考えも示される。
一律の差押禁止・破産処分禁止とは別の手段として、償却義務の履行まで対象事業者に一定量の排出枠を口座に保有させる「コミットメントリザーブ」が紹介される。過剰売却による償却不足を防ぐ仕組みであるが、取引を制限するため市場流動性への配慮が必要である。過去のJVETSでは、参加者区分に応じて初期割当量等を基準とする保有義務を設け、償却達成後に解除していた。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「民事法上の論点について」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/gx_implementation/index.html)をもとに当社作成
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