電力・ガス取引監視等委員会 第63回料金制度専門会合資料
資料の目的・背景
本資料は、電力・ガス取引監視等委員会に提出された第63回料金制度専門会合に関するものであり、電気の規制料金に関連する事業報酬の算定における自己資本比率についての検討結果を報告することを目的としている。
主要な検討内容・論点
自己資本比率の見直し
- **第57回料金制度専門会合(2024年6月14日)**において、自己資本比率は以下のように整理された:
- 現行の算定式では、実績は約35%。
- 類似の公益事業や諸外国の電力会社の自己資本比率は30〜40%。
- 現在は**30%**を使用し、大きな変化があれば柔軟に見直す。
インセンティブの点検
- 「高い自己資本比率の使用が事業者のインセンティブになるか」という指摘があり、事務局はこの点について改めて整理する必要があった。
- 第521回委員会では、以下の点が確認され、説明が決定された:
- 各社の内部留保や株主配当の推移
- 自己資本比率に対する考え方
資金調達環境の変化
自己資本の必要性が増す理由は以下の通りである:
- 事業リスクの増加:自由化に伴う競争や資源価格の変動
- 財務的安定性を確保するための自己資本の厚さの必要性
事業報酬の計算式
| 計算式項目 | 内容 |
|---|
| 事業報酬 | レートベース × 事業報酬率 − 一般送配電事業者分 |
| 事業報酬率 | 自己資本報酬率 × 30% + 他人資本報酬率 × 70% |
モニタリングの結果
- 各社の自己資本比率の目標値は**20〜30%**を見込んでおり、一部事業者は現行の目標値が30%を下回っていた。
- 経営者の判断に基づき目標値の引き上げを目指しているが、急激な引き上げは無理とされている。
自己資本比率の改善に向けたインセンティブ
- 自己資本比率が30%に届かない事業者は、規制料金からの差益を得ている。
- 過剰な株主還元方針によって改善効果が薄れる場合、自己資本比率の見直しが検討される可能性がある。
重要な数値・データ
- 2023年度の自己資本比率は約21%(連結・10社平均)であり、前年度比で約4%上昇している。
- 配当性向(旧一電全社平均)は8.1%。
課題・リスク
- 長期的には自己資本比率向上が必要であるが、現行の株主還元方針や任意の資本政策が障害となる可能性がある。
- 厳しい資金調達環境が続く中で、事業者が自己資本比率を高める体制が求められる。
資金調達方針の概要
設備投資等に必要な資金の調達は、主に**負債(金融機関からの借入・社債発行)**によって行われる方針である。自己資金が不足する分について負債を活用するが、自己資本比率を引き下げる意図的な行動は見られない。
各事業者の資金調達方針
| 事業者 | 資金調達方針 |
|---|
| 北海道 | 電気事業に必要な設備投資や債務償還に社債発行と金融機関からの借入を調達。短期的にはコマーシャルペーパーを利用。 |
| 東北 | 社債発行と金融機関借入を組み合わせ、短期的にはコマーシャルペーパーを利用。 |
| 東京HD | 効率化を推進し、外部資金調達を行う。 |
| 中部 | 社債発行や銀行借入で資金調達。 |
| 北陸 | 自己資金で賄い、不足分は社債や借入で調達。 |
| 関西 | 社債や借入で不足分を調達し、短期的にはコマーシャルペーパーを利用。 |
| 中国 | 原子力稼働に必要な高額な資金を社債や長期借入金で調達。 |
| 四国 | 自己資金と社債・長期借入金で調達。 |
| 九州 | 燃料代や設備投資に社債・借入で調達。 |
| 沖縄 | 設備投資と債務償還に自己資金と社債発行で調達。 |
2023年度の資金調達状況
有利子負債と資本金の推移
- 負債残高:2023年度の負債残高に特異な動きは確認されていない。
- 資本金の変動:九州電力の第三者割当増資(B種優先株式発行)のみで大きな変動があった。
資本金及び資本剰余金の状況
| 北海道 | 東北 | 東京HD | 中部 | 北陸 | 関西 | 中国 | 四国 | 九州 | 沖縄 |
|---|
| 資本金 期首 | 114,291 | 251,441 | 1,400,975 | 430,777 | 117,641 | 489,320 | 197,024 | 145,551 | 237,304 | 7,586 |
| 資本金 期中 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 100,000 | 0 |
| 資本金 期末 | 114,291 | 251,441 | 1,400,975 | 430,777 | 117,641 | 489,320 | 197,024 | 145,551 | 237,304 | 7,586 |
| 資本剰余金 期首 | 47,348 | 22,250 | 756,221 | 70,571 | 33,987 | 66,854 | 28,585 | 3,598 | 120,006 | 7,278 |
| 資本剰余金 期末 | 47,348 | 23,291 | 756,317 | 70,522 | 33,987 | 67,002 | 28,534 | 3,598 | 193,520 | 7,278 |
| 増資 | 無 | 無 | 無 | 無 | 無 | 無 | 無 | 無 | 有 | 無 |
九州電力の第三者割当増資について
九州電力は、2023年度にB種優先株式を発行した。これには以下の目的がある:
- ブランドメッセージ:「九電グループの思い」として、カーボンニュートラルと成長事業の拡大を目指す。
- 財務基盤の確保:安心・安全な財務基盤を求め、適正化を優先事項とする。
- 資金調達の必要性:設備投資や新規案件の投資を支えるため、安定した財務基盤が最重要課題である。
B種優先株式発行の理由
- 財務基盤の安定化と事業拡大のため、株主の権利保護を考慮しつつ資金調達を行う。
※株主総会における議決権は付与されない。
今後の予定
次年度以降も資金調達の状況に関する確認を続け、次回は来年同時期の料金制度専門会合での報告を予定している。
まとめ
本資料では、自己資本比率の整備とその重要性に関する意見交換が行われ、事業の財務健全性確保や資金調達環境の変化に応じた慎重な対応が求められている。今後、各社の自己資本比率の改善状況や株主還元方針についてのモニタリングを継続し、適切な指導・助言が重要である。