本資料は、広域系統整備計画の費用便益評価について、主に以下の事項を整理し、議論するものである。
広域系統整備計画では、整備費用が国民負担につながることも踏まえ、系統整備による社会的便益を説明するために費用便益評価を実施している。
なお、北海道本州間連系設備(日本海ルート)では、プロジェクトファイナンスを前提とした検討が行われている。
費用便益評価には、評価主体と目的が異なる次の2種類の分析がある。
| 分析 | 評価の視点 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 財務分析 | 事業主体の収入・支出 | 事業として成立するかを分析する |
| 経済分析 | 日本国内など社会全体の便益・費用 | 事業実施の経済的妥当性を判断する |
本資料で対象としているのは、個々の事業者やプロジェクトの収支を評価する財務分析ではなく、日本国内全体の視点から行う経済分析である。
経済分析では、プロジェクトの実施によって資材や労働力を利用し、それらを別の用途に使えば得られたはずの価値を失うことを、機会費用としてコストに計上する。
機会費用とは、プロジェクトを実施しなければ、他のプロジェクトなどで利用価値を生んでいたであろう資材や労働力を利用したことにより失われた価値である。
一方、主体間で資金が移転するだけで、社会全体として資源が失われないものは、価値の移転費用として経済分析のコストには含めない整理である。
代表的な価値の移転費用は、以下のとおりである。
また、プロジェクトを実施しなくても発生する既存の調査費などは、サンクコストとして扱われる。
資料で示された費用項目ごとの扱いは、以下のとおりである。
| 費用項目 | 費用便益評価における扱い |
|---|---|
| 工事費 | 資材や労働力の機会費用に該当するため算入する |
| 運転維持費 | 機会費用に該当するため算入する |
| 漁業・用地補償費 | 操業制限などによる実費に限って算入する |
| 保険料 | 偶発事象に伴う機会費用の期待値を表すものとして算入する |
| アドバイザリーフィー | 実作業・人件費への対価が主であるため算入する |
| エージェントフィー | 機会費用に該当するかをプロジェクトの実態に即して判断する |
| コミットメントフィー | リスクテイクへのプレミアムが主であれば不算入とする。実作業部分を分離できる場合は、その部分を算入する |
| アップフロントフィー | リスクテイクへのプレミアムが主であれば不算入とする。実作業部分を分離できる場合は、その部分を算入する |
| 各種金利 | 価値の移転費用として不算入とする |
| GX債務保証料 | 不算入とする |
| その他のファイナンス費用 | 価値の移転費用または機会費用に該当するかを踏まえて判断する |
| 税金・法人税等 | 事業者から国への価値の移転であるため不算入とする |
| 将来の物価上昇分 | 物価上昇に応じて便益も上昇するため、相殺されるものとして不算入とする |
| 予備費 | 基本評価には算入せず、感度分析で影響を確認する |
法人税、事業税、消費税などの税金は、SPCと国との間の金銭の移転である。
また、金融機関からの借入に対する利息も、SPCと金融機関との間の金銭の移転である。そのため、いずれも社会全体としての機会費用とはみなさず、費用便益評価のコストには含めない整理である。
財務分析では、事業主体のキャッシュフローを評価するため、税金、関税、債務返済などが分析対象となり得る。一方、経済分析では、これらは社会全体の資源消費ではなく主体間の資金移転として扱われる点が異なる。
各種手数料は、名称だけで一律に判断するのではなく、機会費用に該当するか、またプロジェクトにおいてどのような実態を持つかを踏まえて判断する。
アドバイザリーフィー
エージェントフィー
コミットメントフィー
アップフロントフィー
このように、金融機関の実作業・人件費への対価は機会費用として算入し、リスクテイクへのプレミアムなど、価値の移転に当たる部分は不算入とする考え方である。
プロジェクトファイナンスを前提とする広域系統整備計画では、工事期間中の偶発事象に対して保険を活用することが想定されている。
保険料については、以下の理由から費用に算入する案が示されている。
したがって、保険料は費用便益評価のコストに算入する整理である。
予備費について、現行ガイドラインでは15%を基本としている。ただし、15%が合理的であるかについては、今後のガイドライン運用の中で確認することとされている。
予備費を基本評価に直ちに算入しない理由は、以下のとおりである。
このため、基本評価では予備費を算入せず、執行率を変えた感度分析により影響を確認する案が示されている。
感度分析における予備費の執行率の例は、以下のとおりである。
経済分析では、実質的な資源の損失、すなわち機会費用をコストとして計上する。
そのため、漁業・用地補償費については、漁場の消滅や工事による休業など、操業制限に伴う実質的な損失を対象とする考え方である。資料では、以下の補償が例として示されている。
最終的な整理としては、操業を制限したことによる実費に限って算入する考え方が示されている。
今回、燃料費・CO2対策コストおよびアデカシー便益の算出に用いるパラメータについて、最新の想定や実勢価格を反映する整理が示されている。
燃料価格は、低下ケースと高騰ケースの幅を持たせて評価する。
| ケース | 設定方法 |
|---|---|
| 低下ケース | 発電コスト検証ワーキンググループ(2025年)の推計値を使用する |
| 高騰ケース | 燃料価格が一定程度高騰した期間の平均値を使用する |
個別の計画策定では、工事費に反映される為替変動との整合をとり、燃料価格にも工事費算出時期に対応した為替変動を反映する。
資料に示された為替水準は、以下のとおりである。
| 区分 | 為替水準 |
|---|---|
| 発電コスト検証WG(2025年、2023年平均) | 141.0円/ドル |
| 燃料価格高騰期間(2022~2024年平均) | 141.7円/ドル |
| 直近12か月(2025年8月~2026年7月) | 159.6円/ドル |
CO2輸送・貯留費用および燃料諸経費は、実勢価格を反映するため、**デフレーター(建設総合)**を用いて補正する。
個別の計画策定においても、工事費の算出時期と整合するデフレーターを用いて補正する整理である。
CO2対策コストについては、以下の項目を検討対象とする。
2050年カーボンニュートラルを踏まえた追加的な政策が実施されるシナリオを考慮し、APSシナリオの想定値を上振れとして設定する整理が示されている。
CO2の輸送・貯留については、以下の前提を置く。
アデカシー便益は、以下の2つの基準で算出し、評価に幅を持たせる。
調達コストベースの算出に用いるNet CONEは、便益算出時点の最新値に更新して使用する。
資料に示された2026年度の数値は、以下のとおりである。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| Net CONE | 20,911円/kW |
| 需要曲線における上限価格(Net CONEの1.5倍) | 31,366.5円/kW |
| インフレ率 | 6.71% |
2025年度のNet CONEは10,075円/kWであり、2026年度は発電コスト検証WG(2025年)の値に基づき見直されている。
本資料では、広域系統整備計画の費用便益評価について、以下の基本的な整理が示されている。
本資料の整理は、プロジェクト単体の資金収支ではなく、社会全体で発生する資源の損失と便益を基準として、広域系統整備の妥当性を評価するものである。今後は、社会的影響が大きいプロジェクトについて、需要家への説明性も踏まえて説明していく考えである。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「広域系統整備計画の費用便益評価手法について:(プロジェクトファイナンスに関する費用の扱い等)」(電力広域的運営推進委員会)(https://www.occto.or.jp/iinkai/kouikikeitouseibi/)をもとに当社作成
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