本資料は、排出量取引制度の具体案を決定するものではなく、制度設計に伴う憲法・行政法・民事法・市場取引・会計上の論点と考え方を整理した報告書案である。制度はGX推進法の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行」という目的に沿う必要がある。研究会は案への意見を求めており、今後はカーボンプライシング専門ワーキンググループが具体案の論点を整理し、その後、本研究会でも検討する方針が示されている。
制度設計には専門技術的・政策的判断が伴うため、立法裁量は広いと整理される。規制の態様や制約の程度に応じた合理性を確保し、別異取扱いに合理的理由があれば、営業の自由・平等原則に反しないとの考え方である。市場安定化措置は制度設計時に設け得るほか、事後変更も合理的理由と予見可能性への配慮があれば、基本的に財産権を侵害しないとされる。一方、オークション収入に関する租税法律主義の適用や、国の制度と東京都・埼玉県の条例制度との関係は整理が必要である。
行政法上、排出量取引は排出抑制規制と、取引可能な地位の付与が組み合わさる。許可制と償却義務を二者択一とせず、両方の性格を持たせる設計もあり得る。無償割当量の決定・割当てと不履行への措置は権利義務を形成するため、抗告訴訟の対象となる処分性が認められる一方、割当基準の策定には認められないとの整理である。割当基準は意見公募や審議会等を通じて意見を取り入れ、反映過程の透明性を確保することが望ましい。割当量は公平性と行政コストの観点から、可能な限り基準に沿って非裁量的に決め、第三者の認証・検証を踏まえつつも最終判断は行政庁が行う。償却不足に対しては不足量に応じた課徴金等が実効性確保に有効とされる。制度開始時に厳格な総量配分を行うと、競争条件への懸念や訴訟が生じ得るため、信頼性・法的安定性への配慮が必要である。
排出枠保有者の実質的な権利は、国への償却による公法上の義務履行と、第三者への譲渡利益である。債権・物権のいずれとも断定し難く、「財産権」と整理する方向が示されるが、この性質決定だけで個々の民事問題が解決するわけではない。登録簿の電子記録に法的意味を持たせ、帰属・移転要件・保有の推定・善意取得を定めることが考えられる。意思表示の瑕疵がある取引では、第三者保護を民法の規律に委ねる案、真正な保有者の返還請求の根拠を明文化するか、瑕疵ある移転後の償却を一律有効とするかなどが論点である。シリアル番号があっても、個々の番号より排出枠の量に着目する整理もあり得る。
行政庁が過剰割当てを取り消す場合、取引相手への影響を避けつつ、割当てを受けた者に同量の返還または取消義務を課す案がある。第三者への取消しの効果や、悪意の取引相手等の扱いは追加検討事項である。質権設定は明文で禁止せず、設定用口座を設けない設計、差押え時の移転・償却制限、破産時の管財人の取扱いが論点となる。償却確保のためのコミットメントリザーブも、取引制限と市場流動性に留意して検討する。
現物市場を対象事業者や金融機関等のプロ中心と想定する場合、取引業者・仲介業者への参入・行為規制は不要とする考え方がある。他方、公正な価格形成のため、取引所運営者には認可等を求め、現物取引では注文を一か所に集める集中義務を課す案が示される。相場操縦規制は必要との整理である。インサイダー取引規制は、排出枠に発行者がいない点から適用に疑問がある一方、未公表の重要事実やEUの規制を踏まえ導入を求める見解もあり、法令と取引所規程のどちらで定めるかを含め未確定である。
会計面では、実務対応報告第15号は法的義務を伴う制度を扱っていないため、2026年度から本格稼働する制度への適用可否を改めて検討する必要がある。同報告を適用する場合でも、排出枠を資産として認識する時期・金額・評価や、義務化に伴う負債・引当金の認識が論点となる。市場が活発に整備された場合に、排出枠を金融投資として時価評価し評価差額を損益処理する考え方が妥当するか、市場整備の判断基準も未確定である。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「GX実現に資する排出量取引制度の法的課題とその考え方についての報告書(案)の概要」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/gx_implementation/index.html)をもとに当社作成
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