本資料は、カーボンニュートラルと電力の安定供給を両立するため、分散型リソースを活用した次世代の分散型電力システムをどのように構築するかについて、検討の方向性を整理したものである。
対象となる分散型リソースは、主に以下のとおりである。
資料では、分散型リソースを単に導入するだけでなく、電力市場や系統運用における価値を明確化し、その価値を評価・取引できる制度や技術基盤を整備することが重要であるとしている。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーを中心とした分散型社会の発展が期待されている。
将来の電力ネットワークは、次のような方向で変化することが示されている。
| 領域 | 方向性 |
|---|---|
| 送電 | 広域化・高度化する送電プラットフォーム |
| 配電 | 分散化・多層化する配電プラットフォーム |
ウクライナ紛争等に伴うエネルギー資源価格の高騰などを背景に、国内では電力需給ひっ迫の危機が顕在化している。
このため、再生可能エネルギーを導入するだけでなく、EV、蓄電池、DRなどの分散型リソースを活用し、需給調整や系統混雑の緩和を図ることが重要とされている。
分散型リソースの活用に関連して、以下の制度・環境整備が進められている。
本資料における検討は、次の三つの柱に整理される。
| 柱 | 主な検討内容 |
|---|---|
| 分散型リソースの価値発掘 | EVやDR等が、需給調整、系統混雑緩和、電圧管理、災害対応などにどのように貢献できるかを整理する |
| 分散型リソースの価値評価 | 機器個別計測、低圧リソースの市場参加、ベースラインや精算方法など、貢献を定量化する仕組みを検討する |
| 分散型システムの構築 | 分散型リソースと既存の電力系統が補完・共存するための配電系統運用や制度を検討する |
EVは、運輸部門の電化に加え、系統への貢献を含むマルチユースによって普及拡大が期待されている。
想定される活用は以下のとおりである。
EVの活用を進める仕組みとして、以下が検討対象となっている。
電動化したモビリティとエネルギーインフラを組み合わせることで、以下の仕組みが想定されている。
EVを対象としたダイナミックプライシングの実証では、昼夜に無料時間帯を設定した結果、約40%の参加者が無料時間帯へ充電をシフトした。
市場連動型の電気料金メニューについては、資料上、以下の実績が示されている。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 市場連動型料金メニューの需要家数 | 約69万人 |
| 全契約数に占める割合 | 約0.78% |
| 提供する小売電気事業者 | 20社 |
※需要家数は2021年2月時点、事業者数は2021年1月時点である。
主な料金設定方法は、次の三つである。
V2Hには、停電時の給電機能が概ね標準的に備えられているとされている。EV等の蓄電池から、以下のような施設・機器への給電が想定されている。
また、一般社団法人次世代自動車振興センターを通じ、V2H充放電設備の購入者に対する補助制度が実施されている。
| 補助対象 | 補助内容 |
|---|---|
| 設備費 | 2分の1 |
| 工事費 | 上限40万円 |
制度の目的は、電気自動車や燃料電池自動車の外部給電機能を災害時に活用し、レジリエンスを高めることである。
DRには、需要を増やす「上げDR」と、需要を減らす「下げDR」がある。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 上げDR | DR発動により電気の需要量を増やす | 再エネ余剰分の消費、蓄電池の充電 |
| 下げDR | DR発動により電気の需要量を減らす | 電力需要ピーク時の需要機器の出力抑制 |
改正省エネ法では、大規模需要家に対して「電気の需要の最適化」への取組に関する定期報告を義務づけている。
工場等判断基準WGでは、DR実績について次の評価方法が検討されている。
| 評価方法 | 位置づけ | 開始時期 |
|---|---|---|
| DR実施回数の報告 | 義務 | 2023年度、初回報告は2024年 |
| 高度なDR実績の報告 | 任意 | 2024年度、初回報告は2025年 |
高度なDR実績については、時間単位の電気使用量を把握している事業者を対象に、平時の電気使用量であるベースラインの設定方法などを今後検討するとされている。
変動する再生可能エネルギーの導入拡大に対応するには、供給側だけでなく需要側の対策も重要である。
DR対応家電の例として、以下が挙げられている。
一部のエアコンには、系統周波数の低下時に出力を自動抑制する機能や、IoTを通じた遠隔制御機能が搭載されている。
ただし、これらの機能を活用するには、消費者のインターネット接続と事前合意が前提となる。オーストラリアでは、家庭用エアコン、給湯器、EV充電器等へのDR対応機能の搭載を義務化している事例が紹介されている。
DRは、調整力公募や容量市場ですでに活用されている。
| 項目 | DR | 全体 |
|---|---|---|
| 落札量 | 229.7万kW | 363.7万kW |
| 平均落札価格 | 3,899円/kW | 4,006円/kW |
DRの落札量は、全体の6割超である。
| 年度 | 発動指令電源の約定量 | 容量市場全体の約定量 | 約定価格 |
|---|---|---|---|
| 2024年度 | 415万kW | 1億6,769万kW | 14,137円/kW |
| 2025年度 | 475万kW | 1億6,534万kW | 3,495円/kW |
※2025年度の北海道・九州は5,242円/kWである。
資料では、電源I’や発動指令電源はアグリゲーターが比較的参入しやすい場とされている。これらの市場への参加は、需給調整市場への参画に向けた経験の蓄積や、アグリゲーターの安定的な収益源となる観点から、さらなる拡大が期待されている。
需給調整市場では、蓄電池等の分散型リソースが、受電点計測によるDRとして参加できる。
しかし、受電点で評価する場合、制御対象設備以外の要素も含めて、需要家全体で指令に対応する必要がある。
そのため、蓄電池等が保有する出力能力を十分に市場へ供出できない場合がある。
この課題への対応として、需要家の受電点ではなく、制御対象となる蓄電池や自家発電設備等の機器点で出力または消費電力を個別に計測する仕組みが検討されている。
機器個別計測では、以下を評価・精算する。
機器個別計測の導入に向け、広域機関は論点を次の四つに整理している。
| 区分 | 主な論点 |
|---|---|
| アセスメントⅠ | 機器点リソース単位での発電量または基準値計画の作成・システム登録 |
| アセスメントⅡ | 特例計量器からの瞬時供出電力の送信、応動実績の不正防止 |
| 入札・約定・精算 | 配線経路内の損失、需要家内の差分計量の扱い |
| その他 | インバランス補正、需要家内のBG構成、契約単位、市場参入要件 |
具体的には、以下の整理が必要である。
原則として「1需要場所1計量」である中で、需要家内の複数計量をどのように扱うか、機器点リソースについて新たなバランシンググループを組成する必要があるかも論点となっている。
| 主体 | 主な役割 |
|---|---|
| 広域機関 | 参入要件ごとの詳細課題、低圧リソースに関する課題、システム改修要件・期間の検討 |
| 一般送配電事業者 | システム改修の詳細検討、改修開始、不正防止策の検討 |
| 資源エネルギー庁 | 制度変更、事業者ヒアリング、取引規程改定案の検討 |
資料では、2022年度内を目標に機器個別計測の一定の方向性を示し、2023年度以降に取引規程の改定やシステム改修を進める想定が示されている。
家庭用蓄電池、エネファーム、EV、空調、照明等の低圧リソースについて、自家消費や非常時対応に加えて、電力市場で活用する取組が進められている。
| 取引 | 活用例 |
|---|---|
| kWh取引 | エネファーム等の余剰電力を小売電気事業者へ販売 |
| kW取引 | 家庭用リソースを束ね、容量市場へ参加 |
| ΔkW取引 | EV等を遠隔制御し、調整力として活用 |
| 需給調整市場 | 低圧リソースを束ね、市場要件への対応可能性を実証 |
ただし、資料作成時点では、需給調整市場への低圧リソースの参加は認められていない。
低圧リソースは一台当たり数kW以下の小規模なものが多く、数万以上のリソースを束ねて市場参加するケースが想定されている。
| 必要なΔkW | 大規模リソース | 低圧リソース |
|---|---|---|
| 1MW | 500kW × 2軒 | 1kW × 1,000軒 |
| 100MW | 500kW × 200軒 | 1kW × 100,000軒 |
そのため、以下が検討課題となる。
資料では、機器個別計測の導入や低圧リソースの市場参加により、需給調整市場等における参加獲得ポテンシャルが倍増する可能性が示されている。この推計は2020年度時点のポテンシャルに基づくものである。
次世代スマートメーターは、電力DXを支える基盤として位置づけられている。資料では、2025年度から導入を開始し、2030年代早期までに導入を完了する予定とされている。
主な機能は以下のとおりである。
これにより、レジリエンス強化、再生可能エネルギーの大量導入・需給安定化、電力使用量の見える化などが期待されている。
特定計量制度は、2020年の電気事業法改正に盛り込まれ、2022年4月1日に施行された制度である。
一定のルールの下で、パワーコンディショナーやEV充電器等の特例計量器を電力取引に利用できる。
主な内容は以下のとおりである。
想定される取引は、太陽光発電の余剰電力取引、EV充電設備の電力取引、EVを蓄電池として扱う電力売買サービスなどである。
再生可能エネルギーやEV等の接続が増加すると、配電系統では以下の課題が生じると整理されている。
EVや蓄電池を適切なタイミングで充放電することで、以下の効果が期待されている。
| 系統レベル | 活用例 |
|---|---|
| 基幹系統 | 需給調整市場等を通じた調整力の提供 |
| ローカル系統 | 系統混雑の緩和、系統用蓄電池による増強回避 |
| 配電系統 | DERフレキシビリティによる混雑・電圧変動への対応 |
DERフレキシビリティは、配電系統内のEVや蓄電池等を活用し、再生可能エネルギーの発電量に合わせて需要を創出する仕組みである。
再生可能エネルギーの発電量が地域内需要を上回る場合、EVや蓄電池を充電して需要を増やし、上位系統への逆流を抑制する。これにより、系統増強が完了するまでの再生可能エネルギーの接続制限を緩和することが検討されている。
NEDOでは、2022~2024年度にシステム開発・実証を実施している。主な内容は以下のとおりである。
改正電気事業法の施行により、特定区域で、一般送配電事業者の送配電網を活用して新たな事業者が配電事業を行う制度が開始された。
配電事業者は、AI・IoTや分散型リソースを活用し、区域内の系統を運用することが想定されている。
これにより、災害時の電力供給継続、街区のレジリエンス強化、設備運用の高度化、設備のダウンサイジング、メンテナンスコスト削減が期待されている。
今後は、分散型リソースの価値を発掘・評価し、既存の電力系統と連携させるため、次の事項を重点的に検討する。
検討会は、各種審議会等と連携しながら、事業者等のプレゼンテーションやヒアリングも踏まえて個別論点を検討する方針である。資料では、2022年11月から2023年3月にかけて4回程度の検討会を開催する予定が示されている。
全体として本資料は、分散型リソースを電力市場で活用するための計量・制度面の整備と、配電系統の安定運用に活用するための技術・制度面の検討を並行して進める方向性を示したものである。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「本検討会の今後の進め方について」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_bunsan/index.html)をもとに当社作成
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