本資料は、需要側リソース(DSR:Demand Side Resources)が、系統周波数の変動に応じて電力需要を短時間で調整する能力、すなわち調整力としてのポテンシャルを評価したものである。
対象設備は、以下の3サイトである。
| サイト | 対象設備 |
|---|---|
| 米倉山サイト | PEM形水電解設備 |
| 徳山サイト | 食塩電解設備 |
| 川崎サイト | 産業ガス用空気圧縮機 |
主な評価項目は以下のとおりである。
調査は、主に以下の2段階で実施された。
データ取得・分析
調整方法の検討
手動テストでは、周波数変動幅に応じて、設備の電力を以下のように調整するケースを想定した。
| ケース | 想定周波数変動幅 | 電力調整幅 |
|---|---|---|
| 1 | +15 mHz | +7.5% Rp |
| 2 | −15 mHz | −7.5% Rp |
| 3 | +50 mHz | +25% Rp |
| 4 | −50 mHz | −25% Rp |
| 5 | +200 mHz | +100% Rp |
| 6 | −200 mHz | −100% Rp |
| 項目 | R1基準 | R2基準 |
|---|---|---|
| 遅れ時間 | 2秒以内 | 2秒以内 |
| 目標50%までの応動時間 | 15秒以内 | ― |
| 目標100%までの応動時間 | 30秒以内 | 5分以内 |
| 継続時間 | 15分以上 | 30分以上 |
| 調整出力最大時の周波数変動幅 | 200 mHz | 200 mHz |
なお、徳山サイトについては、応動時間との関係を踏まえ、10秒応動、30秒応動などの条件別に調整可能幅が推定されている。
テスト時に稼働していた水電解槽全体の電力は130 kWであった。この電力を基準に、最大で±100%の調整を行った。
| ケース | 負荷変動割合 | 電力調整幅 | 水電解槽電力 |
|---|---|---|---|
| ベース | ― | ― | 130 kW |
| +7.5% | +7.5% | +9.75 kW | 139.75 kW |
| −7.5% | −7.5% | −9.75 kW | 120.25 kW |
| +25% | +25% | +32.5 kW | 162.5 kW |
| −25% | −25% | −32.5 kW | 97.5 kW |
| +100% | +100% | +130 kW | 260 kW |
| −100% | −100% | −130 kW | 0 kW |
米倉山サイトでは、R1仕様への適合が確認された。機器点、受電点のいずれにおいても、短時間で電力を調整し、その状態を継続できた。
| 条件 | 計測地点 | 安定性 | 調整幅 | 継続時間 | 遅れ時間 | 応動時間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| +15 mHz | 機器点 | 良好 | +4.9 kW | 20分 | 0.2秒 | 0.2秒 |
| +15 mHz | 受電点 | 40 kW程度 | +9.8 kW | 20分 | 0.2秒 | 0.2秒 |
| +200 mHz | 機器点 | 良好 | +65 kW | 20分 | 0.2秒 | 0.2秒 |
| +200 mHz | 受電点 | 良好 | +130 kW | 17分 | 0.2秒 | 0.3秒 |
例えば、受電点では、200 mHzの条件に対して約200ミリ秒で130 kWを調整している。
米倉山サイトでは、水電解設備がサイトの受電電力の大部分を占めている。そのため、他設備の電力変動による影響が比較的小さく、機器点・受電点の双方で調整効果を計測しやすい。
資料では、以下の点が示されている。
| 計測地点 | R1 | R2 |
|---|---|---|
| 受電点 | 750 kWまたは±1.5 MWが可能 | 750 kWまたは±1.5 MWが可能 |
| 機器点 | 750 kWまたは±1.5 MWが可能 | 750 kWまたは±1.5 MWが可能 |
食塩電解設備のベース電力は30.03 MWであった。
| ケース | 電力調整幅 | 負荷変動割合 | 電解槽電力 |
|---|---|---|---|
| ベース | ― | ― | 30.03 MW |
| +7.5% | +0.39 MW | +7.6% | 30.42 MW |
| −7.5% | −0.39 MW | −7.6% | 29.65 MW |
| +25% | +1.37 MW | +26.5% | 31.40 MW |
| −25% | −1.33 MW | −25.7% | 28.70 MW |
| +100% | +5.42 MW | +105% | 35.45 MW |
| −100% | −5.16 MW | −100% | 24.87 MW |
徳山サイトでは、R1仕様への適合が確認された。ただし、受電点では他の生産設備の電力変動が大きく、特に小さな調整幅を評価することが困難であった。
| 条件 | 計測地点 | 安定性 | 調整幅 | 継続時間 | 遅れ時間 | 応動時間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| +15 mHz | 機器点 | 良好 | +300 kW | 17分 | 25秒 | 58秒 |
| +15 mHz | 受電点 | ノイズ大 | 評価困難 | 17分 | 25秒 | 58秒 |
| +200 mHz | 機器点 | 良好 | +5.6 MW | 19分 | 18秒 | 16分25秒 |
| +200 mHz | 受電点 | 良好 | +5.6 MW | 19分 | 18秒 | 16分25秒 |
食塩電解設備の負荷応動性は直線的であり、応動時間を長く設定すれば、より大きな調整幅を確保できることが示されている。
| 評価条件 | 機器点での調整可能幅 |
|---|---|
| R1、10秒応動 | 100 kW程度 |
| R1、RTE基準の30秒応動 | 300 kW程度 |
| R2 | 2.3 MW程度 |
食塩電解設備自体の電力変動はほぼないが、サイト内には多数の生産設備があり、それらの電力変動が大きい。このため、受電点では食塩電解設備による調整効果を把握しにくい。
評価結果は以下のとおりである。
| 計測地点 | R1 | R2 |
|---|---|---|
| 受電点 | 実施に課題 | 実施に課題 |
| 機器点 | 300 kW程度で可能性あり | 2.3 MWが可能 |
空気圧縮機のベース電力は3.225 MWであった。
| ケース | 電力調整幅 | 負荷変動割合 | 空気圧縮機電力 |
|---|---|---|---|
| ベース | ― | ― | 3.225 MW |
| +7.5% | +28.13 kW | +7.5% | 3.253 MW |
| −7.5% | −28.13 kW | −7.5% | 3.197 MW |
| +25% | +93.75 kW | +25% | 3.319 MW |
| −25% | −93.75 kW | −25% | 3.131 MW |
| +100% | +375 kW | +100% | 3.6 MW |
| −100% | −375 kW | −100% | 2.85 MW |
川崎サイトでは、機器点・受電点の双方でノイズが大きく、R1仕様への適合を確認できなかった。
| 条件 | 計測地点 | 安定性 | 調整幅 | 継続時間 | 遅れ時間 | 応動時間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| +15 mHz | 機器点 | ノイズ大 | +25 kW | 評価困難 | 評価困難 | 評価困難 |
| +15 mHz | 受電点 | ノイズ大 | 評価困難 | 評価困難 | 評価困難 | 評価困難 |
| +200 mHz | 機器点 | ノイズ大 | +300 kW以上 | 17分 | 3分 | 19分 |
| +200 mHz | 受電点 | ノイズ大 | +280 kW以上 | 17分 | ― | 評価困難 |
川崎サイトでは、空気圧縮機自体にも電力変動があり、さらにサイト内の他の生産設備による電力変動も大きい。そのため、機器点・受電点のいずれでも、空気圧縮機による調整効果を明確に計測することが難しかった。
また、応動性は直線的で、一般的な設備と比べれば応動速度は高いとされたものの、以下の課題が確認された。
| 計測地点 | R1 | R2 |
|---|---|---|
| 受電点 | 実施に課題 | 実施に課題 |
| 機器点 | 実施に課題 | 実施に課題 |
| サイト | 対象設備 | 機器点での評価 | 受電点での評価 | 主な課題 |
|---|---|---|---|---|
| 米倉山 | PEM形水電解 | R1・R2とも供出可能 | R1・R2とも供出可能 | 今回は縮小した調整幅でテスト |
| 徳山 | 食塩電解 | R1では300 kW程度、R2では2.3 MW程度の可能性 | ノイズの影響が大きく実施に課題 | 他の生産設備による電力変動 |
| 川崎 | 空気圧縮機 | R1・R2とも実施に課題 | R1・R2とも実施に課題 | ノイズ、応動速度、他設備の影響 |
全体として、水電解設備は機器点・受電点の双方で高速調整力として評価しやすい一方、食塩電解設備と空気圧縮機では、サイト内の他設備や設備自身の電力変動が、受電点での評価を難しくしている。
DSRの調整量を評価するには、調整を実施しなかった場合の需要電力を示す**ベースライン(BL)**が必要である。
現行ルールでは、BLはブロック時間の5分前からの平均値とされている。
しかし、この方法では、実需給時点の実際の受電量とBLとの間に乖離が生じる可能性がある。その結果、指令された調整分に加えて、通常の需要変動分まで調整する必要が生じる可能性がある。
機器点で計測する場合には、以下の課題がある。
資料では、実需給に近いBLを設定するため、周波数の傾向分析を踏まえて、BL設定の選択肢を増やす方向が示されている。
周波数変動の分析では、周波数の周期は1回当たり3~4分程度と推定された。
| 検討事項 | 資料で示された内容 |
|---|---|
| 計測間隔 | 周波数周期より短い間隔では、周波数変動に対するリソースの応動方向が正しくならないリスクがあるため、周期より長い間隔が必要 |
| 平均値か瞬時値か | 瞬時値では、実需給時点の周波数と異なる場合があり、補正が必要 |
| 追加のBL候補 | 現行のBLに加え、実需給5分前の平均値を採用することを検討 |
資料の検討方向は、できるだけ簡易な方法でBLを設定し、実需給直前の値を用いることで、より多くのDSRを安価に活用することである。
資料では、以下の方向性が示されている。
本調査では、DSRの調整力としての適性は設備の種類だけでなく、サイト内の他設備による電力変動、計測地点、応動時間、ベースライン設定に大きく左右されることが確認された。
特に、米倉山のPEM形水電解設備では高速かつ安定した調整が確認された。一方、徳山の食塩電解設備では、機器点であれば応動時間に応じた調整力の供出可能性が示された。川崎の空気圧縮機では、ノイズと応動速度が主な制約となった。
したがって、DSRの活用拡大に向けては、設備ごとの性能評価に加え、受電点・機器点の計測方法、BL設定の柔軟化、30秒応動の商品化、複数リソースの組合せといった制度面の検討が重要な論点となっている。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「第6回 次世代の分散型電力システムに関する検討会:需要側リソース(DSR)のポテンシャル評価について」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_bunsan/index.html)をもとに当社作成
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