本資料は、資源エネルギー庁が開催した「次世代の分散型電力システムに関する検討会」の中間とりまとめ(案)である。検討会での議論を踏まえ、今後、座長と相談の上で加筆・修正し、最終版として公表する予定である。
検討の目的は、2050年カーボンニュートラルの実現と電力の安定供給を両立することである。そのため、EV、蓄電池、太陽光発電、エアコン、給湯器、生産設備などの分散型リソースを、従来の自家消費や非常用電源にとどめず、電力市場や配電系統の運用にも活用する方向が示されている。
検討の柱は、次の3点である。
| 検討の柱 | 主な内容 |
|---|---|
| 分散型リソースの価値発掘 | EVやDRなどが、系統全体や配電系統にどのように貢献できるかを整理する |
| 分散型リソースの価値評価 | 機器個別計測や低圧リソースの市場参加を通じ、調整力等の貢献量をどのように評価するかを検討する |
| 分散型電力システムの構築 | 分散型リソースを活用した高度な配電系統運用や、関係者間の取引・情報連携の仕組みを検討する |
家庭用蓄電池やEVなどの低圧リソースは、これまで主として以下の用途で活用されてきた。
今後は、これらに加えて、次のような複数の価値を一つのリソースから引き出すマルチユースが想定されている。
その実現には、単に機器を導入するだけでなく、データ取得、通信方式、計測方法、市場ルール、契約、精算、費用負担を一体的に整備する必要がある。
家庭用蓄電池、エネファーム、EVなどの低圧リソースは、実証を通じて、複数のリソースを束ねることで需給調整市場の要件に技術的に対応できる可能性が示されている。
一方、現時点では低圧リソースの需給調整市場への参加は認められていない。今後の家庭用蓄電池やEVの普及を踏まえ、低圧リソースを市場で活用するための制度設計が課題となっている。
検討されている主な論点は以下である。
資料では、理想的な条件の下で低圧リソースが需給調整市場に参加した場合、アグリゲーターや需要家に便益が生じると整理している。
また、2030年時点で低圧リソースの10%が参加した場合、三次調整力の調達費用について年間18億円の削減効果が確認されたとしている。
| 分析項目 | 内容 |
|---|---|
| 低圧リソースの参加割合 | 2030年時点で10% |
| 効果 | 三次調整力の調達費用を年間18億円削減 |
| 効果の対象 | 一般送配電事業者 |
このほか、低圧リソースの市場参加によって、以下の効果が期待されている。
大量の低圧リソースを個別に登録・管理することには、運用上の負担がある。このため、アグリゲーターから、複数の低圧需要家を一つの需要家群として扱う**「群管理」**の手法が提案されている。
群管理では、低圧需要家群をリスト・パターン上の一つのリソースとみなす。これはBG化を目的とするものではない。家庭用蓄電池を例とした場合はネガポジ型となるが、ポジット、すなわち発電BGとの組合せについては別途検討が必要である。
現行制度では、需要家側リソースが需給調整市場に参加する際、原則として受電点計測が求められている。
しかし、受電点の計測値には、制御対象である蓄電池やEV以外の負荷、太陽光発電の出力変動なども含まれる。そのため、制御対象の機器が実際に供出した調整力を把握しにくく、蓄電池等の能力を十分に活用できない場合がある。
機器個別計測とは、需要場所全体の受電点ではなく、以下のような機器点ごとに電力量を計測し、調整力供出量を把握する仕組みである。
機器個別計測の導入により、分散型リソースの潜在能力をより適切に市場で評価できる可能性がある。
機器個別計測では、リソースの種類によって計量値の扱いが異なる。
| リソース | 調整力の把握方法 | 受電点計量値の補正 |
|---|---|---|
| 発電・放電リソース | 機器点の計画値・基準値との差分で把握 | 調整力供出分を二重計上しないため、補正の考え方が必要 |
| 需要抑制リソース | 機器点の基準値と実測値との差分で把握 | 物理的な受電点計量値の補正は不要 |
発電・放電リソースでは、調整力として供出した電力量を、外部への販売や構内の自家消費にも重複して計上することはできない。そのため、調整力供出分について補正の考え方が必要となる。
一方、需要負荷を抑制する場合には、調整力供出分を外部販売や自家消費に重ねて計上する関係がない。そのため、受電点の物理的な計量値を補正せず、機器点の基準値との差分で調整力を把握する整理である。
資料では、発電・放電リソースについて、対象となる1需要場所単位で調整力契約を設定する方向が示されている。
発電量調整供給契約を用いる案も検討されたが、受電点計量値を補正すると、以下の影響が生じる可能性がある。
このため、受電点の計量値そのものは補正せず、発電・放電リソースの調整力供出によって生じる小売電気事業者の便益を、別途**「調整金(仮称)」**で調整する方向が主眼となっている。
ただし、調整力供出によって受電点で逆潮流している場合は、小売販売量がゼロから変わらないため、調整金の対象外とされている。
需要抑制リソースについては、従来のネガワット調整金を適用することが望ましいと整理されている。
機器個別計測では、同じ需要場所に次の2種類の計量点が存在する。
資料では、原則である「1需要場所・1引込・1契約・1計量」の考え方を維持し、機器点について新たな託送供給契約を締結しない整理を示している。
| 計量点 | 契約・精算の扱い |
|---|---|
| 受電点 | 接続供給契約に基づき、従来どおり託送料金を精算する |
| 機器点 | 調整力契約に基づき、調整力供出量を精算する |
| 契約関係 | 接続供給契約と調整力契約が併存する |
| 需要場所 | 「1需要場所」の定義は変更しない |
なお、常時逆潮流しているなど、受電点ですでに発電量調整供給契約が設定されている場合は、別途整理が必要である。
異なる需要家に設置された複数の機器を、アグリゲーターが束ねて需給調整市場に参加する場合には、次の点を整理する必要がある。
高圧受電の需要場所では、受電点と機器点の間に変圧器がある場合がある。機器点から系統へ調整力を供出すると、機器点で計測した供出量と、受電点で実際に系統へ貢献する量が異なる可能性がある。
例えば、機器点で100kWを供出し、変圧器損失が10kWの場合、受電点換算値は90kWとなる。
変圧器ロスの扱いについて、資料では次の3案を示している。
| 案 | 入札 | 約定 | 精算 |
|---|---|---|---|
| 案1 | 機器点計測値 | 機器点計測値 | 機器点計測値 |
| 案2 | 機器点計測値 | 受電点換算値 | 受電点換算値 |
| 案3 | 受電点換算値 | 受電点換算値 | 受電点換算値 |
今後、以下を踏まえて検討することとしている。
複数の機器点の計量値を束ねて取引する場合、個々の計量器の誤差が問題となる。
資料では、まずは使用公差3%以内の特例計量器をアグリゲートの対象とする方向が示されている。複数の計量器を束ねた値の精度を評価する際には、以下の条件が論点となる。
また、アグリゲーターによる統計処理、一般送配電事業者・広域機関によるデータ確認、データ提出・管理方法なども今後の検討課題である。
機器個別計測については、システム改修が順調に進むことを前提として、2026年度からの開始を目指すとしている。
今後は、次の事項を整理する。
また、一次調整力については、現行ルール上、需給調整市場に基づくkWh精算を行わないことから、調整金が不要または簡素化できる可能性がある。この点を踏まえ、二次調整力・三次調整力に先行して、一次調整力への機器個別計測の適用可能性を検討する方向である。
EVは蓄電池を搭載しているため、移動手段であるだけでなく、電力システムに接続された分散型リソースとしての活用が期待されている。
| 分野 | 電力システム上のニーズ | EV・PHEVの貢献可能性 |
|---|---|---|
| 系統 | 需給バランスの確保 | 充放電による調整力、ピークシフト |
| 配電 | 電圧調整、混雑緩和、設備増強回避 | 充放電制御による電圧調整・混雑緩和 |
| 小売 | 電力調達のインバランス回避 | 充放電時間のシフト |
| 需要家 | 電気料金削減、レジリエンス | 充電時間の変更、災害時の非常用電源 |
具体的には、以下のような活用が想定されている。
EVは充電・放電のタイミングを制御することで、電力需給の調整に貢献できる。
一方、EVの需給調整市場での活用は実証段階であり、以下の課題がある。
このため、郵便配達車、宅配車、バス、公共車両など、運行時間や充放電可能時間を把握しやすい車両の活用が有効であるとの意見が示されている。また、土日に利用されない高所作業車などを蓄電池として活用する方向性も示された。
EVや充電器の普及により、以下の系統影響が想定されている。
対応策として、次の方向性が示されている。
ただし、接続ルールを厳しくすると、充電器の設置コストが増加し、EVの利便性が損なわれる可能性がある。そのため、EVを保有する需要家にもメリットとなる料金施策を併せて検討する必要がある。
EVを電力システムで活用するには、車両情報や充電器情報の取得が重要である。しかし、以下の課題が指摘されている。
このため、データ取得方法、通信方式、充放電制御方法等のルール整備・統一が必要である。
EVと電力システムの統合に向け、次年度に「EVグリッドワーキンググループ(仮称)」を設置する予定である。
検討対象は以下である。
参加者として、次の関係者が想定されている。
事務局は、資源エネルギー庁、製造産業局自動車課、産業技術環境局国際電気標準課が担う予定である。
改正省エネ法では、従来の電力需要の平準化から、再エネ余剰時や需給ひっ迫時も含めた**「電気の需要の最適化」**へと考え方が広げられている。
対象となるDRは、次の2種類である。
| DRの種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 上げDR | 電気の需要を増やす | 再エネ余剰時に需要機器を稼働させる、蓄電池を充電する |
| 下げDR | 電気の需要を減らす | 需給ひっ迫時に需要機器の出力を下げる |
この制度により、一定規模以上の需要家にDRの取組が浸透し、エアコン、給湯器、蓄電池、EV充電器等のDR Ready化や、アグリゲーター等の事業拡大が期待されている。
特定事業者等の約1万2千者を対象に、DRへの関心を高めることを目的として、簡便な報告を求める仕組みが検討されている。
報告対象には、以下が含まれる。
DRを実施していない場合は「ゼロ」と報告する。
一方、「電気の需要の最適化」に反するDRはカウントしない。
| 状況 | カウントしないDR |
|---|---|
| 広域予備率が5%未満の時間帯 | 上げDR |
| 再エネ出力制御時 | 下げDR |
証憑については、通常は簡便な報告とし、内容に疑義がある場合に、DR指令メール等の証拠書類や合理的な説明を求める考え方である。
単純な前年比較ではなく、設備や需給構造が類似する業種ごとに、DR実施日数の最大値、最小値、平均値等を公表する案が示されている。日数だけでなく、DRの質、実施の信頼性、証憑との整合性も考慮する。
高度なDRについては、事業者の取組を適切に評価し、国がDRの活用状況を政策検討に活用するため、一定程度定量的な報告を求める仕組みが検討されている。
評価単位はDRの種類によって異なる。
| DRの種類 | 評価単位 |
|---|---|
| 経済DR、電源Ⅰ等 | ベースラインと実際の使用量との差分であるDR実施量(kWh) |
| 需給調整市場DR | 約定したΔkW×時間 |
下げDRのベースラインには、ERABガイドラインに定められた**High 4 of 5(当日調整あり)**を用いる案が示されている。上げDRについては、High 4 of 5(当日調整あり・なし)等が望ましい方法として示され、同等日採用法、代替ベースライン、対前年同月比、アグリゲーターの需要計画・需要予測も想定されている。
下げDRと上げDRは目的が異なるため、区別して評価する。また、業種ごとにDR量や需給調整市場の約定量の最大値、最小値、平均値を公表する案である。
太陽光発電やEVの普及、電化の進展により、配電系統では次の課題が顕在化する可能性がある。
従来の対応は、配電設備の増強や再エネの出力抑制が中心であった。これに加えて、EVや蓄電池等のDERを適切なタイミングで制御し、混雑緩和や電圧調整に活用する選択肢が検討されている。
| 取組・構想 | 主体 | 内容 |
|---|---|---|
| DERフレキシビリティ | NEDO | 配電用変電所の混雑に対し、蓄電池等のDERによる上げDRで混雑を緩和する |
| 分散エネルギー取引市場 | 東京電力パワーグリッド | 配電エリア内の発電と需要をマッチングし、kWh、ΔkW、kW等の価値を取引する |
| 配電系統の次世代化 | 関西電力送配電 | IT開閉器や次世代スマートメーターにより、配電系統の状態を精緻に把握する |
分散エネルギー取引市場では、混雑状況を踏まえた価格シグナルによって、発電・需要側の自律的な行動を促す構想が示されている。
NEDOの実証は、配電用変電所の混雑を対象とし、配電線以下に接続されたDERを用いた上げDRによって混雑を緩和するものである。
実現には、一般送配電事業者のシステムとアグリゲーターのシステムを接続する情報プラットフォームが必要となる。実証では、次の事項を行う。
2024年度からの先行的な取引開始を目指して取組を進めるとしている。
配電系統でDERを活用するには、以下の論点を整理する必要がある。
配電事業ライセンスにより、一定区域で配電事業者が一般送配電事業者の送配電網を活用し、AI・IoTやDERを用いて系統運用することが制度上可能となっている。災害時に特定区域の配電網を切り離して独立運用することによるレジリエンス確保も期待されている。
資料では、DERの普及状況、技術課題、費用対効果を踏まえ、次のように段階的に活用を進める方向が示されている。
将来像では、基幹系統、ローカル系統、配電系統が連携し、以下の関係者・設備が相互に接続される。
このシステムでは、リソースの規模や特性に応じて、需給調整、配電系統運用、レジリエンス等の用途を使い分けることが想定されている。
| 取組 | 時期・目標 |
|---|---|
| DR実施回数の報告 | 2023年度分から |
| 高度なDR実績の報告 | 2024年度分から |
| DERフレキシビリティの先行的取引・フィールド実証 | 2024年度までを目標、資料上は2024年度からの取引開始を目指す |
| 低圧リソースの需給調整市場参加 | 2026年度からを目標 |
| 需給調整市場での機器個別計測 | 2026年度からを目標 |
| EVグリッドワーキンググループ(仮称) | 次年度に設置予定 |
| 国内新車販売の電動車化 | 2035年に全数を目指す方針 |
低圧リソースの市場参加や機器個別計測の開始時期は、システム改修が順調に進むことを前提とした目標である。
本資料は、EV、蓄電池、太陽光発電、エアコン、給湯器等の分散型リソースを、電力システムの複数の場面で活用するための制度・技術・市場設計を整理したものである。
中心的な方向性は以下のとおりである。
全体として、分散型リソースを個別の機器やサービスとして扱うのではなく、アグリゲーター、送配電事業者、小売電気事業者、需要家、自動車・機器メーカー、データ事業者等が連携し、電力システム全体で活用する方向が示されている。
※AI生成。詳細は原文PDFをご確認ください。
出典:
「次世代の分散型電力システムに関する検討会 中間とりまとめ (案)」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_bunsan/index.html)をもとに当社作成
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