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再エネ出力制御はなぜ起きるのか──優先給電ルールと遠隔制御が発電事業者の収益を左右する仕組み

再エネ出力制御は「下げ調整力が尽きた時、優先給電ルールに沿って前日計画段階で実施される最後の需給調整手段」である1。制御量を左右するのは自社の発電性能ではなく、遠隔制御への対応可否と連系線・揚水の運用条件であり、オンライン化は制御量低減効果が明らかとされている2。
12 件参照

この記事でわかること

  • 自社電源が出力制御を受ける確率を、下げ調整力・連系線運用・遠隔制御対応の3要因から評価できる
  • オンライン制御対応(遠隔出力制御機能の具備)への投資を、制御量低減効果と照らして判断できる
  • 蓄電池併設やFIP転換により、制御リスクを収益機会へ転換できるかを検討できる

再エネ出力制御は「下げ調整力が尽きた後」に前日計画段階で発動する

再エネ出力制御とは、電力系統の需要に対して供給が過剰になる時間帯に、送配電事業者(TSO)が再エネ発電設備の出力を抑制する運用である。重要なのは、これが恣意的な措置ではなく、需給調整の手順の最後段に位置づけられている点である。

需給調整市場検討小委員会の整理によれば、優先給電ルールに基づく再エネ出力制御は前日計画段階で行われ、TSOが調整力として予備を確保していない電源の出力制御が実施される1。つまり、まず需給調整市場での約定処理により下げ調整力が手当てされ、それでも下げ余力が不足する場合に再エネ制御へ進む。

下げ調整力不足時の処理フローは、需給調整市場における約定処理(最大60分)→長周期広域周波数調整(約30分+α)→再エネ制御量等算出(最大60分)→制御指示(最大30分)という順序で構成される1。再エネ制御量は、上流工程である市場約定と広域融通の結果を受けて初めて確定する従属変数であり、発電事業者から見れば自社の努力の外側で決まる部分が大きい。

また、下げ調整力は2024年度以降、余力活用契約を通じて確保される見込みとされ、再エネ抑制は各エリアで実施され特に昼間帯の需給バランスが課題になっていると整理されている2。制御が発生する時間帯が昼間帯に集中するという構造は、太陽光発電にとって直接的な収益逸失を意味する。

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制御を招く根因は「下げ代不足」と「系統制約」という二つの物理的限界

前章で見た手順の最後に再エネ制御が来るのは、その手前で吸収しきれない過剰供給が構造的に増えているためである。調整力及び需給バランス評価等に関する委員会は、再エネ導入量の増加に伴う課題として次の3点を整理している3。

  • 系統安定性の不足:非同期電源の増加と同期電源の減少
  • 系統制約の発生:軽負荷時の送電線容量超過や系統接続工事の大型化
  • 上げ代・下げ代の不足:調整力必要量の増加と調整力電源の減少

出力制御に直結するのは後者2つである。軽負荷期(春秋の休日昼間など)は需要が小さい一方で太陽光出力が最大化し、火力の最低出力と揚水のくみ上げ余力を使い切ってなお供給が余る。同時に送電線容量の制約が重なると、余剰電力を他エリアへ送ることもできない。

さらに調整力電源そのものが減少している点が、下げ代不足を慢性化させる。同委員会は2020年度供給計画に基づく再エネ設備容量の想定として太陽光約7,700万kW、風力約11,300万kWという数字を挙げ、日本が太陽光導入量で世界第3位、再エネ導入量で第6位に位置すると整理している3。導入量が積み上がるほど、同じ需要水準に対する昼間の余剰は拡大する。

これらの技術的課題への対応策や費用対効果の検討は現在も委員会で継続しており3、系統事故時のインバータ電源の運転停止リスクを踏まえたFRT要件の見直しも2030年・2050年を想定したシミュレーションを行いながら検討が進められている段階である4。制御の根因は短期に解消される性質のものではないと考えられる。

オンライン制御対応の有無が、同じ系統内でも制御量の差を生む

根因が構造的である以上、発電事業者が動かせる変数は「制御されたときにどれだけ損失を小さくできるか」に移る。ここで決定的なのがオンライン(遠隔)制御への対応である。

グリッドコード検討会は、オフライン制御を行う発電事業者は前日指令に基づいて出力制御を実施するため、実需給に柔軟に応じることが困難であると指摘している5。前日指令方式では、実需給断面で需要が上振れして制御が不要になっても抑制が解除されず、必要以上の発電量を失うことになる。

同検討会は「発電出力の遠隔制御」について、対象電源種を太陽光・風力、対象容量を10kW未満を含む全容量として検討し、発電側対策は費用が発生せず出力制御低減効果は明らかであり、発電事業者間の公平性確保に資すると評価している5。系統側の対策は現時点では必要ないとされた。技術面ではJEMAが太陽光は現行の出力制御仕様に対応済みで費用増加の懸念はないとの意見を示す一方、JPEAは産業系PVシステムでは潮流モニタの開発が必要とし、自家消費分を除外すれば10kW未満の対象化にも障壁はないとしている5。

既設への遡及適用は行わないとされ、オフライン事業者のオンライン化を推奨する流れが継続するという整理である5。つまり既設のオフライン電源は制度上直ちに違反となるわけではないが、放置すればオンライン電源との間で制御量の差が拡大し続ける構図となる。系統連系技術要件への反映についても、低圧・高圧・特別高圧の区分ごとに出力抑制機能や電圧変動対策の要件が示され、高圧・特別高圧ではより厳しい要件が設定されている6。

連系線と揚水の運用改善は制御量を減らすが、効果は年度で大きく振れる

オンライン化が事業者側の対策だとすれば、系統側では連系線の運用容量拡大と揚水の活用が制御量を左右する。ただしその効果は一定ではない。

連系線については、中国四国間連系線の運用容量を2回線運用時に120万kWから145万kWへ引き上げる方向性が示され、東北東京間連系線では再エネ出力制御システムを活用して約30万kWの電制量を確保する計画が議論されている7。ここでは再エネオンライン制御の拡充と他連系線への展開が求められており、事業者側のオンライン化が系統側の容量拡大の前提条件にもなっている点が重要である。

一方、効果の変動幅は無視できない。中国九州間連系線(中国向)では、翌日BGポンプ計画を織り込んで運用容量を拡大する対策案③が実施されているが、拡大可能な運用容量は2024年度の2,834万kWhから2025年度は241万kWhへ、実際に拡大した運用容量は637万kWhから73万kWhへと減少した8。再エネ抑制量の削減効果は確認されたものの、2025年度の効果は前年度から大きく縮小しており、2026年度以降の対応は対策案③の継続と対策案①(翌々日BGポンプ計画の48点化)の有効性検討を並行する形で議論が続いている8。

揚水については、2024年度からバランシンググループ(BG)が運用主体となり、ポンプアップの電気を自ら調達する整理となっている9。中部エリアでは2026年度の調達ポートフォリオを市場:揚水随契:余力=40:40:20とし、調達単価を2.2〜3.2円程度/ΔkW・hと試算している10。揚水のくみ上げ余力がどのモードで確保されるかは、昼間帯の下げ代の厚みを通じて再エネ制御量に跳ね返ると考えられる。

制御リスクを収益機会へ転換する経路は蓄電池併設と市場統合にある

ここまでの3つの要因(下げ代不足、遠隔制御対応、連系線・揚水運用)を踏まえると、発電事業者の選択肢は「制御を避ける」から「制御される前提で収益構造を組み替える」へ移る。

需給調整市場検討小委員会は、変動性再エネの調整機能について、太陽光・風力はインバータ制御により精緻な応動や出力調整が可能である一方、天候により調整力供出量が不確実になると整理している。これに対し蓄電池を併設した変動性再エネは、天候の影響を蓄電池で補完することで安定的に供出できると位置づけられている11。

制度面では、現行制度でFIT電源による調整力の需給調整市場への参入は認められておらず、FIP電源や非FIT電源は市場で利用可能とされ、その制度検討が進められている11。制御リスクを緩和したい事業者にとって、FIP転換と蓄電池併設は同じ方向を向く選択肢である。

ただし蓄電池側にも新たな要件が加わりつつある。蓄電池の接続検討受付は2025年6月末時点で約14,300万kW、契約申込は約1,800万kWに達し、市場価格に応じて一斉に出力変化した場合の周波数・電圧・保護リレー不要動作への影響が評価されている12。特に出力変化速度が100%/5秒以上の場合に保護リレー不要動作のリスクが増加するとされ、出力変化速度上限の設定機能を具備する対策案が検討されている(設定変更範囲は1/分〜100/秒の案、詳細は今後検討)12。この検討は現在も継続中であり、併設蓄電池の設計仕様に影響し得る。

以下は、自社案件の制御リスクを点検する際の判断軸である。

判断項目確認条件判断への示唆
遠隔(オンライン)制御化への投資自社電源がオフライン制御で前日指令のみに従う運用か5オフラインのままでは実需給断面の柔軟対応ができず制御量が過大化。制御低減効果は明らかとされ、残存年数が長い案件ほど投資優先度が高い
制御率の前提置き直し該当エリアの連系線運用容量拡大策の年度別実績(例:中国九州間で2024年度637万kWh→2025年度73万kWh)8改善策の効果は年度変動が大きい。単年好実績を恒久前提にせず、収支はレンジ評価とする
蓄電池併設の可否FIT/FIP/非FITの別と、需給調整市場への調整力供出可否11FITのままでは調整力収益を取れない。FIP転換とセットで併設を評価する
併設蓄電池の出力変化速度仕様設定変更範囲・粒度の要件化が継続検討中か12要件確定前でも設定変更可能な機器を選定し、後付け改修コストを回避する
制御発生時間帯の想定昼間帯の下げ調整力不足が主因となっているか2太陽光は逸失が集中。蓄電池充電や需要シフトによる自家消費拡大の価値が相対的に高まる
Key Points·立場別に見る実務ポイント

発電事業者(太陽光・風力)

  • 既設オフライン電源について、遡及適用は行われない一方でオンライン化推奨が継続する前提5に立ち、残存耐用年数と想定制御量から遠隔制御化の投資回収年数を試算する。産業系PVは潮流モニタの追加が必要になる可能性を見込む5
  • 連系線運用改善の効果が年度で大きく振れる実績8を踏まえ、収支計画では制御率を単年実績ではなく複数年のレンジで置く
  • FIP転換を検討する案件では、需給調整市場でFIT電源が調整力供出できない制約11を踏まえ、市場統合後の収益源を制御時間帯と非制御時間帯に分けて評価する

蓄電池・DR事業者

  • 併設蓄電池の仕様検討では、出力変化速度上限に関する規定値案(設定変更範囲1/分〜100/秒、保護リレー不要動作リスクは100%/5秒以上で増加)が継続検討中である点12を織り込み、設定変更の柔軟性を確保した機器選定を行う
  • 昼間帯の下げ調整力不足が制御の直接要因である2ことから、充電(下げ)方向の価値を軸に案件を組成し、揚水随契の調達単価2.2〜3.2円程度/ΔkW・hという試算水準10を競合ベンチマークとして置く

まず行うこと

  1. オンライン制御対応状況の棚卸し 保有全電源をオンライン/オフライン別に整理し、オフライン電源について遠隔制御化の概算費用と残存耐用年数を突き合わせ、投資判断の優先順位を確定する
  2. 制御率前提のレンジ化 立地エリアの連系線運用改善策の年度別実績を確認し、事業計画の出力制御率を単年実績ではなく上下シナリオで再設定する
  3. FIP転換・蓄電池併設の同時評価 FIT電源が需給調整市場で調整力を供出できない制約を前提に、制御時間帯の逸失電力量を充電で吸収した場合の収益改善幅を試算する

監視する指標

  • 下げ調整力の確保状況 余力活用契約や揚水随意契約による下げ代確保量が縮小すれば、再エネ制御の発生頻度が上振れする
  • 連系線運用容量の拡大実績 中国四国間・東北東京間などの運用容量拡大の実効値が計画を下回る場合、エリア内での制御吸収が必要になる
  • 遠隔制御要件の適用範囲 対象電源種・対象容量(10kW未満を含むか)や遡及適用の扱いが変われば、既設電源の改修義務が発生し得る
  • 蓄電池の出力変化速度要件の確定 設定変更範囲・粒度の規定値が確定した時点で、併設蓄電池の機器仕様と調達計画を見直す
  • FRT要件見直しの帰結 インバータ電源のFRT要件が強化されれば、既設再エネのPCS改修コストが新たに発生する可能性がある

参考文献

  1. 1.
    系統連系技術要件への反映
    電力広域的運営推進委員会2024/07/31PDF
  2. 2.
    揚水発電所の運用および揚水随意契約について
    電力・ガス取引監視等委員会2026/02/20PDF
  3. 3.
    個別技術要件検討「発電出力の遠隔制御」
    電力広域的運営推進委員会2021/04/21PDF
  4. 6.
    変動性再エネの調整機能の活用について
    電力広域的運営推進委員会2024/09/10PDF
  5. 10.
    下げ調整の扱いについて
    電力広域的運営推進委員会2023/08/17PDF
  6. 11.
    中部エリアにおける2026年度の揚水随意契約について
    電力・ガス取引監視等委員会2026/03/30PDF

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