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系統用蓄電池とは何か──定義・役割・電力市場での位置づけを基礎から整理

系統用蓄電池とは、送配電ネットワークに直接つながり、電力の充電と放電によって需給や潮流の調整に用いられる大型の蓄電設備です。太陽光・風力の出力変動が拡大するなかで、余った電気を貯めて必要な時間帯に戻す役割を担い、日本でも接続検討の申込が急速に増えています1
14 件参照

この記事でわかること

  • 系統用蓄電池の定義と、需要家併設・再エネ併設の蓄電池との位置づけの違い
  • 蓄電池が卸電力市場・需給調整市場・容量市場でどのように扱われるかという基本構造
  • 急増する連系申込に対して、系統側でどのような技術要件や出力制御の検討が進んでいるか

系統用蓄電池の定義と、併設型蓄電池との位置づけの違い

系統用蓄電池は、特定の工場や発電所に付随するのではなく、送配電系統そのものに単独で接続される蓄電設備を指します。電気を充電(系統から受電)し、放電(系統へ送電)する双方向の運転を行う点が、一般的な発電設備との基本的な違いです1

グリッドコード検討会(系統に接続する設備が守るべき技術ルールを議論する場)では、蓄電池が設置形態によって5つに分類されています2

  • 単独設置蓄電池(一般に「系統用蓄電池」と呼ばれる形態)
  • 発電設備併設蓄電池(変動性再エネに併設するもの)
  • 発電設備併設蓄電池(変動性再エネ以外に併設するもの)
  • 需要設備併設蓄電池(逆潮流あり)
  • 需要設備併設蓄電池(逆潮流なし)

このうち単独設置型が系統用蓄電池にあたります。なお常時系統に接続されない蓄電池や、設備の制御用電源としての蓄電池は、技術要件の適用対象外として整理されています2。設置形態によって求められる機能や制度上の扱いが変わるため、「蓄電池」と一括りにせず区分を確認する必要があります。

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なぜ必要とされるのか──再エネ拡大と需給調整という目的

系統用蓄電池が求められる理由は、電気が原則として貯めにくい商品であることに由来します。太陽光や風力のような変動性再生可能エネルギーが増えると、昼間に発電が余り、夕方以降に不足するという時間的なずれが拡大します。余剰時には出力を抑制(発電を止める)せざるを得ない場面も生じます3

蓄電池は余剰時間帯に充電し、需要が高い時間帯に放電することで、この時間差を埋める設備として位置づけられます。さらに、周波数を一定に保つための短時間の出力調整にも対応でき、従来は火力発電や揚水発電が担ってきた調整機能の一部を代替し得ます。実際、双方向の充放電が可能な蓄電池は揚水発電と同様の機能を持つ設備として、制度上の運用が検討されています1

世界的にも導入は先行しており、既に連系されている系統用蓄電池の分布は中国が約65%、米国が約25%を占め、米国では2025年第2四半期時点で3,800万kW規模が導入されています4日本でも接続検討の受付は2025年6月末時点で約1億4,300万kW、契約申込は約1,800万kWに達しており、急速な拡大局面にあります5

誰が関わるのか──事業者、送配電会社、制度を設計する審議会

系統用蓄電池をめぐる関係者は、大きく三つに分かれます。

第一が、蓄電池を保有・運用する事業者です。電力小売やVPP(仮想発電所:分散する設備を束ねて一体運用する仕組み)を手がける企業が参入しており、例えばENEOS Powerは室蘭で50MW/88MWh、千葉で100MW/202MWhといった系統用案件を進めています6

第二が、系統を管理する一般送配電事業者と電力広域的運営推進機関です。連系の可否判断、混雑時の出力制御、電圧維持のための設備対策などを担い、蓄電池の増加に応じた運用手法を検討しています4

第三が、制度を設計する審議会です。技術要件はグリッドコード検討会、系統連系の運用は広域系統整備委員会、市場ルールは需給調整市場検討小委員会や制度設計・監視専門会合、普及策は定置用蓄電システム普及拡大検討会で、それぞれ議論されています。一つの設備をめぐって複数の会議体が並行して制度を組み立てている点が、蓄電池分野の特徴です

どの市場で扱われるか──卸電力市場・需給調整市場・容量市場の関係

系統用蓄電池の運用は、複数の市場や取引を組み合わせる形が想定されています。これは「レベニュースタッキング」(複数の収入源を積み上げる考え方)と呼ばれ、単一の市場だけでは事業として成立しにくいという前提に立っています6

主な関わり先は次のとおりです。

  • 卸電力市場:時間帯ごとの価格差を利用し、安い時間に充電し高い時間に放電する取引。2025年10〜12月期の平均システムプライスは10.94円/kWhでした7
  • 需給調整市場:周波数維持などのための調整力を売買する市場。2024年7〜8月の約定価格は5.1〜7.8円/ΔkWhの水準が示されています8
  • 容量市場:将来の供給力をあらかじめ確保する仕組みで、脱炭素電源オークションでは固定費水準の容量収入を20年間得られる枠組みが設けられています1

需給調整市場における蓄電池の扱いでは、限界費用の算定方法や充放電に伴う劣化コストの取り扱いが論点として整理されてきました9。また、余力活用契約では10MW以上の設備を対象としたストレージ式の運用が検討され、対象となる蓄電池の明確化やシステム改修が課題とされています1

比較項目基本的な意味押さえるポイント
系統用蓄電池送配電系統に単独で接続され、充放電を行う大型蓄電設備グリッドコード上は「単独設置蓄電池」として分類され、特別高圧を含む幅広い技術要件の検討対象となります2
再エネ併設蓄電池太陽光・風力などの発電設備に併設される蓄電池再エネの出力変動吸収やFIP収入の最大化が主用途で、併設する電源の特性に応じた要件が想定されます6
需要家併設蓄電池工場・ビル・住宅など需要設備に併設される蓄電池最大需要電力の削減が中心で、逆潮流の有無によって分類と要件が分かれます2
揚水発電水を汲み上げて位置エネルギーとして貯める既存の調整電源双方向運転という点で蓄電池と機能が近く、制度設計上も同様の運用が参照されています1
卸電力市場と需給調整市場前者は電力量そのもの、後者は調整力を取引する市場蓄電池は双方に関わり、複数市場を組み合わせる運用が前提として整理されています6

連系・技術要件をめぐる現在の論点と、あわせて理解したい隣接テーマ

導入量の急拡大に伴い、系統側での受け入れ方が実務上の焦点になっています。多数の蓄電池が市場価格に反応して一斉に充放電すると、周波数変動、電圧変動、他の電源の保護リレー(異常時に設備を切り離す装置)の不要動作といった影響が懸念されます。特に出力変化速度が100%/5秒以上の場合にリスクが高まると確認されており、出力変化速度の上限を設定する機能の具備が対策案として検討されています5

電圧面では、充電時に無効電力を注入して電圧低下を抑える「充電側力率設定」が検討され、系統側の設備対策が数百万〜数千万円規模となるのに対し、蓄電池側の開発費用は数十万〜数百万円規模にとどまるとの評価が示されています10

混雑対策としては、計画に基づいて充電出力を抑える計画値制御と、実潮流に応じたリアルタイム制御の比較が進められています。計画値制御は想定誤差を含むため制御量が過大になりやすいこと、需給バランス制約や逆潮流側の混雑対策との協調が必要になることが課題として挙げられています4。あわせて、遠隔監視機器への攻撃事例を踏まえたサイバーセキュリティ対策の要件化も進められています1112

理解を深める次の論点としては、蓄電池コストが全体の約80%を占めるとされる設備費構造13、および容量市場の包括的検証で示された制度見直しの方向性14が挙げられます。

参考文献

  1. 2.
  2. 4.
    系統用蓄電池の新規連系系における課題と対応
    電力広域的運営推進委員会2026/01/26PDF
  3. 5.
    フェーズ2’個別技術要件検討の進め方
    電力広域的運営推進委員会2024/11/07PDF
  4. 7.

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