ノンファーム型接続とは何か:出力制御が起きる条件と、再エネ・系統用蓄電池の事業性への影響
この記事でわかること
- ノンファーム型接続を前提とした案件で、出力制御リスクをどの断面(平常時・N-1故障時・流通設備作業時)まで織り込むか
- 系統用蓄電池の立地選定で、充電側制約(順潮流混雑)の有無をどう評価軸に加えるか
- 混雑緩和のための系統増強リクエストを出すか、制御を受け入れて運転するかの費用比較の進め方
ノンファーム型接続は「空き容量ゼロでも繋げる代わりに混雑時は制御される」接続形態である
従来の系統接続(ファーム型)は、送電線に空き容量があることを確認したうえで接続を認め、接続後は原則としてその容量を確保する考え方に立つ。空き容量がなければ、系統増強が完了するまで接続できない。
これに対しノンファーム型接続は、空き容量のない系統への連系希望者が、混雑時に出力制御を受け入れることを条件に接続できるようにする仕組みである1。制度としては段階的に広がっており、基幹系統では2021年1月からノンファーム型接続の受付が開始されている2。ローカル系統については2023年4月から事業者向けの受付を開始する計画が示され3、導入後の混雑緩和スキーム(増強プロセスや費用負担)が広域系統整備委員会で継続的に整理されてきた1。
重要なのは、ノンファーム型接続が「接続の可否」を緩める代わりに「運転の確実性」を事業者側に移転する制度だという点である。接続契約が取れたことは、想定した設備利用率で売電できることを意味しない。したがって開発判断の論点は、接続可否の一点勝負から、接続地点ごとの想定制御量をどう見積もり、ファイナンス前提に織り込むかへ移る。
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出力制御が発生するのは需給バランス制約と系統混雑という別々の理由であり、混同すると見積もりを誤る
ノンファーム型接続で問題になる出力制御は、一般に語られる「再エネ出力制御」とは発生理由が異なる。両者を分けて理解しないと、収益モデルの前提を誤る。
第一に、需給バランス制約による出力抑制がある。これはエリア全体で供給が需要を上回る場合に行われるもので、系統連系技術要件でも低圧設備に遠隔制御による0%から100%の抑制機能が求められるなど、設備要件として整理されている4。長周期の広域的な出力制御は2021年4月から複数エリア間で連系線を活用する運用が行われており、指令日数は年度・エリアごとに大きく変動している5。
第二に、送電線の容量超過(系統混雑)による制御がある。こちらがノンファーム型接続の本体である。混雑は平常時(N-0)だけでなく、設備の作業停止時や、N-1故障を想定した断面でも発生しうる。将来の運用容量に関する検討でも、地域間連系線だけでなく地内系統で混雑が発生する可能性が課題として明示されている2。
混雑の分布は時間とともに変わる。2028年度の系統混雑想定では、ノンファーム型接続により新規電源が増加することを前提に、基幹系統の九州エリアの混雑が解消される見込みである一方、東北エリアでは新たな混雑が想定されると報告されている6。つまり現時点の混雑実績だけで20年の事業期間を評価するのは危険で、増強計画と将来の電源接続量を含めた想定潮流の変化を見る必要がある。
系統用蓄電池では逆潮流ではなく「充電側の制約」が事業性の分岐点になる
発電設備の議論は逆潮流(送電線を上る潮流)の混雑が中心だが、系統用蓄電池は充電時に需要として振る舞うため、順潮流側の混雑を引き起こす。ここが再エネ電源と決定的に異なる。
系統用蓄電池の新規連系希望が増加するなか、順潮流側の系統混雑対応には充電抑制が重要であり、制御手法の整備が必要と整理されてきた7。具体的な運用として、N-1故障発生時には充電停止を前提に系統用蓄電池を接続する方向で検討が進み、対象は基幹系統およびローカル系統、主に新規に連系を希望する特別高圧の系統用蓄電池とされた8。さらに、流通設備の作業時にもN-1故障時と同様の順方向混雑が発生しうるため、作業時の充電制約を適用中の発電制約と同等とすることが基本とされている8。
制約の設計は逆方向(発電・放電)側と対称的に組まれている。
| 項目 | 逆方向(発電・放電)制約 | 順方向(充電)制約 |
|---|---|---|
| 制約対象設備 | 発電設備、蓄電池 | 蓄電池一般(需要揚水は対象外) |
| 制約量の配分 | 定格容量比率の按分が基本 | 同左 |
| 通知・調整の相手 | 発電計画提出者もしくは特定契約者 | 需要調達計画提出者 |
| 費用負担 | 特定負担事業者の機会損失 | 同左 |
| 制約量の調整 | 制約量売買方式 | 同左 |
(出典:8)
蓄電池事業者にとっての含意は明確である。安価な時間帯に充電できることが収益の前提であるにもかかわらず、その充電が系統都合で止まりうる。制約量の按分が定格容量比率を基本とするため、同一混雑系統に後続の蓄電池が増えるほど、既存案件の制約リスクも配分ルールを通じて変化しうる点にも注意がいる。
充電側の制御手法は計画値制御かリアルタイム制御かが未確定で、制御量の見積もりに幅が残る
充電制約が存在すること自体は運用の方向として整理されたが、どう制御するかは2026年時点でなお検討が続いている。ここが現時点の最大の不確実性である。
第97回広域系統整備委員会(2026年1月)では、順潮流対策として計画値制御とリアルタイム制御を軸に、現対応・暫定対応・本対応の組み合わせで複数案が比較されている9。計画値制御は発電・需要の計画に基づいて潮流計算を行い、設備容量を超える場合に蓄電池の充電出力量を抑制する方式だが、潮流の想定誤差を含むため実際よりも出力制御量が大きくなる傾向があると課題が指摘されている9。加えて、需給バランス制約に従った出力制御が順潮流を増加させうること、逆潮流混雑との協調で演算時間が増大することも論点として挙がっている9。
事業者にとっては、同じ地点・同じ設備でも採用される制御方式次第で年間の充電機会損失が変わるということである。計画値制御が本対応になれば想定誤差分だけ保守的に制御される可能性があり、リアルタイム制御なら制御量は抑えられうるがシステム対応の要求が変わる。投資判断では、単一の想定制御率ではなく制御方式別のケース分けで感度を取っておくのが妥当と考えられる。
なお蓄電池の接続検討申込は急増しており、2025年6月末時点で接続検討受付は約14,300万kW、契約申込は約1,800万kW に達している10。混雑系統への集中が進むほど、制御ルールの確定は接続順位や配分と併せて事業性に直結する。
制御を受け入れるか増強を求めるかは、混雑緩和スキームと費用負担の枠組みで決まる
ノンファーム型接続は「制御されっぱなし」を前提とした制度ではなく、混雑が事業性を損なう場合に系統増強へ進む経路が用意されている。ここが接続後の実務判断の分かれ目になる。
ローカル系統へのノンファーム型接続導入後の混雑緩和スキームでは、発電事業者からの混雑緩和リクエストに基づいて系統の効率的な増強を進める枠組みが検討され、費用負担の基本は系統増強希望者とされたうえで、一般送配電事業者の受益に応じた控除も検討されてきた11。対象系統・対象電源・開始基準・手続きといった論点が整理され、国の審議会への報告を経て具体的手続きの検討へ進む流れが示されている1。また、混雑系統への接続では電源接続案件の一括検討プロセスが導入され、効率的な設備形成の維持が求められている3。
もう一つの経路が、制御量そのものの取引である。逆方向・順方向いずれの制約についても制約量売買方式が想定されており8、制御を受ける側と回避したい側の間で調整余地がある。さらに、系統用蓄電池は単一収益源では成立しにくく、レベニュースタッキングが重要であり系統混雑緩和の実現が求められるという事業者側の指摘もある12。混雑緩和に資する運転が収益として評価される仕組みが整うかは、立地選定の前提を変えうる。
なお、混雑系統でのDER活用による制御回避はNEDOのFLEX DER実証で系統混雑緩和効果が確認されている一方、系統混雑予測の精度向上やフレキシビリティ運用方法の整備が課題として残っており13、配電系統側の代替手段が直ちに特別高圧案件の制御を代替する段階にはない。
| 判断項目 | 確認条件 | 判断への示唆 |
|---|---|---|
| 接続形態の確認 | 接続検討回答がノンファーム型か、対象断面(平常時・作業時・N-1)はどこまでか | ファーム型と同じ設備利用率前提は使えない。断面別に制御量を積み上げた収益モデルへ切り替える |
| 地点の将来混雑評価 | 2028年度混雑想定で当該エリアの混雑が解消側か新規発生側か6 | 新規混雑側のエリアは、現時点の制御実績が小さくても長期の制御増加を織り込む |
| 蓄電池の充電側制約 | 特別高圧の新規連系で、N-1故障時・作業時の充電停止が条件に含まれるか8 | 安価時間帯の充電が止まりうる。裁定収益の前提を下方修正し、SOC運用計画を見直す |
| 制御方式の想定 | 順潮流制御が計画値制御かリアルタイム制御かの結論が出ているか9 | 未確定なら方式別に感度分析を行い、計画値制御ケースは想定誤差分を上乗せした制御量で評価する |
| 増強か制御受容か | 混雑緩和リクエストによる増強費用(原則として増強希望者負担11)と制御による逸失利益の比較 | 逸失利益が増強費用の回収可能性を上回るなら増強リクエストを検討、下回るなら制御受容+運用最適化 |
再エネ発電事業者(開発・投資判断)
- 接続検討回答の「ノンファーム型」表記だけで判断せず、平常時・作業時・N-1想定のどの断面で制御が想定されるかを個別に確認し、ベース/保守の2ケースで内部収益率を算出する
- 現在の混雑実績ではなく将来断面で評価する。2028年度想定では九州の基幹系統混雑が解消見込みである一方、東北で新たな混雑が想定されており6、地点の評価は年度をまたいで反転しうる
- 制御が事業性を毀損する水準に達した場合の出口として、混雑緩和リクエストによる増強(費用負担は原則として増強希望者11)の概算を事前に置いておく
系統用蓄電池・アグリゲーション事業者
- 立地評価に順潮流(充電側)混雑を独立の軸として加える。特別高圧の新規連系ではN-1故障時の充電停止が前提となる方向で整理されている8ため、逆潮流の空き状況だけでは評価が不完全になる
- 制御方式が計画値制御かリアルタイム制御かで想定誤差分の機会損失が変わるため9、方式別に充電可能時間帯を試算し、調達契約や需給調整市場への応札計画の柔軟性を確保する
- 制約量売買方式8や需給調整市場での収益を含むレベニュースタッキング前提で採算を組み、単一市場依存の計画は見直す
まず行うこと
- 接続検討回答の断面別読み込み 保有・開発中案件について、制御が想定される断面(平常時・流通設備作業時・N-1故障時)と対象設備を一覧化し、逆潮流と順潮流を分けて整理する
- 制御方式別の感度分析 系統用蓄電池案件は、計画値制御ケースとリアルタイム制御ケースで年間充電可能量を試算し、投資判断のしきい値を方式別に設定する
- 増強リクエストの概算準備 制御量が事業性のしきい値を超える地点について、混雑緩和リクエストによる増強費用と負担割合の概算を取得し、制御受容との比較表を作る
監視する指標
- 広域系統整備委員会の順潮流制御方針 計画値制御・リアルタイム制御のいずれが本対応として結論づけられるか。決定内容次第で蓄電池の充電機会損失前提を全面的に見直す
- 年度別の系統混雑想定 対象エリアの混雑が解消側か新規発生側かの更新。想定が反転した地点は立地評価をやり直す
- 蓄電池の接続検討・契約申込量 2025年6月末で接続検討受付約14,300万kW・契約申込約1,800万kWの水準からの推移。混雑系統への集中が進めば制約量の按分配分が悪化する
- 混雑緩和スキームの費用負担ルール 一般送配電事業者の受益控除の考え方が具体化されるか。増強を選ぶ場合の自己負担額が変わる
- 制約量売買方式の運用開始状況 制約量の調整が実際に取引可能になるか。成立すれば制御リスクの一部をヘッジできる
参考文献
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Next Action
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