FIP・FIT制度とは何か──再エネ買取の仕組みと両制度の違いを整理する
この記事でわかること
- FIT制度とFIP制度それぞれの定義と、価格の決まり方の違い
- 発電事業者・小売電気事業者・送配電事業者・電気利用者が制度のどこに関わるか
- 市場価格に連動するFIP電源が、需給調整や出力制御の場面でFIT電源と異なる扱いになる理由
FITは固定価格での買取、FIPは市場価格への上乗せ
FIT(フィード・イン・タリフ)制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、あらかじめ定められた価格で一定期間買い取る仕組みです。発電事業者から見れば売電収入が一定になり、電力会社が全量を買い取る義務を負う点が特徴です1。
FIP(フィード・イン・プレミアム)制度は、発電事業者が卸電力市場などで電気を売り、その売電収入に対して補助額(プレミアム)が上乗せされる仕組みです。売電収入は市場価格に依存するため収入が変動し、その代わりに売り先を柔軟に選べます1。
FITは「価格が固定され、市場を意識しなくてよい制度」、FIPは「市場で売ることを前提に、その差額を補助で埋める制度」という点が両者の基本的な違いです。FIP制度の交付金は、認定を受けた設備ごとに算定される仕組みとして業務・システム面でも整備されています2。
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制度が置かれている目的は投資の確保と市場統合の両立
FIT制度は、発電コストが高く単独では採算が立ちにくかった再エネの導入を進めるため、収入を安定させて投資を呼び込む役割を担ってきました。一方で、価格が固定されていると発電事業者が市場の需給状況に応じて動く動機を持ちにくく、需給の調整は他の電源が担うことになります1。
FIP制度は、この点を踏まえ、再エネの自立化と電力市場への統合を進めつつ、投資インセンティブの確保と国民負担の抑制を同時に図ることを目的としています1。市場価格が高い時間帯に発電を寄せる(発電シフト)誘因が働くため、系統全体の調整コストを抑える効果が期待されています1。
制度設計の議論でも、送配電費用の負担ルールを見直す際に「FIT制度からの自立および主力電源化を妨げない課金方式」であることが前提として確認されており、再エネを補助に依存し続けさせない方向が一貫して意識されています3。
発電事業者・小売・送配電・電気利用者がどこで関わるか
制度に関わる主体は複数あり、役割が分かれています。
- 発電事業者:FITまたはFIPの認定を受けた設備で発電し、FITでは買取義務者へ、FIPでは市場や小売事業者へ電気を販売します1。
- 小売電気事業者:再エネ電気の買い手となります。FIT制度の買取期間を終えた住宅用太陽光(いわゆる卒FIT電源)へのアクセスも制度上の論点として扱われてきました4。
- 一般送配電事業者:系統への接続と、出力制御や需給調整に伴う費用の取扱いを担います5。
- 電気利用者:託送料金や電気料金を通じて、系統の維持・増強費用や再エネ導入に伴う費用を分担します。近年は発電事業者にも系統費用の一部を負担させる発電側課金が導入され、負担の配分が見直されています6。
制度は発電事業者だけの問題ではなく、費用の流れを通じて小売や電気利用者まで及ぶ構造になっており、発電側課金の設計でも既認定のFIT・FIP設備への影響が慎重な検討課題として挙げられてきました7。
FIP電源が市場と需給調整の中でどう扱われるか
FIP制度では、発電事業者が自ら電気を売るため、計画と実績のずれ(インバランス)に伴う責任を負います。制度上の整理では、変動性再エネのうちFIT電源の一部はインバランスリスクを負わない一方、FIP電源や非FIT電源はインバランスリスクを負う区分に置かれています8。この責任があるため、発電量の予測精度や取引の巧拙が収入に影響します。
FIP電源は、需給調整市場(電力の需給バランスを保つための調整力を売買する市場)へ調整力として応札することも制度上想定されており、将来の調整力必要量の増加を見据えて活用方法の検討が進められています8。もっとも、天候によって供出できる量が変動する点や、入札スケジュールとの整合など技術面・制度面の課題が残るとされています9。
また、系統混雑時に出力を抑制する電源制限(N-1電制など)の対象となった場合、FIP電源についてもFIT電源と同様に再エネ特措法に基づく収益の減少分を精算する扱いが整理されており、プレミアムを含めた費用として計算する方法が示されています1。
| 比較項目 | 基本的な意味 | 押さえるポイント |
|---|---|---|
| 売電収入の決まり方 | FITは一定、FIPは市場価格に依存して変動します1 | FIPでは市場価格の水準と発電時間帯が収入に反映されることを意味します |
| 売り先の選び方 | FITは電力会社が全量を買い取り、FIPは売り先を柔軟に選べます1 | FIPは市場取引や相対契約を前提とした運用が必要になります |
| 需給調整との関係 | FITでは他電源による調整が必要で、FIPは発電シフトにより調整コストの抑制が期待されます1 | FIPは市場価格が調整の誘因として働く設計であることを意味します |
| インバランスの責任 | FIT電源の一部はリスクを負わず、FIP電源と非FIT電源はリスクを負います8 | 発電量予測の精度が制度上の位置づけと直結します |
| 出力制御時の取扱い | FIP電源も再エネ特措法による収益の減少分が精算対象とされています1 | 制御を受けた場合の補償はプレミアムを含めて計算される点が特徴です |
| 系統費用の負担 | 発電側課金は逆潮流が生じる全電源を対象とし、既認定のFIT・FIP設備への影響が検討課題とされました67 | 支援制度と費用負担制度は一体で理解する必要があります |
FITとFIPを並べて理解するための比較と、現在の論点
両制度は再エネを支える点で共通しますが、収入の決まり方、売り先の選び方、需給への関わり方が異なります。この違いは次節の比較表に整理しています。
現在の制度運用では、FIP電源を含む変動性再エネが市場や調整力の担い手としてどこまで機能できるかが継続的な論点です。2025年6月の審議では、変動性再エネの調整機能の活用に向けて技術面・制度面の課題整理が行われ、市場参加方法や取引の対価性を明確にすることで参加を促す方向が示されました89。将来の市場設計として検討されている同時市場でも、発電予測と実績の乖離が市場に与える影響や、FIT特例の運用における需給調整の柔軟性の不足が課題として挙げられています10。
理解を深める次の論点は、インバランス料金や発電側課金など、収入と費用の両側で再エネの立ち位置を決めるルールです。インバランス料金の詳細設計は2025年にかけて見直しの議論が続き、価格水準に関する具体的な案が検討されています1112。あわせて、太陽光パネルの廃棄・リサイクルのように、設備が寿命を迎えた後の制度整備も進んでおり、2030年代後半に年間最大50万トン規模の廃棄が見込まれることを前提に、2026年4月時点で法整備の内容が示されています13。
参考文献
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