二次調整力②は「5分・EDC」の入口商品——30分コマ化後の応札戦略を読み解く
この記事でわかること
- 二次調整力②は専用線を要さず簡易指令システムで参入できる唯一の5分応動商品だが、参入障壁が低い分だけ前日化・30分化後の単価下落の影響を最も強く受けている
- 一次〜三次①は複合約定ロジックで一体処理されるため、二次②に応札しても上位商品の札で必要量が満たされれば約定しない構造になっている
- 市場外調整力(自然体余力)の控除や組み合わせ算定など複数の削減圧力が積み上がる一方、一次調整力の応札不足は前日化後も解消していない二重構造にある
二次調整力②とは何か
二次調整力②(FRR:Frequency Restoration Reserve)は、一般送配電事業者がEDC(経済負荷配分制御)信号でオンライン指令を出し、5分以内に応動して30分以上継続することを求める調整力商品である1。対応する事象は「需要計画と実績需要の誤差」であり、一次・二次①・三次①と異なり電源脱落(緊急時対応)分は必要量に含まれない2。
参入実務上の要点は、二次②が二次①(S-FRR)と三次①(RR)の中間に位置する「参入しやすい高速商品」である点にある(決定済み・開始済み)。
| 項目 | 二次調整力① | 二次調整力② | 三次調整力① |
|---|---|---|---|
| 指令 | オンラインLFC信号 | オンラインEDC信号 | オンラインEDC信号 |
| 応動時間 | 5分以内 | 5分以内 | 15分以内 |
| 継続時間 | 30分以上 | 30分以上 | (ブロック時間) |
| 回線 | 専用線のみ | 専用線または簡易指令システム | 専用線または簡易指令システム |
| 並列要否 | 必須 | 任意 | 任意 |
(出典:1)
二次①が専用線必須・並列必須であるのに対し、二次②は簡易指令システムでの参入が認められ、並列も任意である[DOC:67cf2c2b-f582…]ではなく[DOC:67cf2c2b-4f97…]——正確には第28回小委資料が、二次②について「応動時間を除いて指令・制御方法は簡易指令システムの適用を認める」「応動時間内に指令値へ到達する必要がある」と整理している3。また二次②には一次のような技術要件(周波数計測間隔・調定率等)は設けられず、事前審査は三次①と同様の応動確認、金銭的ペナルティ強度はΔkW落札価格の1.5倍とされている4(決定済み)。専用線敷設という重い初期投資を回避しつつ5分応動の高速商品に参入できる、という点が二次②の制度的な意味である。
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「二次②単独市場」は存在しない——複合約定ロジックの理解が前提
実務上、最も誤解されやすいのがここである。一次〜三次①は複合約定ロジックにより一体で約定処理され、事業者は複数商品に入札しつつ、システム側が必要量を最も安く充足する組合せを選ぶ。この仕組みの導入により、調整力の調達量は年間平均11〜16%から6〜9%へ低減し、約4割のコスト削減が見込まれると評価されていた5(開始済み)。
つまり、二次②に応札しても、より上位商品(二次①等)の札で必要量が満たされれば約定しない。逆に、二次②要件しか満たさないリソースでも、複合必要量の充足に貢献すれば約定機会が生まれる。事業者が見るべきKPIは「二次②の約定単価」ではなく「複合市場全体の約定単価と自社リソースの相対的な位置」である。
なお市場は複合市場と三次②市場の2本立てで、先行市場で落札されなかったリソースを後続市場で活用する「自動エントリー」や市場の一本化は恒久対策として提案されたが、MMS改修を要するため暫定的には募集量削減や上限価格設定で対応する整理となっている(継続検討中)6。
2026年3月14日:前日取引化・30分コマ化という転換点(開始済み)
2026年3月14日受渡分から、複合市場商品は取引タイミングが週間断面から前日断面へ、入札時間単位・継続時間が3時間ブロックから30分へ変更された2。移行後の実績は第19回制度設計・監視専門会合で確認されており、複合市場の平均約定単価は東京で4.91円→2.31円/kW・30分、中部で3.49円→1.89円/kW・30分へ低下、安値札の応札量増加が要因と分析されている7(開始済み)。同時に募集量・上限価格の見直しが行われ、複合市場の最高約定単価はおおむね15円/kW・30分に張り付いている7。
この方向性は先行した三次②の実績と整合する。三次②は2025年3月14日から30分化され、募集量は約25%減(全国計6,921→5,204MW/日)、応札量は約52%増(13,434→20,480MW/日)となった8(開始済み)。
分析:30分化は「応札しやすさ」と「単価低下」を同時にもたらすと考えられる。コマ毎の供出可能量で応札できるため参入余地は広がる一方、余剰率上昇により競争が働き、ΔkW単価は圧縮される。加えて、必要量算定も従来のブロック単位から「組み合わせによる算定」へ移行する方針が示され、複合商品の最大必要量は全国平均838MW→831MWと減少方向にある2(決定済み)。同資料は、30分化により約定が飛び飛びになる「歯抜け約定」で応札者の負担が増す可能性も課題として挙げている2(継続検討中)。ΔkW単価×約定コマ数の両方が下押しされる前提で事業計画を組む必要がある。
募集量はどこまで削られるのか
二次②の収益機会は募集量に強く依存する。ここには複数の「削減圧力」が制度として積み上がっている。
- 効率的な調達:二次②・三次①は前日段階で1σ相当を調達し、広域予備率が閾値(12%)を下回る場合に追加調達する運用とされ、全エリア合計で複合必要量の約40%低減が見込まれた9(開始済み)
- 市場外調整力(自然体余力)の控除:調整力必要量を3〜9%程度削減する方針が示され10、2025年6月から控除が開始されている11(開始済み)
- 未達時は市場外調達ではなく余力活用:二次②・三次①は効率的な調達後に未達なら余力活用で対応する整理であり12、コストが約2倍となる市場外調達は2026年度の前日集約化に合わせて廃止する計画である13(決定済み)
他方で、市場全体では応札不足が慢性化している。2024年度は一次市場の応札量が募集量の2割未満・不足率80%に達し14、2025年度上期も全商品で未達が続いた15。前日取引化後も調達率は改善傾向ながら一次の未達は残存している7。募集量は縮む一方で、必要量に対する供給は依然として不足している——この二重構造が、エリア・時間帯によって単価が極端に振れる要因になっていると考えられる。
価格規律と広域化
ΔkW価格は「逸失利益(機会費用)+一定額」の範囲で設定することが求められ、固定費回収のための一定額は0.33円/ΔkW・30分が基準とされてきた16。2026年度以降はB種電源協議を廃止して事後監視に重心を移し、不合理な入札価格設定・不適切なシステム設定を処分対象行為として明記する方向が整理されている17(決定済み・一部継続検討中)。応札価格の根拠資料を社内で説明可能な形で残す運用が、従来以上に重要になる。
広域面では、二次調整力②は三次②とともに既に広域需給調整システム(KJC)で広域運用されている18(開始済み)。一方の二次①は2025年度から試験運用を開始し、広域調達は2027年度を目指す段階にある18(継続検討中)。二次②はすでに広域競争にさらされている商品である、という認識が価格前提には必要である。
商品区分そのものが見直される可能性
同時市場の検討では、①二次②・三次①・三次②(予測誤差対応)、②一次・二次①(時間内変動対応)、③二次①・二次②(類似要件)という3つの軸で商品集約が検討対象に挙げられている19(継続検討中)。同時市場は第1フェーズの詳細業務設計が2026年7月〜2027年3月のスケジュールで進行中である20。二次②という商品区分自体が中期的に統廃合される可能性は、投資回収期間の長いリソースにとって無視できない前提である。
直近では、応札障壁の実態調査を踏まえ、一次調整力の技術要件緩和、蓄電池の一次オフライン参入要件見直し、電圧フリッカ防止のための移動平均計測時間幅(初期値0.1秒)の要件化などが対応方針として示されている21(提案・審議中)。
蓄電池・DERアグリゲーター
現状認識として押さえるべきは、二次②が専用線を要さず並列も任意で、かつ一次のような詳細技術要件も課されない唯一の5分応動商品だという点である14。専用線敷設は工期10ヶ月〜数年、コストも高額とされており3、これを回避できる意味は大きい。
しかしそれが重要なのは「入りやすいから儲かる」からではない。むしろ逆で、参入障壁が低い商品は30分化による応札増の影響を最も受けやすく、複合市場の平均約定単価が半減した実績7はその現れと考えられる。判断軸は、ΔkW収入を主収益源に据えるのではなく、卸市場・容量市場・混雑緩和等との積み上げの一要素として位置づけられるかにある。EV充放電等のユースケース整理でも、需給調整市場は複数収益源の一つとして扱われている22。加えて、応動未達時のペナルティがΔkW落札価格の1.5倍、アセスメントⅡの不適合が月3回以上で事前審査再実施4という設計は、SOC管理やリソース制御の確実性が収益の前提条件であることを意味する。30分コマでの歯抜け約定2を運用オペレーションが吸収できるかが、実質的な参入可否を分けると考えられる。
火力・揚水を保有する発電事業者
前日取引化により、週間断面で調整力を売り切る前提が崩れた。前日取引化に向けた検討では、発電機の起動判断が遅れる懸念や、起動費取り漏れ・歯抜け約定を防ぐためのブロック入札の位置づけが論点として整理されている23。二次②単独で見るのではなく、同一ユニットが一次〜三次①のどの商品群に複合入札したとき期待収益が最大化されるかを、複合約定ロジックの挙動を前提に再計算する必要がある。
その際の判断材料は3つある。第一に、募集量は効率的な調達(1σ+追加調達)9、市場外調整力控除10、組み合わせ算定2の三重の圧力で構造的に縮む方向にあること。第二に、未達時の受け皿が市場外調達から余力活用へ移り、市場外調達は廃止方針であること1312——市場外での価格交渉余地は縮小する。第三に、価格規律が事後監視強化へ舵を切っており17、逸失利益の算定根拠が説明可能でなければ是正要請の対象となり得ること。二次②のΔkW収入を固定費回収の柱と見なす前提は、制度上も市場実勢上も維持しにくくなっていると考えるのが妥当である。
参考文献
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